17話 理不尽な命令
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その日、いつも通り授業を受け、家に帰ろうとすると、突然教室に誰かが入ってきた。
キャー、という黄色い悲鳴が上がる。彼は確か、ヘンリー王子の未来の側近候補の…
キョロキョロと教室を見回したと思うと、まっすぐこちらに向かってきた。
うわ、これは間違いなく、ヘンリー絡みね、面倒だわ…
案の定、彼は私の前に立ち止まった。
「ヘンリー王太子が、放課後、生徒会室に来いと」
それだけ言い残すと、スタスタと去っていった。
何なのあれ!!失礼にも程があるでしょう!!
プンプンに怒りながらか、言われた通り、生徒会室に向かう。
でも、実は、生徒会室って1度行ってみたかったんだよね。ゲームでどのルートに入っても、生徒会室で攻略中のキャラと2人きりで話すのだ。
…まあ、実際にそんな事をしたら、この国の常識的にアウトなんだけれど。
やっと生徒会室前に着いた。元は、王妃の私室だったらしいので、ドアだけ見てもとても豪華な造りだ。
コンコン、ドアを叩き、「ミアです。失礼します」と言ってドアを開けた。
あ、中からの許可を得ず、開けちゃった。そう思ったのも束の間。
中から見えたのは、ソフィアとヘンリーがソファに一緒に座っているところだった。
しかも、腕と腕が当たるほど近い。ソファは3人座っても余裕があるほど大きいにも関わらず。
「な、ミア!まだ俺は入室許可は出してないぞ」
まずこの状態を見られた一言目がそれって…逆に何も言えない…
一方、ソフィアの方はアワアワしている。こちらには、一応、常識というものがあるらしい。
でもね、さっき頬を染めているところを見ちゃったわけ。
ふーん。もうそんなところまで来たんだ、ふーん。
ヘンリーは、生徒会長のみが座る事ができる、豪華な椅子に座り直すと、私にこう言った。
「お前には、俺の今の婚約者として、隣国の交換留学に参加してもらう」
「それは、決定事項でしょうか」
交換留学に参加するかどうかは任意だったはずだけど…
「ふん、もう父上と母上には、お前が交換留学に行くとは伝えてある」
こうするのは、至極当然という顔で言われた。
…はぁ!?意味わかんない!任意の事柄を強引に参加させるって決めて、事後承諾とか…
あれね、婚約者である私は、面倒な存在だから、体よく学園から追い払って、私がいない間にソフィアとイチャイチャしたいわけね。
はらわたが煮えくり返る思いがした。それでも、決定には従ってやる。
「承知しました」
ええ、結構。どうぞ、ご自由に。
絶対に卒業式で地獄に突き落としてやるんだから、そう心に誓った。
♢♢♢
「うわ、それはひどいな」
一通りの話を聞いた彼は、そう言いつつ、少し面白い事を聞いた、みたいな顔をしていた。
「良いわよ、約1年後には、絶対地獄を見せてやるんだから」
そう言い切ると、彼はゲラゲラ笑い始めた。
「何よ、言いたい事があるなら言いなさいよ」
ギロッと睨むと、彼は笑いを収めてくれた。
「ああ、悪い。それでこそ、慶都だよ」
久々にその名前で呼ばれ、何故か、ドキッとしてしまった。




