表情菌
掲載日:2022/08/22
じめじめした梅雨の時期が続いていた。
気候だけではなく夫婦間においても。
「はあーっ」
つまらないという表情で、ため息ばかりが口からでていくばかり。
表情菌が繁殖する。
頬杖をついていたのがよくなかったのか。
手のひらが顎からはなれない。
これも表情菌の仕業らしい。
腕に力を入れても手のひらは顎からはなれない。
「ちょっとあなた。手が顎からはなれないんだけど」
「はい?からかうのもいいかげんにって。ん?からかっているようでもないねこりゃあ」
「うーん。どれどれ。うんうん。わかったわかった。ふむふむ」
夫は私の頬と手から全身をくすぐり始めた。
ちょっと何?そんなことで?
「あはははははは」
私はくすぐったくて笑った。
するとどうだろう。私の顎にくっついていた手がすっとはなれた。あら不思議!
「ね。そういうことだよ」
私は笑い泣きの顔で夫を見つめた。
笑顔は表情菌の特効薬らしい。




