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ギルド

「さてシャーロットの初めての魔道具作成も済んだから今度は別のことをしようか」


「別のこと? いったいなんですか?」


「あなたの戦いの経験を増やしたいわね。なんだかんだでモンスターとはこれからずっと戦うことになるんだし」


「確かにそれはそうですね……」


「あなたは戦闘の心得みたいなものはあるの?」


「父から少し剣の扱いとか身を守る術を習ったくらいですね……」


「あー、やっぱり本格的に自分でモンスターと戦ったことはないのか。やっぱり私と一緒にギルドの依頼で魔物討伐をしてもらうのがよさそうね」


 ギルド、シャーロットも話には聞いている。


 冒険者として登録したものに依頼を出して報酬を払う組織だ。


 その受ける依頼内容はモンスターの討伐から捜し物まで多岐に渡る。


「ミレアさんもギルドに冒険者として登録してるんですか?」


「え? うん、私これでもA級冒険者だけど」


 そう言ってミレアは冒険者の資格証を見せてくる。


 色はA級を示す銀色だ。


 ギルドの階級にはS~Fまであり、Sランクとなると数が限られてくる。


 Aランクはその下のため、彼女はかなりの実力者ということになる。


「めちゃくちゃ強い人じゃないですか……」


「でしょー! もっと褒めて!」


 えっへんと胸を張るミレア。


 この人はいろんなことに手を出していて感心する。


「そういうことだから、近くのギルドにまでいって討伐系の依頼を受けるよ。ほら早く支度して」


 ミレアに急かされてシャーロットは渋々準備を始める。


 この前彼女から貰った剣を帯剣し、指輪を指にはめ、ローブを羽織る。


 ローブはミレアが余っているからあげると渡してきたものだ。


 フード付きで顔も隠せるのでいざという時に役に立ちそうである。


「それじゃ支度は終わったね、さっさと出発しよう」





 工房を出発したミレアとシャーロットはアイゼンベルクに来ていた。


 この街の雰囲気はユナイティア王国の首都であったクレイストラの雰囲気と比べるともっと自由闊達な雰囲気だ。


 もともとこの街はユナイティア王国の魔法万能の支配体制を嫌った人間達が作り上げた都市国家だ、それゆえに真逆の空気を感じるのかもしれない。


 ちなみにこの都市の住人は魔法を万能視するのに反発しているのであって、魔法を使える人間を嫌っているわけではないとシャーロットはミレアから聞いていた。


「なんだか賑やかな街ですね、ユナイティア王国とはまた違っています」


「ここはギルドのSランクの人間達が取り仕切っている街だからね。ユナイティア王国と比べると大分雰囲気が違うでしょ」


「そうですね。ユナイティア王国はもっと秩序だった雰囲気がありますが、この街は本当に開放的な雰囲気ですね」


「でしょ。私もこの街の開放的で自由闊達な雰囲気が好き。だからこんなふうに冒険者登録してギルドに顔を出してるんだけどね。あ、あの店のランチはおいしいよ、今度一緒に行こう」


