33. 2年と5ヶ月目 姉妹。
「そういえば、今更聞くんだけど……」
ミノリは、ネメとトーイラに今更な質問をした。
「2人って、どっちがお姉さんでどっちが妹なの?」
「「……」」
口をあんぐりさせて2人がミノリを見ている。
しまった。あまりにも今更過ぎて2人が呆れてるのかなぁ……とミノリが不安になっていると……。
「考えたことなかった」
「わかんないよーママ。物心ついた時から既に、奴隷みたいな扱いでどっちが姉か妹かも聞かされていなかったから」
「あ、そっか……。ごめんね、悪い事聞いちゃったかも」
その言葉でミノリは気づかされた。2人とも生きるのに必死だったからそんな事を考えている余裕はなかったのだ、と。
「ん、おね……おかあさんそれもう大丈夫なの」
「もう過去の事だから、私たちは気にしてないよー。あの町が嫌いなのは変わらないけどね」
暗い過去は2人の中でも漸く精算されたらしく、特に気にしていない様子でミノリをフォローした。
「だけど、今ここで決めちゃうのもいいかもしれないねー」
「どっちが先に生まれたかはわかんないけど。ポジションは決まってるもの」
「「ねー」」
2人が姉妹関係について、ここで決めることにしたようだ。折角だからとミノリは2人に尋ねた。
……しかしミノリは後に後悔する。この質問がきっかけで大変な事になるなんて……。
「それじゃ、2人はどっちがお姉さんでどっちが妹だと思う?」
「「わたしがおねえちゃん」」
「「……あ゛?」」
どうやら、ネメもトーイラもどちらも自分が姉だと思っていたようで、そこへミノリの質問でどちらからも自分が姉だという答えが出てきたことで場が急に冷え込んでしまった。
「待ってネメ。どう考えても私の方がおねえちゃんだよね?」
「何をおっしゃるトーイラ。いくら贔屓目に見ても揺るがない私の姉の地位」
「「……」」
完全に平行線だ。
「あ、あのー……。トーイラさん、ネメさん? ちょっと落ち着いて……」
2人によって作られたこのピリピリとした空間に圧迫感を感じたミノリはすっかり動揺してしまった。それでも母親らしくなんとか2人を宥めようとするのだが、それも今の2人の前には無力のようで全く通じない。
ただただミノリがあわあわとしているとおもむろに2人が立ち上がった。そして……。
「うふふふ。さあてネメ」
「そだねトーイラ」
「「表出ようか」」
……その日、ネメとトーイラは、どちらが姉でどちらが妹かで、ミノリの娘になってから初めて姉妹喧嘩をしたそうな。
後にミノリは語る。
「迂闊だったなぁ……。あそこまで大喧嘩になるとは……。家が壊れるかと思った……」
……その後、すぐに2人は仲直りをしたのだが、結局結論は出ないままだったようで、お互いにその事については触れないようになってしまったのは別のお話。




