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60話 突然の報告

♦︎♦︎♦︎

その後、ヘンリー王子を乗せた船がここにやって来たが、あくまで誘拐犯の情報を得て、阻止すべくやって来ただけであり、自分達は無関係である、との主張をし続けた。


王家も確たる証拠も無しにヘンリーを処罰する事はなく、彼はいつも通り暮らしている。


だが、クレシリス伯爵は、海賊と息子の証言から逮捕されたのだ。

「お前らはあの御方を敵に回したんだ。絶対に後悔するぞ」

騎士に連行されていく時、彼はそう言って高笑いし続けていた。


『あの御方』が一体誰なのか気にはなったものの、それ以降、尋問中に伯爵がその人の存在を仄めかす事は2度となかったらしい。


♢♢♢

事件がひと段落し、私は公爵邸に戻っていた。


「ミア、聞きたい事が山程あるが、まずは…」

父と兄が正面に座り、私は尋問されている気分だ。

孤児の子達を助けようと思う一心で、その後何が起こるか想定していなかった私の落ち度だろう。


私はやりたい事をやったのだ。それで怒られても、文句は言えまい。

さあどんとこい!と思った途端、父に抱き締められる。


「無事で、何よりだ」

父の搾り出すような声に、どれだけ心配を掛けたのかを思い知る。


「申し訳ありませんでした」

思わず声が掠れてしまう。


「ほんとだよ。どれだけ心配したと思ってるの」

肩をすくめた兄は、余裕そうに振る舞っているものの、少し声が掠れている。


「お、お父様、苦しい…」

あまりにも力が強くて息が苦しくなったため、父に訴える。

「す、すまない」

父はパッと腕を退けると、申し訳なさそうな顔で私を見た。


「とりあえず、落ち着いて話をしましょう」と兄に促され、父は元の席に着く。

「じゃあ、改めて、ミアの話を聞こうか」


急に真顔になった兄を見て、私は冷や汗が背中をつたる。

大丈夫よ。ちゃんと話の道筋をノアと考えたんだもの。


「まず、なんでドレスを脱いで、あんな路地に向かったの?別に行く必要なかったよね?」

少し厳しめの声で兄から質問される。


「行きたくて行ったわけでは無かったんです。ただ、こっそり街の様子を見に行ってみたかっただけで…」

少し目を伏せて、目に涙を溜めるように頑張る。


私の様子に兄は申し訳なさそうな顔をする。

「そうだったのか…でもミア、これに懲りたらちゃんと護衛をつけて行動するんだぞ」

兄が私を優しい声で私に注意する。


ううっ…私の心は罪悪感でいっぱいだ。

私、今、演技と心の中の気持ちで変な顔をしているかもしれない、と思ったその時、玄関の方から大きな音が聞こえた。


バタバタとこちらに近づいてくる音がする。

屋敷の人間と交戦するような音は聞こえないから、多分、緊急で走って来た使者だろう。


バンッと扉が勢いよく開けられる。

「報告します!クレシリス伯爵邸が昨夜、焼失したとの事です!」

「面白い」「続きが気になる」となど思っていただけたら、ブクマや『☆☆☆☆☆』マークより、評価を入れていただければ嬉しいです。

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