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67. 11年と8ヶ月目 出歯亀ミノリさん。

「おかあさん、ちょっと出かけてくる」

「え? うん、いってらっしゃい」


 ミノリの声を聞いてからネメは外に出て行ったようだ。ここ最近、ネメは狩りや家事での用事以外に1人で出かけることが多くなっている。


 間もなく18歳になろうとしているし、何より強さならこの一帯ではトーイラと共に双璧をなしているような存在なので、特段心配しているわけではないのだが、どういう理由で出かけているのかミノリもつい気になってしまっている。


「んー、最近ネメは何しに行ってるんだろう?」


 ミノリの疑問を横で聞いていたトーイラは、なんとその答えを知っていた。


「あれ、ママ知らなかったの? ネメはシャルさんに会いに行ってるんだよ」

「え、そうなの?」


 初耳だった。確かにシャルの告白以後2人の仲が少しずつ進展しているような雰囲気はあったが、ネメの方から会いに行く関係にまでなっていたとは気づかなかった。


(どうしよう、出歯亀みたいになりそうだけど、ものすごい気になる……)


 そんなミノリの心境を読み取ったのか、トーイラは何か企んだ顔をしている。


「一緒に見に行こうよ、ママ」

「うーん……、それはちょっとネメに悪いような……」



*****



「はい、意志の弱い母親でごめんねネメ……。でも気になるんだもの……」


 場面転換即堕ち女こと、ミノリ。トーイラの悪い口車にまんまと乗せられて、ただいまトーイラと共にネメを尾行中。


 ちなみに、シャルの居場所を確認するために索敵魔法を使用済みだったりするネメには、ミノリとトーイラが尾行している事はとっくにばれていたりする。しかし、2人になら別に見せてもいいと思っているので、特に困るようなことではないらしい。



 その後、森の出口付近まで来ると、シャルが先に待っているのがミノリたちにも見えた。シャルはネメに気がつくと、微笑みながら小さく手を振っている。


 普段、ミノリと会う時の暴走寸前に近い状態とは大きく異なり、おしとやかそうな雰囲気を醸し出すシャルの完全なる美少女具合に、思わずミノリは 『誰あれ!?』 と叫びたくなってしまったが、何とか抑えて、2人の動向を注視した。


 暫く立ったまま談笑するネメとシャルだったが、ネメが近くの木に寄りかかるように座ると、シャルは迷うことなくネメの隣に座り、そしてネメの体にもたれかかった。

そしてそんなシャルを抱き寄せるネメ。その動作をあまりにも自然に行っていて、びっくりするほどのイケメンっぷりを発揮している。


 シャルに初めて会ったときのネメはまだ6歳で、当時のネメはシャルよりも遥かに小さかったがそれから既に12年が経過。モンスターである故か成長する兆しのないシャルの背を、ネメはとっくに追い抜いている為に年上に見えるのもあって、余計にそう感じられる。


「すごい……、あんなに乙女の顔したシャル初めて見た……」


 ネメとシャルはその後も暫しの間仲良くおしゃべりをしていたが、シャルが立ち上がり、ネメの頬にキスをしたかと思うと、そのまま上空へと飛び去り、姿が見えなくなった。

 そして、ネメはとっくに気づいているとでも言わんとした顔で、一直線にミノリとトーイラの下へとやってくると、


「というわけで、私とシャルはあんな感じにつきあってる」


 出歯亀をしていたミノリたちを咎めることはなく、ネメは淡々と2人に答えた。


「そうだったんだ。……ごめんね、つい気になっちゃって」

「いいよ。おかあさんには知ってもらいたかったから。ちなみにトーイラはとっくに知ってるし、さらに言えば今日のことは全てトーイラの計画」

「えっ!? そうなの!?」


 とっくにばれていたとは思いもしていなかったミノリがネメに謝ると、実はトーイラにもはめられていた事実に驚かされてしまった。


「えへへー、ごめんねママ、だますみたいになっちゃって。でもネメとシャルさんがつきあうようになった事は知っておいてもらった方がいいと思ったの」

「う、うん……。知れて良かったかも。ちなみに、ネメはいつからシャルとつきあうようになっていたの?」


 ミノリは何気なくネメに尋ねたが、ネメは腕を組んで悩みだしてしまった。


「んー、まあ()()()()()つきあうようになってた。もうそういう関係でいいかなって」


 何か言葉を濁した箇所はあったが、どうやら友達……いや、ペットからのつきあいから情が少しずつ湧き出し、自然とそういう関係になっていたようだ。それにしても最初は敵対していた関係から友情・恋愛関係、果ては恋人関係にまで発展するという展開は、いかにも王道な感じがして、思わずミノリも心の中で 『いいなぁ』 と思ってしまうのであったが……。


「ちなみにおかあさんは好きという次元を通り越して神なので、私にとっては何事もおかあさん優先。シャルと別れろって言われたら別れるし、シャルを殺せって言われたら喜んで殺す。そしてこれはシャルも同意見」

「そんな事言わないからいきなり私の心へ重力攻撃しないでネメ!?」


 シャルに影響されたのか、ネメも別の意味で重く……いや以前ヤンデレ化した時に監禁したい発言をしたネメは、とっくに重かった。

 そしてミノリの横にはもう1人、重い存在がいた……。


「ちなみに、私は前言ったように以前からママ一筋だよ。こころも、からだも、たいせつなもの、ぜーんぶ、ママに、あげちゃっても、いいんだよ? う ふ ふ ふ」


 ヤンデレ具合ではトーイラが断トツだ。我が娘ながら、思わず 『ひぃっ!?』 と叫びたくなる衝動を抑えるのに必死になったミノリなのだった。

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