16話 謎は深まっていく
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私、授業についていけるかしら、と思ったけれど、実際はそんなに心配することはなかった。
学園の授業は、日本では高校生で習うような内容で、この国特有の数字とか、文字とかは特に無いから、何の問題もなかった。
確かに15歳から18歳は、高校生だもの。当然よね。
でも、大学生まで生きた事がある私には復習となる内容が多かった。
まじめに日本で勉強して良かった!!
宿題はちゃんと提出しつつ、やっと終わった1週間。
今日は、もう1度、ノアの見舞いに行く日だ。
前回は何も持たずにお見舞いに行ってしまった。この国では失礼に当たらないのだけど、元日本人としては、とても失礼な事をした気分だ。
なので、今回は、私が大好きなお菓子屋さんで買った、焼き菓子の詰め合わせを持ってきた。
前回と同じく、ヘンリー王子の従者にノアの部屋まで案内してもらう。前回と同じく、ヘンリーの様子はどうか、と聞いてみると、
「や、本当にやばいですよ」
と笑っていた。
なんか前に会った時より少しやつれたような気がする。
今度、ヘンリー付きの騎士や使用人に何か差し入れをしよう、そう心の中で決めた。
「ああ、来てくださったんですね」
ノアが笑顔で迎えてくれた。本当に誰これ…
こんな爽やかイケメン知らないんですけど…
「それじゃあ、失礼します」
そう言って前回と同じように彼はノアの自室には入らなかった。
どうやってもヘンリー王子とノアの間には溝があるのね…
そう考えると、少し悲しくなる。いやいや、ノアの兄は、あの傲岸不遜のヘンリー王子だったわ。
「それじゃあ、話し合いを始めようか」
もう、いつもの自信満々で、自分勝手なノアに戻っていた。
♢♢♢
「なるほどな…」
私の話を聞き終わったノアは、難しい顔をしていた。
「1つずつ問題を解決していこう。まず、孤児院の子供を売り飛ばしていた、か。その孤児院、どこか分かるか?」
「えっと、確か聖ブリットハム孤児院だったはず…」
「…その孤児院、何人もの上級貴族が寄付を行っているところだろ?普通、そんなところの孤児を売り飛ばすか?」
「言われてみれば、確かにそうね」
なぜ、今まで気が付かなかったのだろう?
何人もの貴族が寄付すると言うことは、貴族が孤児院に足を運んでいる可能性が高いということ。
ゲームでも、ソフィアはヘンリー王太子に連れられ、実際に孤児院に足を運び、年長者の少なさに疑問を持つことで、ミアによる孤児の売り飛ばしが発覚していく。
ミアは公爵令嬢で、未来の王太子妃が約束されているのに、そんな事をする意味は?
しかも、そういう資料には素人であるソフィアでも分かるような、分かりやすい工作をするか?
考えれば考えるほど、疑問が湧いてくる。
「とにかく、俺は聖ブリットハム孤児院を探ってみる」
私がぐるぐる考えているのが分かったのか、彼がそう言ってくれた。
「分かったわ。じゃあ、この国に帰ってきたら、調査結果を教えてね」
私はにっこり微笑みながら言う。
「は?この国に帰ってきたらってどう言うことだよ?」
「あー、実はさ、来月から2ヶ月間、隣国に交換留学しに行けってヘンリーが」
来月まではもう1週間しかない。そんな短期間で、孤児院に行って調べ上げるなんて不可能だろう。
「…はぁ!?お前が希望したのか」
「いや、実はさ…」
思い出すのは、今から3日前の出来事だった…