25話 嫌味かは判断できない
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「よく来てくださいました」
そう言って迎えてくれたのは、公爵夫人。このお茶会の主催者だ。
今回、お茶会に招待されたのは、私1人だけのようだ。変ね、いつもなら私以外に数人、呼ばれるものだけど…
「この国には、公爵家がこの1家しかありません。それにも関わらず、我が家があなたをお茶会に招待するのが、他の貴族よりも遅れてしまったこと、深くお詫び申し上げます。主人に、ハプニングが発生したため、処理の準備が終わるまでは、茶会を開くのは待って欲しいと言われまして」
彼女はそう言ってにこっと笑った。
うーん。つまり、こう言いたいわけだ。この家より先に、他家の茶会に参加するなんて非常識だ。よくも公爵家の面目を潰してくれたな、と。
普通、留学生は、高貴であればあるほど、それ相応の身分の人から交流を始める。
にも関わらず、私が公爵家のお茶会の招待を待たずに、他家の茶会に参加したのは、公爵家の面目を潰したことになることもあるのだ。
だが、私の場合、それは当てはまらない。何せ、公爵家には年頃の女の子がいないのだ。それならば、はじめがこの家の茶会でなくても、問題はないはずだ。
しかも、ハプニングって何だ?そんな情報は入っていない。しかも、処理の準備って?
私を非難したいなら、こんな言葉付け足さなくて良いのに。
一体何が言いたいのかしら?
そこまで考えてから、ふぅ、とため息をつくと、にっこり笑って答える。
「まあ、そうだったのですね。早く、この国の方々と仲良くなりたくて、お茶会の招待状を頂ければ、出来るだけ参加しようと心に決めていたんです。ですが、結果的に公爵家の方々に不快な思いをさせることになってしまったかもしれません」
私は決して謝らない。別に悪いことをしたわけではないし。
だが、夫人はきょとんとした。
「まあ、不快な思いだなんて。そんなことはありませんよ」
…あれ、もしかして嫌味を言われたわけではなかったのかしら。
「まあ、立ち話も何ですので」
そういうと、庭に案内された。バラや色々な花が上品に咲いている綺麗な庭園だ。
私の家にも、こんな庭が欲しいかも。
彼女の横を通った時、ふわりと良い匂いが香る。
「とても良い香りですね。もしかして、香水ですか?」
純粋に気になった。すると、夫人は嬉しそうな顔をして答えてくれる。
「ええ、そうなんです。これは我が公爵家オリジナルの香水で」
とても嬉しそうな顔に、嘘があるように見えない。
もしかして、嫌味の言い合いとか、そういうのはやってこなかった人なのだろうか。
全然、言葉に裏がない。
その後は、彼女との和やかなお茶会がスタートした。
夫人自身は、ホワホワした人で、計略に向くとは思えない。
公爵はどんな人かはまだ分からないけれど、犯人の可能性は低いのかも知れない。
うーん。これは本当に、どこが孤児の売られた先か分からないわね。
そう考えた時だった。
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