33話 アルバートとの対談
祝20,000pv越え、ということで、明日も2話更新します!
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放課後、私はサロンの前に来ていた。
だが、扉を開けることができない。この1歩を踏み出すことができないでいた。
やっぱり、今日は帰ろう。後日、改めて聞き出せば良いや、と思い、来た道を帰ろうとしたその時だった。
「ミア嬢、そこにいるのは分かっているよ。早く入っておいでよ」
部屋の中から、アルバート王子の声が聞こえる。
ゾクっと背筋が凍る。一体いつから気付いて…
恐々サロンの扉を開け、いつでも逃げられるように、ドアを薄く開けたまま、立ったままでいる。
だが、彼は笑ったまま、私を見つめている。本当に怖いんだけど…
「まあ、とにかく座りなよ。ドアを開けたままでも良いからさ」
「申し訳ありません。殿下と2人というのは、外聞が良くないため、私の従者を呼びました」
入ってきなさい、そう言って、エミリアとヒューゴを呼ぶ。
彼は少し、吃驚したようだが、特に2人が入ってくるのを止めようとしなかったので、そのまま押し通させてもらう。
2人が入ってきたのを確認した後、彼はガバッと頭を下げた。
「殿下!」
「まず、申し訳なかった」
突然の謝罪に戸惑ってしまう。だが、そんな私を彼は気にせず、謝罪を続けた。
「君に恐怖を与えてしまったこと、婚約者がいるにも関わらず、エスコートをお願いしたこと、本当に申し訳なかった」
頭を下げたまま、彼はまだ話を続ける。
「実は君に、聞きたいことがあったんだ。だが、このような形でしか、君に接触する方法が思い付かなかった」
「謝罪は受け取りました。それで、私に聞きたいこととは一体何でしょう」
彼は少し戸惑ったような仕草を見せるも、意を決したように私と目を合わせた。
「君は、この国に何を調べに来たのかを教えてほしい」
この言葉に、ヒューゴとエミリアから殺気が放たれた。
「そこまで殺気立たないでくれ。心配しなくても、ここで聞いた事は決して口外しない」
若干顔を青くしたアルバートが私に約束してくれた。
「…っ!」
王族が、貴族に約束する事の重さが分からない彼ではないだろう。
はっきり言って、この国の王子がバックについてくれる以上に心強い事はない。
けど、孤児の売り飛ばしにこの国の貴族が関わっている事を伝えた後、彼はどうするだろう。
協力してくれるか、それとも隠蔽を試みるか。
「分かりました。私が何を調べに来たのか。今、何を知っているかを全てお話しします」
たっぷり沈黙し、思案した後、私はこう答えた。
エミリアとヒューゴが吃驚し、息を呑んだのが分かる。
だが、私の意志はもう固まっていた。
♢♢♢
「つまり、我が国の貴族の誰かが、そちらの孤児院から孤児を買っている、と」
私の話を聞いたアルバートは、頭を押さえ、何を言うべきか悩んでいるようだった。
「はい、まだ推測の域は出ませんが」
「…分かった。私も出来る限り、調査に協力しよう」
2、3分ほど何かを思案した後、彼は強い意志を持った目で私に言った。
「よろしくお願いします」
私は頭を下げてお願いするしかない。
「頭を上げてくれ。この国は、長年に渡って、孤児を買っていた事実に気付きすらしなかったのだ。僕は王族として、これに鉄槌を下さねばならない。むしろ、その事実を知らせてくれた君に感謝するよ」
そう言って、彼は手を差し出してくれる。
…これは握手だろうか。この国には、握手という文化がある事をその時、はじめて知った。
私は一抹の不安を覚えながらも、握手に応じた。
部屋の外側で、僅かにカタッという音がしたが、この時誰も気付く事はなかった。




