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13話 お転婆でも良い

♦︎♦︎♦︎

「それで、一体どうして、あんなことをしたんだ」

食事を終えて、1段落した時、やっと父が口を開いた。

声は平坦だったため、怒っているのか、どう思っているのかは分からない。


「あんなこと、とは具体的にどういったことでしょう」

深呼吸をしてから答えた。ここで、声が震えてしまえば、悪いことをしたと思っているようになると考えたからだ。


だが、父はそんな私の態度を予想していたのか、特に驚く様子もなく、話を進める。

「ノア王子の寝室に、ヒューゴとエミリアを向かわせたことだ。幸い、王家には気づかれていないようだが、もし知られれば、お前が処罰されていたかもしれないんだそ。しかも、王子に暗殺者を仕向けた最有力候補になる」

父の声はいつになく、厳しいものだった。


「もし、私が2人を向かわせていなければ、ノア王子は確実に殺されていたでしょう。私は間違ったことをしたとは思いません」

これだけははっきり伝えなければ。


父は、私の態度を見て、ふぅっとため息をつくと、こめかみを押さえた。

「では、質問を変えよう。どうして、あの日、第2王子の部屋に暗殺者が来ることを知っていたんだ」


この質問がくることは分かっていた。


だが、良い答えが思いつかなかった私は、どうせ記憶を無くしているなら、ノアが言い出したことにすれば良いと、いう答えに至った。すごく卑怯な気もするけど。

「ノア王子から直接伺いました」


この答えに父が眉を顰める。

「それで、援護を要求されたのか?」

父に怒ったような声で聞かれた。そんな事はないので、慌てて否定する。


「いいえ、そのような事は決して。ですが、どうしても心配で…」

家族にこんなに私が叱られたことはない。

それだけ、父と兄に心配をかけただろう。後ろめたさから声がだんだん窄んでしまう。


私の心境の変化に気がついたのだろう。


父は立ち上がって、私の所に来ると、ぽんぽんと頭を撫でてくれた。

「人を助ける事は決して悪いことではない。ただ、もう少し、周りを見られるようになりなさい」


「はい…以後、気をつけます」

私がそういうと、父は明後日の方向を向いて、笑った。


「ミアを見ていると、亡くなった妻のことを思い出すよ」

「ええ!!母は、淑女の鑑と言われるほど、お淑やかだったはずでは…」

母の顔と私の顔が似ているとは言われるけど、性格は全然違うと思っていた。


「いいや、ミアぐらいの年の時は、とてもお転婆だったよ。私と結婚してからは、公爵家の名誉の為に、淑女の仮面を被るようになってくれたんだ。家ではずっとお転婆だったけどね」

これには、私だけでなく、兄も驚いている。でも、兄は小さい時には母と過ごしていたはずでは…


私が言いたいことに気付いたのか、兄が私の方を向いて口を開いた。

「確かに私が3歳の時まで母は生きていたけど、もう記憶が朧げだよ。ずっとお淑やかだったって聞いていたから、私も勝手に母は、深窓の令嬢のような人だったと思っていたよ」


そうだったのね…

じゃあ、本当に根からお淑やかな人ってこの世にいるのかしら。まあ、いるんだろうな…


意外なところで母の昔の話を聞けた私は、なんだかほっこりした気持ちになった。


この時間だけは、不安を忘れる事ができた。

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