2話 状況を整理しよう
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もう一度目を覚ますと、目の前は真っ暗だった。
一体何時間寝てしまっていたのだろう。
でも、いっぱい寝たおかげか、ごちゃごちゃだった頭の中を整理できた。
今までミア・トスルーズとして生きてきた記憶はある。前世の記憶もある。別にそれで良いのだろう。
ふぅ、と息を吐く。
私の記憶が確かならば、もうすぐ学園の入学式。ゲームスタートの直前だ。
今の私は15歳、そして、断罪される卒業式の時の私は16歳だから…
「あと、1年、か…」
でも、今の私は誰かを虐めてたり、残酷な行為を行ったりなんて事はない。
数ヶ月でそんなに性格が変わってしまうとは思えないし…
「一体、私に何があったのかしら…」
私の独り言は、真っ暗な私の部屋に溶けていった。
♢♢♢
今、ここで悶々と考え続けても何も出ないわね。とにかく、一度状況を知るべきだわ。
そう考えると同時にグゥーとお腹の虫が鳴いた。
…まずは何か用意してもらいましょう。腹が減っては戦はできぬと言うし。
チリン、とハンドベルを鳴らすと、なんとメイドではなく、兄がやってきた。
「ミア、目が覚めたのかい。具合はどうかな?悪い夢も見なかったかい?」
周りに花が咲いたようなキラキラの笑顔の兄が部屋に入ってくる。
今までのミアとしてはいつも通りの面倒な兄ね、と思っているけど、イケメンの耐性が全くない私としては心臓がバクバク言ってる。なんだか、すごく変な気分だ。
「…ええ、お兄様。体調は特に問題ありません。夢も見ませんでしたわ」
「それは良かった。夜ご飯はもう用意してあるよ。さあ、服を着替えておいで」
そう言い終わると同時に、何人かのメイドが入ってくる。
誰も見たことがないわ。兄は、本当に全員クビにしてしまったのね…
そう考えているうちに着替えは終わっている。
「皆すごく仕事が早いのね、ありがとう」
普通にお礼を言っただけなのに、メイドの皆はすごいびっくりしていた。
何か私、変なこと言ったかしら…
♢♢♢
食堂に入ると、既に兄は席についていた。
「ミア、早かったね」
「ええ、メイドの方々がとても優秀でしたから。お兄様、メイドの誰も見覚えがないのですが…しかも、お礼を言ったら驚かれてしまったのですが…」
「新しく雇ったメイドだから、ミアが知らなくて当たり前だよ。前の主人から酷い扱いを受けていたみたいだから、ミアの対応に驚いたんじゃないかな」
どうやってこの短時間で、あんな優秀なメイドの娘達を引き抜いてきたのだろう。
じとりとした視線を向けても、兄はにこにこしているだけ。
ポーカーフェイスが上手い兄が、私に何かを読みとらせてくれるわけもなかった。
「あと、元々の私のメイドを誰も見ていないのですけど…」
「ああ、皆、気分が悪いと言ってたから、今日のところは帰らせたよ」
寝起きにみた王子様のような笑顔と違い、今は黒いものが混じっているような気がする。
これ以上は何も何も聞くべきじゃないような気がして、私は黙って料理に手をつけた。