63. 10年と3ヶ月目 そういえばのお話。
おまけパートのため少しだけ時が巻き戻ります。
「そういえば、ゲームだとラスボスがいてそれを倒すのが目的だけど、ラスボスが倒されちゃったら私って一体どうなるんだろう」
突然、ミノリの脳裏にその事が浮かんだ。
「ゲームでは、ラスボスが倒された後のザコモンスターについては全く語られてないんだけど、あれ、もしかして私消えちゃう可能性あるのかな……? でも仲間フラグが立った時点で私は多分もうモンスターじゃ無くなっているはずだし……いや、それでも……」
そう思うと突然恐怖心が芽生えてきたミノリだった。
その言葉を耳にしたネメとトーイラが慌てた様子でミノリに駆け寄った。
「おかあさん消えちゃうってどういうこと!?」
「ママ消えないで!!」
2人の動揺っぷりに、しまった聞こえていたか……、という顔をしたミノリ。2人の様子から、これは誤魔化し効かないよね、とゲーム的な部分は触れないようにしながら、ラスボスのモンスターについて2人に話した。
「……だから、もしかしたら私まで消えちゃうのかなーって」
それを聞いたネメとトーイラ、少し黙ったかと思うと、突然立ち上がり……。
「なるほどわかった。つまりそのモンスターを倒そうとする主人公ってのを始末すればいい」
「いいねネメ。一緒に行くよ」
「どうしてそう2人とも極端なのかなー!?」
2人の極論に大慌てになり、必死に止めようとするミノリ。
その後、私は消えたりしないはずだからと焦りながら説明するミノリだが、それを聞いたトーイラはというと……。
「んー、ママが大丈夫なのはわかったけど、……シャルさんはどうなるの?」
「あ」
すっかり失念していたが、ミノリと違ってシャルはれっきとしたモンスターだ。つまり影響を受ける可能性は誰よりも高いわけで……。
「あー……、うん……消える可能性が……無いとは言えない」
ミノリが言葉を詰まらせながら答えると、それを傍らで聞いていたネメは目を据わらせながらくるりと玄関の方へと再び体を向けた。
「わかった。やっぱりその主人公ってのは始末するべき存在」
シャルから想いを伝えられて以来、シャルに対しての心情が徐々に変化しているらしいネメは、外に足を運ぼうとする。
傍から見れば好意を持っている娘を守るために戦地に赴く騎士なのだが、今のネメは正直に言ってゲームで敵として登場したときよりも遥かに強く、下手したらラスボスすらも単独で倒せるような存在にまで登りつめている。それも魔法に頼らず暴力だけで。
そんなネメが主人公と敵対した場合どうなるか。そう、一方的虐殺である。
「ダメー! 人殺しはダメだってばネメー!!」
大慌てでミノリはネメを追いかけ、トーイラと2人がかりでネメが落ち着くまで押さえ込むのであった。
ちなみにその一方でシャルはというと……、どこかの町で買い物をしていた。
「あ、これはお姉様にお似合いなネックレス! そしてこっちは……ネメお嬢様に……」
……ミノリが慌てている事など当然ながら全く知らず、一人『恋する乙女』になっていたのであった。




