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47. 7年目 叶わない『いつか』。

 朝の家事が一通り終わり、休憩がてらミノリたちは本を読んでいた。実はシャルの宅配の際には毎回何かしらの本をお願いしており、そのためこの家では読む本については事欠かないのだ。


 ミノリが丁度本を読み終えると、ネメとトーイラの楽しそうに一緒に本を読んでいる声に気がついた。


 2人が読んでいるのはどこかの町の観光本であろうか、これ面白そう、おいしそうという楽しそうな声が聞こえる。


「2人とも、観光本を読んでいるみたいだけど、どこのを読んでいるの?」

「カツマリカウモの村とワンヘマキアの村だよー」

「前者の栄え具合と後者の寂れ具合の対比が面白い」


 ネメの穿うがった楽しみ方は兎も角、名前の挙がった2つの村は今ミノリたちがいる大陸の南端に位置し、ここからだと洞窟と山を1つずつ超えた先にある。


(んー……、もしかして2人とも、何処かにお出かけしてみたいのかな……?)


 双子に対しての偏見が強いのはキテタイハの町だけである為、その2つの村ならネメもトーイラも行くことなら問題は無いだろう。


「二人はどこか観光に行ってみたいの?」


 2人を娘にしてから早7年。その7年のほぼ全てをこの森と周辺でしか過ごしておらず、この周辺以外の事をよく知らないネメとトーイラ。その為、2人とも別の場所に出かけてみたりしたいのかなとミノリは考えたのだが……。


「うーん……、ママと一緒じゃないならいいかな」

「3人じゃなきゃのーせんきゅ」


 たとえ、2人は行けたとしても、ミノリはモンスターだから同伴するのは難しい。その事を理解している2人は当然のようにそれを否定した。

 ミノリも変装をして誤魔化すようにすれば一応行けない事はないのだが、長期の移動や宿に泊まる中でもひたすら他人の目を変装で誤魔化し続けるのは流石に難しいだろう。


 そして何よりミノリ自身も、万が一自分がモンスターだと、特に街中で他人にばれてしまった際、ミノリだけでなく同行するネメとトーイラにまで危険が及んでしまう可能性が高いと考えてしまい、3人で行くことに対してはどうしても難色を示してしまうのだ。


「うーん……、私も一緒だとちょっと厳しいね……。ごめんね」


 ミノリはやはり自分が同行する事は出来ないと申し訳なさそうに伝えると、ネメとトーイラまで申し訳なさそうな顔をしている。


「謝らないでママ……」

「おかあさんは何も悪くない」


 ミノリがモンスターである事は事実だが、それはミノリにはどうする事も出来ない。なのでその事を申し訳なさそうに謝られてしまうと2人も悲しくなってしまうようだ。


「……だけど、いつかきっと3人でどこかへ一緒に行けたらいいね」

「いつか素敵な3人旅を」


「うん……、そうだね」


 2人が返してくれた笑顔を見ながら、ミノリは、おそらく叶わないだろう『いつか』に返事した。


 自分が2人の足枷あしかせとなってしまっている現状と、それを理解していながらも、こうして笑顔を見せてくれる2人に対して少しばかり心が痛むミノリ。



(それを叶えるのは私には……難しいなぁ……。ごめんね、私がモンスターで……)

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