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エルギス

 戦闘訓練を終えたミレアとシャーロットは集合場所である大広場に向かっていた。


 二人が広場についた時にはすで人が集まっており、数は10人程だ。


「今回の依頼を受けた冒険者達はこれだけか」


 一人の精悍な体つきをした壮年の男が声をあげて確認している。


「私はエルギス。今回の任務を統括するものだ。皆私の指示に従うように」


 どうやら彼が先程アーノルドとミレアに会話に出ていたエルギスという人物らしい。


 集まった全員に対し、自分の指示は絶対だと言わんばかりの口調だった。


 初対面の人間が多いはずなのにこんな高圧的なやり方でうまくいくのだろうかとシャーロットは不安になる。


「……やっぱりあんな調子か、これはちょっと面倒になるかも」


 ミレアが苦虫を噛みつぶしたように呟く。


「やっぱり先程アーノルドさんと話していたようにあの人評判が悪いんですか?」


「まあね・・・・・・実力はあるけど性格に難ありというか。自分と意見が合わなかったり馬が合わなかったりする人間を力でねじ伏せてしまうところがあってね。ギルド内でもちょっとした問題児」


「そんな人でもAランクであればモンスターの討伐クエストの指揮を採ることが出来るんですか?」


「まあギルドのルールがそうなっているからね、他に都合の付く人間がいなかったのなら仕方ないよ。今回は従うしかない」


「そこ、無駄な私語は謹んで貰いたい」


 シャーロットとミレアが話しているとエルギスから叱責が飛んできた。


 本人の方に目をやると無視されたのがよほど嫌だったのか不快だという感情が顔に出てしまっている。


「またお前か、ミレア。なぜ貴様はこう指示や規則に従うということが出来ない」


「別にあんたは今回の依頼の統括を任されただけで規則そのものではないでしょ」


「へらず口を・・・・・・まあいい、今回は私が統括を任されているのだから私の命令は遵守してもらうぞ」


「はいはい、分かりましたよ。もういいでしょ、執拗に絡む人間は嫌われるわよ」


「ふん・・・・・・! 本当に生意気で忌々しい小娘だ」


 ミレアの返答にエルギスはそう吐き捨てて去って行った。


「本当に高圧的な人なんですね。なんか感じが悪いです」


「まあ、どんなやつかは今のやりとりで分かったでしょ。私に対しては最初からあんな感じよ。どうもこの年齢でAランクになったのが気に入らないみたいね」


「なんだか絵に描いたような面倒臭い人ですね……こういう人が責任者になってしまうギルドの仕組みもなんだかなあ……」


 エルギスの愚痴を二人がこぼしているうちに今回の参加者が全員揃ったのかエルギスは出発の号令をかけていた。


「よろしい、今回の参加者は全員揃っているようだ。それでは出発する」





 エルギスに率いられたギルドの一団はアイゼンベルクの近くの街道まで来ていた。


 すでに何度か魔物が出没していたがこれまではなんとか撃退出来ている。


「ふん、大型の魔物が出てきていると聞いていたがまったく遭遇しないではないか」


 エルギスが拍子抜けだと言わんばかりに吐き捨てる。


「雑魚ばかりで退屈だ。話にあった大型の魔物というのはいつ出てくるんだ」


 彼の傲慢ともとれる発言にミレアが小さな声で突っ込みをいれる。


「あんなふうに油断してるやつからやられるのよ。まったくあれで今回の責任者なんだから本当頭が痛いわ」


 実際辺りはもう日が暮れ始めている。


 夜になればなるほど視界も悪くなり戦闘の危険度も上がる。


 ミレアの言うことが現実になりそうで怖いとシャーロットも感じた。


「ミレア」


 唐突にエルギスがミレアに話しかけてくる。


「なによ、エルギス」


 話しかけてきたエルギスにミレアはあからさまに嫌そうな態度をとる。


 嫌いとはいってもその態度は直球過ぎないかとシャーロットは内心びくびくしながらこの会話を聞いていた。


「ここからは別行動だ。私と他6名でもう少し先まで行って魔物を探し、見つけた場合は討伐する。お前達は引き続きこの一帯のモンスターを掃討しろ、そちらの指揮はお前に任せる、忌々しいがお前以外にAランクの人間がいないのでな」


「もうあたりは暗くなってきてるけど正気? それに周りの人間も何度か戦闘をして疲労が溜まってきてるわ、このまま捜索を続けるのはあまりいいこととは思わないけど」


「黙れ、今指揮を採っているのは私だ、私の指示に従ってもらうと先程も伝えたはずだ」


「ああ、そう。ならあなたの指示に従ってあげるわ、こちらの指揮はお望み通り私が採ってあげるわよ」


 ミレアは愛想なくそう告げるともう話すことはないと言わんばかりにエルギスに背を向ける。


「ふん……」


 エルギスもミレアがおとなしく従ったためかそれ以上追求することはせず、他のメンバーを引き連れて討伐に向かっていった。


「だ、大丈夫だったんでしょうか……」


「放っておきなさい、言ったって聞いてくれはしないわ」


 不安そうに尋ねるシャーロットにミレアは無感情に答える。


 ここに残ったのはシャーロットとミレアの二人と後一人、シャーロットと同じ年齢ぐらいの男の子だ。


「それじゃ私達も行動を開始しましょう」

 ここまで読んで頂きありがとうございます。もし面白い、続きが読みたいと思って頂けたのならモチベーションの維持にも繋がりますので、下の欄の☆☆☆☆☆を★★★★★にしたり、ブックマークして頂けると嬉しいです。

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