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29話 皆してどうしたの?

♦︎♦︎♦︎

運動会当日、アルバートによる選手宣誓から始まり、色々な種目が順に行われていく。


ちなみに、この国の運動会も、赤組、白組の2チームで点数を競うようで、本当に前世の運動会を見ているみたいだった。


今、私は運動場に続く廊下を歩いている。


涼しい用意された部屋にずっと居ても良かったのだけれど、誰も喋らず、自分のしたいようにしている。


別に良いと思うけどね。私は、誰とも喋らず終わるような、寂しい運動会にしたくなくて、部屋を出て、皆のいる外に向かった。


だって、運動会の醍醐味といえば、声を張り上げながら皆を応援することじゃない?そう考えるのは私だけで、この国の運動会は、誰も声を張り上げてなかったらどうしよう。


そう考えながら、廊下を歩いていると、ワァーという歓声が聞こえてきてほっとする。

良かった、やっぱり運動会はこうでなくちゃね。


♢♢♢

「あれ、ミア様もこちらにいらしたんですか」


丁度、種目が一区切りしたようで、私が運動場に着いた時には、ザワザワしているだけだった。

種目が白熱している時ならば、誰も私に気づいてくれないだろうが、少し落ち着いた今なら気づいてくれる女子もいたようだ。


「私も?」

「ええ、アルバート殿下も先程、運動場にいらっしゃってたんですよ」


アルバートは、社交的な性格なのね。我が国の王太子、ヘンリー殿下なら、絶対部屋に居たまま、延々と自慢話を続けられていたことだろう。


…は!いけない。自分の種目までは、楽しまないと、後で後悔するのは学習済みだ。


「まあ、そうだったのですね」

それからしばらく同じクラスの女子と話した。

次にお茶会をいつ開くから来てほしいとか、男子では誰が1番かっこいいと思うかとか、女子トークで盛り上がっていた。


すると、後ろからコツコツと、心地よい音が響いてきた。今までに後ろを何人も通っていたため、別に気にも留めなかった。


コツ、と私の後ろでその人が留まる。その人物を見た女子達がキャア、と赤い顔をした。

一体誰かしら。そう思い、後ろを振り返ると、そこにはアルバートが立っていた。


え、思わず目を見開いて驚いてしまう。私に何か用でもあるのだろうか。

「ミア様、運動会をお楽しみですか?」


キャーと黄色い歓声が上がる。いや、私には婚約者(後で破棄する予定だけど)がいるから。

別にアルバートとは何も無いから。皆、アルバートに失礼でしょう。


そんな考えは一切顔に出さず、にっこり笑って答える。

「ええ、ありがとうございます。我が国にはこのような催しがないため、とても新鮮で楽しいです」


実は、我が国には運動会がない。私にとっては、実にありがたい話なのだけど。

代わりと言ってはなんだが、騎士養成学校の生徒達によるトーナメント戦とか、授業参観とか、この国にはないイベント(?)がある。


「そうですか。あなたが楽しまれているなら、良かった」

うーん、どうして私に話しかけてきたのかしら。


そう考えてハッとする。そういえばさっき、ルイスやリアムと話していたわね。

多分、留学生の皆に聞いて回っていたのね。こうやって自主的に声をかけていると思うと、アルバートの人の良さが分かるわね。


「我々留学生に気を遣って頂き、ありがとうございます」

「………ふっ」

私の答えが予想外だったのか、彼は一瞬きょとんとした顔をした後、思わずといった感じで笑った。


あれ、私変なこと言ったかしら?


周りを見てみても、吃驚したような顔の人や憐れむような顔の人が多い。

やばいやばい。何か粗相をしてしまったのかしら。どうしよう、分からないわ。


ぐるぐる考えていると、私が混乱しているのが分かったのか、アルバートが話しかけてくる。

「笑ってしまって申し訳ない。それでは、私はこれで」

そう言って彼は去って行った。


「悪女だ…」

誰かにそう言われたのが聞こえた。え、私、今アルバートに意地悪なんてしてないわよ。

「…???」


どうしましょう、何がダメだったのか、さっぱり分からないわ。

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