24話 お茶会での情報収集
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この留学で課された課題。それは、この国の貴族とコネクションを作ることだろう。
私は王太子の婚約者だから、余計に。
でも、私が学校に行きはじめた当初、アルバート様以外、誰もが私を遠巻きに見るだけで話しかけてくれなかった。
そんな時、ある貴族の家からお茶会の手紙が届いたのだ。
内容は、年頃の子女、しかも上級貴族だけが参加できるお茶会の招待状だ。
これは是非参加しないと、と思い、私はそのお茶会に参加した。
結果的にこのお茶会に参加したのは功を奏した。
「ミア様って、どこか冷たい印象だったけど、話してみると気さくな方だったわ」
「私達の話をきちんと聞いてくれて、とても話しやすかったの」
仲良くなった女の子が、私の印象をこのように話しているのを聞いた、と話してくれた。
あのお茶会以来、毎日、学校終わりに、どなたかの家でお茶会を開いてくれる。
大体、ご両親も出てきて、私に挨拶してくれた。この国に来て、2週間を過ぎた頃には、愛想笑いに磨きが掛かった気がする。
休みの日には、親世代の人達が開くお茶会にも、招待状がくる限り参加した。
彼女達の会話の中に、孤児売買を行う家がどこか分かるヒントがあるかもしれないし…
仮令、どんな会話でも聞き逃すことがないよう、しっかり皆さんの話を聞き、覚えていった。
そのためのドレスも急いで用意してきたしね。
ただ、毎日そんな調子だと、いつか限界が来るわけで…
「つ、疲れた…」
結局、何の収穫もないまま、2週間が過ぎようとしていた。
「お疲れ様です」
そう言って、マッサージしてくれるのはエミリアだ。
2人にも、侯爵家から順に調査に入ってもらっていて、ろくに休みの日を取れていない。申し訳ないと謝ると、そんな事は当たり前ですよ、と言われた。この国には、週休2日制はないらしい。
「でも、流石に何の手がかりも無いのはまずいですね」
心の傷に塩を塗ってくるのは、ヒューゴ。
いや、やばいって分かってるよ。分かってるんだけれども…
「こんなに手がかりがないと、国内で孤児達が労働に使われてたりする可能性もあるよね」
1日でも早く、孤児達がどうなっているのかを突き止めなければ。
自分の無力さに涙が出てくる。
「まあでも、毎日お茶会に参加しているお陰で、大体のこの国の貴族と繋がることができたじゃないですか」
エミリアがフォローしてくれる。マジで天使…
そうなのだ。どこどこの侯爵夫人は宝飾品に目がないとか、どこどこの伯爵夫人は不倫しているんじゃないかとか。
そういう噂にいつの間にか詳しくなってしまった。
お茶会で、そんな話が聞きたかったわけではないのに…
「明日はいよいよ公爵家主催の茶会ですね」
「ええ、そうね。一層気を引き締めていくわ」
疲れた体を癒してもらい、大分心も回復した。
ノアの母の生家が、孤児の売買に関わっているなんて思いたくない。
でも、ノアが何の確証もなく、この家が犯人だ、と言うとは思わない。
色々悩んでも仕方がないと、その日は眠りについた。
♢♢♢
朝起きて、いつもよりも気合いを入れてメイクをしてもらう。
「楽しみですか」
不意にエミリアに聞かれる。
「うーん。不安の方が大きいかも。どうして?」
「いいえ、お顔がいつもと違われたので」
どうして顔色が違ったら、楽しみかどうかを聞いたのか、エミリアの思考はよく分からなかった。
それでも、「今日は何か、良いことあるかもですよ」と言われる。別に、今日は良いことあるかも、と言われて悪い気はしないので、「ありがとう」と答える。
何だか気持ちは晴れない。
メイクをして、いつもより綺麗になっても、昨日からのもやもやした気持ちは消えないまま、公爵家のお茶会に向かった。