 そうやってミレアがギルドの建物に着くまでの間、立ち並ぶ店について紹介しながら街の中を歩く。


 やがて街の中央にある一際大きな建物が見えてきた。


 建物の作りも見るからに頑丈そうだ。


「ほら、着いたここがギルドの建物。まずはここで依頼を受けるよ」


 ミレアは扉を開けてなんの躊躇いもなく建物に入っていく。


 「お邪魔しまーす」


 ミレアが元気よく挨拶しながら、建物に入っていく。


 建物に入って目の前には受付があり、受付嬢らしき人が一人いる。


「あら、こんにちは、ミレアちゃん。今日はどんな用事?」


「こんにちはー、アーノルドとこの子の件で話がしたいから取り次いでくれないかしら?」


「了解よ」


 そういって彼女はカウンターの奥に引っ込んだ。しばらくするとそこから出てきて、


「もうちょっとで来ると思うから待っててねー」


 と報告をしてきた。


 どうやらミレアが会いたい人はここに今いるらしい。


 しばらくして一人の男性が上の階から下りてきた、体つきは精悍でとても逞しい。


 歴戦の勇者と言った風格の持ち主だ。


「ミレアじゃねーか、久しく顔を見てなかったが元気そうでなによりだぜ」


 その男性はミレアに親しそうに話掛けてきた。


「アーノルド、久しぶり。そっちも元気そうじゃない。まだまだやるつもり?」


「まあな、ほとんど若い者に任せているがやれる時はやるさ」


「相変わらずね、本当そのタフさには関心するわ」


 ミレアと会話していたアーノルドが隣にいるシャーロットに気付く。


「ん? そのお嬢さんは?」


「ああ、紹介が遅れたわね、ごめん。この娘はシャーロットっていうの、私の魔道具の研究を手伝って貰っているわ」


「ほう、お前が作っているあの珍妙な道具作成の手伝いか。この嬢ちゃんも気の毒に」


「珍妙って言うな! 誰でもちゃんと魔法が使えるようになる素晴らしい道具よ!」


「はいはい、分かった、分かった」


 アーノルドはミレアの憤慨を軽くスルーする。


「初めまして、シャーロットと言います。よろしくお願いします」


「初めまして、シャーロット。俺はアーノルド、ギルドのとりまとめ役をやってる。ミレアのやつについていくのはまあ大変だろうがうまく付き合ってやってくれ」


「なんで保護者みたいなこと言ってんの! 恥ずかしいからやめて!」


 ミレアが顔を真っ赤にして叫ぶ。


「はいはい、それで今日はどんな用事なんだ?」


「今魔物討伐系のクエストって来てない? この子の戦闘訓練にちょうどいいくらいの」


「その子は戦闘の経験はあるのかい?」


「剣の扱いは少々心得がありますけど…実戦の経験はないです…」


「こんな感じだから魔物の討伐を通して経験を積ませたいのよ」


「なるほどね、事情は理解した。お前がついて行くならとりあえずは安心か。ちょうどいいクエストが一応あるにはある」


「本当? 運が良かったわ、でどんな案件なの?」


「この街の街道に最近魔物がよく出没するようになってな。この街に運ばれてくる品物も襲撃で駄目になったりして物資の流通にも影響が出てる。ただ……これの討伐を率いることになっているのがエルギスなんだよ」


その答えを聞いた途端、ミレアの表情が一気に曇った。


「な、なんであいつなの!」


「仕方ないだろう。こういう大規模討伐クエストはAランク以上のものが率いることになってて、都合つく人間があいつしかいなかったんだから」


「私に言えばよかったじゃないの、Aランクの人間なんだし」


 納得がいかないという声を上げてミレアは不満を訴える。


 どうやらエルギスという人物はミレアにとってあまりいい感情を持っている人物ではないらしい。


「お前はいつもあの森の工房で魔道具とやらの開発をしているだろうが、それでどうやって連絡をとれってんだ」


「う……それはそうだけど……今ってそんなに人手不足なの?」


「ああ、この手の大規模な依頼を指揮できるAランクの人間はまだまだ少ない。結果としてどんな人間の手でも借りないといけない状況だ」


「はあ……まあ、仕方ないか。そんな状況なら指揮を採るのがあいつでも文句言えない訳ね。わかったわ、この依頼受けることにする」


「それなら受付で依頼を受ける手続をしてくれ、ああ後、そっちの嬢ちゃんは冒険者としての登録も一緒にやってくれよ」


「分かった、それじゃシャーロット行きましょう、アーノルドありがとうね」


 ミレアはアーノルドにお礼を言って受付に向かい、シャーロットもその後についていこうとする。


「おい、嬢ちゃん」


 ミレアについていこうとしていたシャーロットを飛び止めたのはアーノルドだ。


「はい、なんでしょう?」


「あいつのことをどんな奴と思っている?」


「そうですね、かなり破天荒でむちゃくちゃな人だなと。魔道具なんて初めて聞いた時はびっくりしましたし」


「はは! 可愛い顔して結構言うねえ」


「でも悪い人ではないと思っています。私もミレアさんといて楽しいですよ」


「そいつはよかった。あいつには同じ年ぐらいの友人みたいなのが必要だと思ってたところだったしな」


「ミレアさん、同い年の友人っていないんですか?」


「ここはあいつより年上の奴ばかりだよ。あいつはあまり気にしていないかもしれないが同年代の友人は大事なもんだ。だからあいつが嬢ちゃんを連れてきたとき少しほっとしたのもある、ああやっとこいつにもちゃんとした友人ができたんだなって。嬢ちゃんにとっては迷惑かもしれんがね」


「あはは……そんな大げさな。私なんて今のままじゃミレアさんの足手まといでしかないですよ、実際私がモンスターに襲われてるのを助けられたのが出会ったきっかけですし」


「そうなのか? あいつもなんだかんだうまくやってるみたいだな。よろしく頼むぜ、あの破天荒娘を。大変だろうがな」


「はい」


「ちょっと、シャーロットなにしてるの! あんまりだらだら喋っていると置いていくわよ」


 どうやらあまりについてこないシャーロットにミレアは痺れを切らしたらしい。シャーロットはアーノルドに軽く頭を下げて今、行きますと返事をしながらギルドの受付に向かった。


 ここまで読んで頂きありがとうございます。もし面白い、続きが読みたいと思って頂けたのならモチベーションの維持にも繋がりますので、下の欄の☆☆☆☆☆を★★★★★にしたり、ブックマークして頂けると嬉しいです。

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