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【感謝150万PV】1年後に断罪される悪役令嬢ですが、記憶を取り戻したら全て濡れ衣だったと分かったので、逆に断罪しようと思います  作者: ゆうか
番外編1

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文化祭 太陽編

♦︎♦︎♦︎

これは俺が中学2年生だった時の話だ。


俺らのクラスは、教室展示をやる予定だった。

道具の作成とか、そのゲームのルールとか、やるべき事は山程ある。

クラスで協力して作り上げてきたから、それなりに思いはあるが、なんだか物足りない。


しかも当日になれば、シフトの時間以外はずっと暇なわけで。


「太陽、お前もうシフトの時間終わってるぞ。俺と交代」

「…ああ、悪い。もうそんな時間か」

違う所に思考を飛ばしていると、不意にクラスメイトに話しかけられた。


彼自体は悪い奴じゃないが、如何せん影が薄い。普通の時にも声を掛けられないと気づかないくらい。

こいつ、ここの担当で大丈夫か…と変な心配をしながら、俺はクラスを出た。


ぶらぶらと廊下を歩く。どこもかしこも沢山の行列が出来ていて、並ぶのが面倒そうだ。

結局、どこのクラスにも入ることなく、学校をプラプラ歩き続けた。


ふと、女子生徒の大声が聞こえてくる。

「そうか、ここ、劇をやってるのか…」


特に深く考えることなく、ふらっと劇をやっている体育館に足を運んだのだった。


♢♢♢

体育館に入ると、規則正しく並べられたパイプ椅子はほぼ満席で、空いているのは最後列の端っこだけ。立ってるよりはマシだろうと、そこの席に座った。


俺が入った時には、その劇はもう終盤だったらしく、何年何組かも分からない劇は数分で終わった。何人かは席を立ち、入れ替わって何人かの生徒が入ってくる。


うーん。せっかくだし、次のクラスの劇も見ていくか。

「次は中学2年1組の『幼馴染との奇妙な出会い』です!2年1組の皆さん、よろしくお願いします」


アナウンスのハキハキした声と同時に、壇上が暗くなる。

次に明るくなった時に目に飛び込んできたのは、慶都の姿だった。


そうか、あいつのクラスは劇をやるんだったか…さっき、席を立たなくて良かった。


変に初恋を拗らせて、もう喋ることがなくなったあいつに釘付けになる。

こんな自分はもう嫌だ、早く諦めろ、と思っているのに。


「…普通に面白いな、これ」

まだ1クラス(それも数分だけ)しか見ていないが、内容も、大道具も作り込まれていて普通に面白い。


下手すれば、3年を退けて大賞獲れるんじゃないか?そう思った時だった。

場面が切り替わって数分、体育館内がシーンとなった。


壇上に立つ生徒は全員、顔面蒼白だ。

なるほど、誰かがセリフを忘れてしまったらしい。


俺らはまだ中学2年だし、こういう時にどうすれば良いかなんて、分かるわけない。

実際、俺もあの場にいたら、皆と同じように顔を青くしながら、立ちすくんでいただろう。


ふと、慶都の方に目を向ける。すると、慶都もこちらを向いた。

目が合った俺は、視線で『頑張れ、お前ならできる!』と伝える。どうか、伝わってくれ…


数秒間、見つめ合った後、慶都は顔つきを変えた。そして、おそらくアドリブであろう言葉をハキハキと紡いでいく。


その後は、劇が途切れることなく続いた。

慶都のクラスが大賞を取ることはなかったが、クラスを覗くと皆、晴れやかな顔をしていたように思う。もちろん、あいつも。


これが、俺にとって1番の文化祭での思い出だ。

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