41話 色々な事が終わって
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全貴族が入場した後に、両国の王族が共に入場する。
だが、そこにノアの姿はなかった。当然よね。彼は今、記憶を無くした振りをしているんだもの。
パーティーは、主賓である我が国王の挨拶からはじまる。
隣国であるこの国と、今後とも強固な協力関係を築いていきたい、という内容が盛り込まれていた。きっと、王妃の事を気にしてのことだろう。
2ヶ月ぶりに見る陛下は、少しやつれたように思う。夜会の時もかなり痩せていたけど、今日はその時よりも痩せている。
そういえば、今日は王妃様の姿も見ていない。どうしたのだろう、と思ったが、今回は体調が悪いためこの国には来ていない、との事だった。
両陛下の挨拶が終わると、すぐにダンスが始まってしまった。
ずっと壁の花になりたくても、私はヘンリー王子の婚約者。この時だけは、壁の花にならず、踊らねばならなかった。
ヘンリー、アルバートと踊り、親しくなった子女達にひと通り別れの挨拶をし終えた後、私は絶賛、壁の花モード発動中だった。
だって、今私は疲れているの。今日は最低限は踊ったし、パーティーが終わるまで大人しくしているつもりだ。
そんな私に話しかけてくる人物が1人。
「次は僕と踊ってくれませんか?」
声の主に吃驚した。何せ、今、私に話しかけてきたのは、私と同じくこの国に留学していた、ベリージア公爵家の息子、リアムだったからだ。
彼とはこの国に来てから殆ど話す機会はおろか、廊下などですれ違った覚えもない。
…というか、留学生3人と喋る事なんて無かったのだ。
どういう風の吹き回しだろう。だが、断る理由も見つからないので、誘いを受ける。
さすが、公爵家の息子。エスコートの仕方やダンスは一流だ。
「実は、僕は君の事を誤解していたんだ。この留学は、王太子の婚約者としてのパフォーマンスだろうと。だから、この国に来る時、貴方に素っ気ない態度を取っていたんだ。
けれど先日、君がアルバート王太子殿下を助けたと耳にしたんだ。僕は君の事を誤解していた。本当に申し訳なかった」
ダンス中、突然リアムが話し出したのに驚き、この言葉に面食らった。私ってそういう風に見られてたんだ。
しかも、リアムとははじめて喋ったけど、めっちゃ純粋でピュアじゃない?
ゲームでは確か、頭が硬いキャラだったはずなんだけどな…
「えっと…貴方の中での私の悪いイメージが払拭されたようで何よりです」
何か言おうと思ったけど、これ以外に何を言えば良いか思いつかなかった。
「君がもし、僕に頼みたい事があればいつでも言ってくれ。可能な限り、協力する」
「…ありがとうございます」
こうして私は、留学中に味方を2人、得ることが出来たのだった。
♢♢♢
「疲れた…やっぱり我が家は落ち着くわね…」
2ヶ月の留学を終え、家に帰ってきて、1日が経った。それでもダラけているのは、昨日体を休める事ができなかったからだ。
家に帰ると、父と兄は仕事を休んで私の帰りを待ってくれていた。
私の好きなお菓子から小物まで、全て用意済みで。留学おかえりお祝い、だそうだ。
「おかえり!!ミアがいない2ヶ月は、本当に辛かったよ」
そうして1日中、兄と一緒に過ごしたのは記憶に新しい。
今日は、兄は仕事で学園は休みだし、1日ゆっくりしようかしら。
そう考えていた私の元に、1通の手紙が届く。差出人はノア。正規のルートからの手紙ではなかった。
嫌な予感がしつつも、その手紙を開けて読む。
…いわく、孤児院の子ども達はまだ別の場所にも、売られ続けているようである、と。
(2章完)




