1話 転生してました
初めての投稿なので、設定が曖昧になっているところがあるかもですが、温かい目で読んでくださると嬉しいです!
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「きゃーーー!!!」
誰かが叫ぶ声が聞こえる。
けど、私はその瞬間に意識を手放していた。
♢♢♢
「ん、うん…」
「…!ミア様、お目覚めになられたんですね!」
私が気がついたことで、ずっと看病してくれていたであろうメイド服の人が、私を放置してどこかへいってしまった。
今まで見守ってくれていたなら、起きたらすぐにどっか行くんじゃなくて、私の健康状態とか聞いて欲しかったな…
めっちゃ慌ててたけど、どうしたのだろう…
窓からの光が強くて目を細めてしまう。
やっと光に目が慣れてきた私の目に飛び込んできたのは、綺麗な装飾が施された天井。
体を起こして見えたのは、目の前には腰を抜かしそうなほど煌びやかな装飾品の数々。
全体的に西洋風の造りで、ほら、なんて言うんだっけ、ロココ調?みたいな…
色々たわいも無いことを考えていると、次第に頭がスッキリしてきた。
うん…これは今の私の自室だ…
「そうだ、私、階段から落ちたんだ…」
頭を打った弾みで、自分の前世を思い出したんだと思う。
私の詳しい前世の内容を思い出すのは、また今度にして。
それよりも、問題なのは…
彼女、確かこの家のメイドよね。しかも、誰かを呼びにいったと言うことは…
バン、という扉の開く音がしたと思うと、バタバタと私の部屋に入ってくる人が1人。
「良かった、ミア、心配したんだよ」
私を溺愛する兄が部屋に入ってきた。いつもなら、面倒だな、と思うところだけど、今日の私は顔を突っ伏してしまう。
やっぱりーー!!!!!
今まで生きてきた15年間の記憶からそうだと思ったけど、やっぱりかーー!!
♢♢♢
説明しよう。私が転生したのはミア・トスルーズ。
トスルーズ公爵家長女。燃えるような赤い髪と目。傾国の美女といっても過言では無いほどの美貌。それにすっごい美ボディの持ち主。今年、学年2位の成績で学園に入学が決まっている。
今話しかけていたのがクラーク・トスルーズ。
私の兄だ。同じく赤い髪にダークブラウンの目。鍛え上げられた体は筋骨隆々なわけではなく、とてもしなやか。
今年、トップの成績で騎士団に入団することが決まっている。しかも、この年で、騎士団総長と肩を並べるほどの実力らしい。
母は私が幼い頃に亡くなってしまったのだけれど、淑女の鑑と言われるほど、人格的にも、礼儀作法も優れた人だったようだ。
父は、現宰相として長年国を支えていて、国王からの信頼も厚い。ちなみに、今年45歳になるのだけれど、母が幼い頃に亡くなっているため、今でも後妻に収まろうとする人は多い。
こんな優秀すぎる人達の中で育ったミアは、密かにコンプレックスを抱えていた。
今の私からしたら、ミアも十分美人で凄い人だと思うのだけど。
♢♢♢
さて、私がどうしてミア・トスルーズという名前に聞き覚えがあるか。
…それは、前世で大好きだった乙女ゲームの中に悪役令嬢として出てくるからなのだ!!
貧乏男爵令嬢のソフィアが、貴族のみが通う学校に入学。高位貴族の攻略対象者と出会い、愛を育んでいく王道の乙女ゲーム。その中でミアは王太子ヘンリーの婚約者として、ソフィアに立ちはだかる悪役令嬢として登場する。
表向きは温厚で、誰にでも優しい。
だが、裏では、虐めを繰り返し、孤児院の子供を売り飛ばしていた上に、劇薬を密輸、販売。極め付けは、国庫を横領。お金は全てギャンブルに注ぎ込んでいたらしい。
これを主人公と攻略対象者たちが突き止め、学園の卒業式に断罪されることで死刑となる。
♢♢♢
「え、私、死ぬのかしら…」
突然突っ伏し、独り言を言い始めても、兄は私を軽蔑することはなかった。むしろ…
「…っ!ごめんよ、ミア。そんなに思い詰めてしまうなんて、僕の責任だよ!!使用人は、全てクビにしておくから!!」
つい呟いてしまった言葉にすごく後悔した。そうだった、兄は私を溺愛してくれているのだったわ。
「違うわ、お兄様!!少し怖い夢を見てしまって…」
いくらなんでも子供っぽい理由だったかもしれない、と言葉を発した後に後悔した。
こんな言葉を兄が信じるはずがない、と兄をチラッと見たけれど…その言葉を聞いた兄は、ふふっと笑った。
「そうだったのか。さあ、もう一度眠ってしまいなさい。大丈夫だよ、ミア。僕は君が眠るまでここにいるよ。」
兄は、サラッと私の前髪を耳にかけてくれると、優しく微笑みながら言った。
本当になんだか眠いわ。一度眠ってから、これからのことを考えましょう。
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