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憂き人  作者: えにあおじ
5/12

2章ー1

平積みにされている2冊の本を睨みつけていた

贔屓にしている作家さんの新作と

その隣に惹かれるタイトルの見知らぬ本

これはどちらも読もう

決まりだ

だが困ったことに2冊同時に買うことはできない

そうすると1冊読んでいる間にもう1冊が気になってしまって集中できない

これは困った、、、

どちらから読むべきか、、、

かれこれもう1時間はこうしている


「なんとなく心中お察しします」


クスクスと控えめに笑いながら

後ろから声をかけられた

驚いてその場を避ける

ずっとここにいて邪魔だったかもしれない


「あ、ごめんなさい突然、、、

あの、もしかしたらこの2冊で悩んでます?」


「え、えぇ、ごめんなさい邪魔でしたよね」


「いえいえ!そんな事ないですよ」


ブンブンと首を振り真剣な表情の彼女

一瞬の思案顔の後


「じゃあ、、、こうしませんか?

私がこっちを買って読みます

あなたはこっち

それを1週間後に交換する」


にっこりと笑って悩んでいた片方の本を手に取った

その笑顔はとても素敵であの時一瞬で心を奪われた

と、後になって気づく


「えっと、、あの、、」


返答にあぐねていると彼女は

決まり!っともう1冊の本を俺に手渡してさっさとレジへ向かってしまった

彼女に続いて会計を済ませ、外に出る


「じゃあ、1週間後に」


そう言ってまた素敵な笑顔で彼女はさっていったあ

頭はぼーっとしていてふわふわとした妙な感覚に包まれていた事をよく覚えている


「あ、連絡先聞いてない、、、」


でも、そんな事は些細な事でしかなった

その週末

大型チェーン店のコーヒースタンドでいつものように1番大きいサイズのコーヒーをお供に本を読んでいた

天気のいい休日はそうするのが日課になっていた

章が変わり一段落ついたとき

ふと顔を上げると


「全然気づかないんですね!」


目の前にこの間の彼女が座っていた

クスクスと楽しそうに笑いながら

心底驚いて椅子から転げ落ちそうになったのを覚えている


「あ!そうそう、連絡先交換してませんでしたよね?」


そうして俺と愛子さんは出会った

今思い返すと終始愛子さんのペースで物事は進んでいた

出会いから別れまで、、、、





突然現れた元恋人になにも言葉を返せないでいた


「、、、、私、そろそろ行くね」


踵を返し愛子さんは行ってしまった

何も言えなかった

別れを告げられた時と同じく

ただただその場に突っ立っていただけだった


「悠二?」


いつの間にか隣にいたゆめが服の裾を引っ張って心配そうに俺の顔を見上げる


「あ、、ゆめ

さっき愛子さんがいたよ」


「そう、、、」


なぜか伏し目がちに曇った表情でそう応えた

その時の俺には

それを不思議に思う余裕はなかった


自分が被害者だと言わんばかりに落ち込んだ顔をし

人の気持ちなんて考えず、周りからの憐れみを喜んで頂戴する

そう、悲劇のヒーローを気取っていたのかもしれない

外を見ると再び雨が降っていた


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