文化祭 慶都編
初めての番外編です!
今日は『文化の日』ということで、ミアとノアの前世、慶都と太陽の文化祭のお話です!
太陽編は本日17時に投稿します!
よろしくお願いします!!
♦︎♦︎♦︎
これは私が中学2年生だった時の話。
今日は、文化祭当日。私たちのクラスは劇をする予定だ。クラスの子がオリジナルの台本を書いてくれていて、それがとても面白いのだ。
タイトルは「幼馴染との奇妙な再会」
主人公の女の子が、女優の新人発掘オーディションに参加すると、そこで俳優となった幼馴染と再会。切磋琢磨していくという物語だ。(ちなみに内容はコメディ)
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ、慶都。昨日、通しでやった時は全然大丈夫だったじゃん」
「で、でも今日間違えるかもしれないし…」
投票で主人公に抜擢されたのは、何故か私。
辞退したいのは山々だが、他薦だったため、それも叶わず当日を迎えてしまった。
衣装は、普通に制服。大道具の方をこだわったので、衣装は最終的に制服で良くない?となったのだ。
友達に、劇の時間まで、一緒に他クラス見て回ろうよ、と誘われたが、そんな気力はなく。
どうにかセリフを間違えずに劇を終わらせるため、ギリギリまで台本と睨めっこしていたのだった。
「次は中学2年1組の『幼馴染との奇妙な出会い』です!2年1組の皆さん、よろしくお願いします」
あぁ、ついにこの時が来てしまった…
胃がキリキリするのになんとか耐えながら、私は舞台の上へと上がったのだった。
♢♢♢
途中までは順調だったのだ。だが、1人の子がセリフをど忘れしてしまい、数十秒ぐらい劇が止まってしまっている。
皆、劇が初めてだったのか、どうしたら良いか分からないみたいだ。
偉そうに分析している私も、どう対処したら良いか思いつかず、頭の中は混乱中だ。
観客の人達が次第にザワザワしてくる。こういう時、どうすれば良いの…
少し涙目になってしまった私の目の端に、少し目つきの悪い男子生徒が見えた。太陽だ。
彼の方に視線を向けると、太陽も私の視線に気付いたのかこちらを向いた。
見合っていた時間はほんの数秒だったと思う。だけど、その数秒で私の中の弱虫は引っ込み、この状況をどうにかしよう、という気持ちが湧いてきた。
「先生、私からも1つよろしいでしょうか?」
完全なるアドリブだ。だが、ハッとした皆がすぐに私の言葉に反応してくれる。
「今、私は彼女に話を聞いていたんだけど。まあ良いわ、貴方の意見を言ってみて」
「はい、私は〜」
何とか持ち直した私たちの劇は、その後はスムーズに幕を閉じた。
♢♢♢
「では、今年の中学劇部門の大賞は…2年3組の皆さんです!おめでとうございます!!」
結局、私達のクラスは、入賞することは叶わなかった。
あの後、自分のセリフが出てこなかった女の子は皆に泣いて謝っていた。
クラス一丸となって、劇部門大賞を狙っていたから、ミスしてしまったのをとても悔やんでいるのだと思う。
その後、クラスで打ち上げが行われたけど、皆、「やりきった」という思いが強いのか、表情は晴れやかだったのを良く覚えている。
高校生の時は、1、2年生で教室展示部門大賞、3年生で劇大賞に輝いたけど、何故か、この劇が1番の思い出となった。