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15話 内緒話は紙で

♦︎♦︎♦︎

『声を出すな、この部屋は今、盗聴されている』

この言葉を見た私は、目を見開いた。どうしてそんなことを…

いや、それよりも記憶がないはずでは…


私の疑問に答えるかのように、またノアはペンを走らせた。


『俺は今、記憶をなくしたフリをしている。

なんせ、殺されかけた後から、ずっとこんな風に監視されているからな。だが、今のところ監視されているだけで、俺を殺しに来ない。

もしかしたら、犯人にとって知られたくない情報を、俺が持っているのかもしれない』


「…っ!!」

この国の中で、王子の部屋を盗聴しようと思う人なんてそう多くはいないはずだ。


王子が殺されかけ、しかも盗聴されるなんて事態、騎士団が動かないわけがない。


しかも、この国の騎士団の拷問は、他国に比べても厳しいことで有名だ。騎士団が拷問したなかで、秘密を言わずにいた人はいないと言われている。


そんなリスクを犯してまで、王子を狙ってくるなんて…


「初めまして、ミア嬢。君は兄の婚約者だと聞いたよ。だけど、すまない。兄のことも、君のことも何1つ思い出せないんだ」


ノアは急に何を言い出すんだ、と思ったが、何も話さないのは怪しいから、当たり障りのない日常会話をしよう、ということだろう。


「殿下がお気になさることはありません。記憶がないことは悲しいですが、ご兄弟で新しい思い出を作っていかれるのを願っております」

そう言いつつ、ノアに向かって両手を差し出す。


今度はノアの方が、何を言い出すんだという顔をしつつ、私の言ったことに同意の言葉を述べてくれる。

「そうだね、まだ会っていないけど、兄とも仲良くできたらと思うよ」


声色だけ聞けば、まだ兄に会ったことがないことを悲しんでいるように聞こえる。

実際は不機嫌なだけなのだろうけど。


私はノアから紙とペンを受け取り、ノアへの質問を紙に書きながら、何気ない会話を続ける。

「殿下、本日は何か召し上がられましたか。もしまだでしたら、何か頼みますけれど」


『ノアを襲った人々のその後は?他にも今分かっていることがあれば教えて』

そう書いた紙をノアに手渡す。彼は紙に書いた内容を見ると、少し眉を顰めだが、さっきの私の質問に答えながら、紙にすらすらと何かを書いていく。


「今日はもう、朝食も昼食も食べたんだ。気遣ってくれてありがとう」

「いえ、殿下に食欲がおありで何よりです。そういえば…」


ノアには書くことに専念してもらうため、私が主体で話をしていく。

数分し、私の話がひと段落したところで、ノアがこちらに紙を見せてくれた。


『俺を刺した奴を含め、騎士団が俺の部屋に乗り込んだ時、全員コト切れていたらしい。誰に雇われていたのかはおろか、俺を襲った奴が何処の誰かすら分からないらしい。


俺はこの1年、記憶を失った王子として振る舞おうと思う。慈善活動と称して色々なところを訪ね、探っていくつもりだ。


来週、いや、再来週には、鬱陶しい盗聴野郎もいなくなってると思うから、その時にゲームの詳細を教えてほしい。お前が殺される事が無いよう、これからの作戦を一緒に立てよう』


全てを読み終え、顔を上げた。それを確認すると、ノアはようやく口を開いた。


「実は記憶が無くてずっと不安だったんだ。

でも貴方の話を聞いて、僕はすごく人に恵まれているんだな、って感じる事ができたよ。本当にありがとう。また、来てくださると嬉しい」


余程この言葉が言いたくなかったのか、眉を顰め、口元が引き攣っている。

思わず、ふふっと笑ってしまった。


「ミア様、そろそろ…」

オリバーに声を掛けられる。めっちゃ良いタイミング!!


「そうですね、病み上がりですもの。もし、許可が出ましたら、来週もお見舞いに来たいと思います。それでは、お大事になさってください」


そう言って私はノアの部屋を後にした。

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