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106話 ヘンリーからの呼び出し

♦︎♦︎♦︎

その日、私は珍しくヘンリーから呼び出しを受けた。しかも、王城に来いって、何ヶ月ぶりだろうか。もしかして、今婚約破棄される?それはそれで良いけど。


「殿下、トスルーズ公爵令嬢がご到着なされました」

登城するとヘンリーの自室へと通させた。違和感を覚えながら部屋に入ると、机に大量の書類があり、そこに手を置いたヘンリーがいた。


「今日からお前は俺の代理だ」

「はい?」

「今日は、とりあえずこの書類を処理してくれ」

「はぁ??」

思わず、素の自分が出てしまう。

すぐにごほん、と咳払いをして自分の心を鎮めようとする。


いや、やっぱり意味分からない!

どういうつもり??


「じゃあ俺は出掛けるから、頼んだぞ」

「へ?あっ、ちょっと!」

私が言葉に詰まっているうちにヘンリーは部屋を出ていってしまう。



「もう、なんなのよー!!」

私の大声が王城中に響き渡ったのだった。


♢♢♢

押し付けられたことには腹が立つが、こうなったら何か不正の証拠を見つけてやる。

1枚1枚を隅々までチェックしながら、印章を押したり貴族の嘆願書への返答を書き込んでいく。


でも、暗号などの類だと、私見つけられないかも。

前世ではクイズ番組とかよく見たけど全然解けなかったんだよね…


「ぜーんぜん見つからないんですけど」

2、3時間かけて処理し終えるが、手掛かりは見つからず。(単に見落としただけかもしれないが)


「もー、なんなのよ。ヘンリーはまだ帰ってこないし。仮にも婚約者なのに、執務を押し付けて自分はどっかへ行くとかあり得ないんですけど」

グデッと机に突っ伏す。流石に疲れた。

ヘンリーが目の前にいない為、どんどん文句が出てきてしまう。


もう帰ろうかと思った時、1冊の本が目に留まる。

「何かが挟まってる…?」

人の物を漁るのは少し罪悪感があるが、気になったのでその本を取り出して中の紙を確認する。


「なっ!これ不正に関税を上げることを承認した書類じゃない」

そこに書かれていた内容は要約すると、ある地域における関税の引き上げを承認し、その差額の一部を国に納める代わりに残りを懐に収めても良い、とするものだった。


「こんなバレたら大変な書類をこんなすぐ見つかる所に放置しちゃダメでしょ」

ヘンリーの軽率さに若干呆れながら、私はその紙をポケットにしまう。

代わりに白紙の紙を少し本からはみ出した状態で挟んでおいた。


自分も中々に軽率な人間かもしれないが、いつヘンリーが帰ってくるか分からないため、手の込んだことはできないのだ。

明日、この手紙に書かれていることを丸写しした紙を同じ本に挟んで置いたら大丈夫…かな?


「書類を確認されたら終わりだけど、あのヘンリーがわざわざ書類を確認するとは思えないし…まぁ、いっか」

私はヘンリーの部屋を後にしたのだった。

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