23話 失敗した歓迎パーティー
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翌日。国王が言っていた通り、私達の歓迎パーティーが開かれた。
ただ、親世代の貴族は一切おらず、子供達だけが集められた親睦会のようだ。
かっちりとしたパーティーを想像していた私は少し驚いてしまった。
けど、皆が家格の上下なんて関係なく話しているなんて…
前世ではそんなこと当たり前だったはずなのに、この世界で生きてきた15年間の常識が染み付いてしまっている。なんか、少し切なくなってしまった。
いつか、我が国もこんなパーティーがなされるようになったら良いな、そう思いながら、ジュースを手に取った。
立食式パーティーだから、食べ物を取るには困らない。けど、喋る相手には困ってしまった。
この国には、婚約者がまだいない侯爵令嬢や伯爵令嬢が何人もいる、というのは事前に聞いていた。
だからこそ、家柄良し、顔良しの3人が注目されるとは思っていたけど…
まさか、空気のような扱いを受けるとは思わなかった。私の婚約者は隣国の王子だと既に知っているのか、話しかけてくる人は皆、どこか線を引いているように感じる。やっぱり少し寂しい。
あの3人はすぐに女の子に囲まれ、ここからは見えない。
はあ、公爵家の嫡男、ジャスパーはどこかしら。全然見当たらないんですけど。
少し憂鬱な気分でチビチビジュースを飲んでいると急に後ろから話しかけられた。
「楽しんでいますか」
銀の目と銀の髪。この方は…
「お初にお目にかかります。王太子殿下」
コップを置き、カーテシーをしようとすると、途中で制される。
「ここは、子供だけの無礼講の場だから、そんなに畏まらなくて良いよ」
そういうことならと、王太子と対等に向き合った。
「ありがとうございます。王太子殿下」
「王太子殿下、じゃなくてアルバートで構わないよ。流石に公式の場では無理だろうけど、このような場では、アルバートって呼んでくれ。その呼ばれ方は嫌いなんだ」
何か、嫌な思い出でもあるのだろうか。別に構わないけど。
「それでは、アルバート様、とお呼びしますね」
「ああ、ありがとう」
その後、アルバートから、この国での魔石の扱いなどの興味深い話を聞くことができた。
魔石とは、文字通り魔物から取れる石のことであり、専用の魔法陣を用いれば、光を灯したり、何かを動かしたりする事ができる。
だが、デメリットとして魔石を用いれば、有毒ガスが発生するのだ。余程のことがない限り、魔石は用いられることはない。
しかし、この国のシンボル、時計塔には魔石が用いられているのだそうだ。換気さえしていれば、問題ないからと。
ちなみに、この世界全般に魔法というものは存在しない。
この事を知った時に、どうして魔物はいるのに、魔法はないんだ!と叫んだのは内緒である。
あまりにもこの話に盛り上がりすぎて、ジャスパーのことは頭から消え去ってしまった。
♢♢♢
「それで、公爵家の嫡男と話すのを忘れてしまったと」
「うぅ…ごめん」
王城に用意された自室に戻り、エミリアに聞かれたことで、ようやくジャスパーのことを思い出した。
やってしまったわ…これでは本当に何にも分からない…
「まあ、2ヶ月ありますから、ゆっくり調べていきましょう」
「エミリアー!!」
「ただし、学園に入学されてからは、ちゃんと誰が怪しいか探ってもらわないと。いくら私達でも2ヶ月の間で全ての貴族の家を探すのは不可能ですからね」
「ええ、分かっているわ」
これからはちゃんと頑張っていこう!
そう心に決めたのだった。




