27. 312日目 かくれんぼ。
「うーん……どこだ二人とも……」
今日も外は吹雪で大荒れ。家から出ることのできない日々が1週間になり、家の中にいる事にすっかり飽きてしまったネメとトーイラは、家の中でかくれんぼをしたいとミノリに提案した。
「それじゃ私も混ぜてもらってもいい? 私が最初に探す人になるから」
折角だからとかくれんぼに混ぜてもらったミノリは二人を探しているのだが……今のところ2人を見つけられていない。
「家の中で、って事にしたから外に出ていないはずなんだけど……」
全ての部屋を軽く一巡したミノリは、これはどうやら真剣にくまなく探す必要がありそうだと、改めてもう一度全ての部屋を調べることに。
「えっと、ベッドの下……うん、いない。カーテンの裏……にもいない。うーん……次はクローゼット……」
そう言いながらクローゼットを開いたミノリ。しかしそこにもいない……が、ここでミノリは不自然な箇所に気づいた。
それは、着る事が出来ないと判断して、放置した衣類の山。その山がいつも以上に不自然な盛り上がり方をしている。
「もしかして……」
そうミノリが言いながら衣類の山を掘り起こしてみると……トーイラが出てきた。
「トーイラ、見っけ」
「あー。見つかっちゃったー」
見つかったのに嬉しそうな顔をして衣類の山から出てくるトーイラ。
「さて、あとはネメ……」
謎の発言をする事の多いネメはきっと隠れる場所も予想外の所に違いない。
ミノリはそう考えて、さらに真剣に全ての部屋をくまなく探した……のだが、一向にネメは見つかる気配がない。
ミノリが降参しようか思い始めていると、トーイラが不思議そうな顔をしてミノリを……、いや、少し視線がミノリからずれた所を見ているのにミノリは気が付いた。
そして、そのトーイラの視線から読み取れるのは、『わざと気づいてないふりしてるんじゃないの?』とでも言いたげな……。
もしやと思ったミノリは、矢庭に振り返った。そして一瞬だが見えてしまった。振り向いたと同時にミノリの背後へと音もなく回り込む何者かの姿を……。そしてその姿の正体は勿論……。
「……今、私が振り向いたとき何か見えたけどネメだよね。そして今も私の真後ろにいるよね」
「むぅー、当たり」
その声が聞こえたかと思うと、背後からミノリに抱きつくネメ。どうやら、一番最初からミノリの後ろに足音や気配を出すことなく張り付き、ミノリの視線を予測して常に死角に入るように立ち回っていたらしい。
そんな、あたかも忍者にでもなったかのような動作をしながら隠れていたネメを見たミノリはというと……。
(なんだろう、ネメは魔法を使える忍者にでもなりたいのかな……いやそもそもこの世界に忍者はいないよなぁ……。うーん……)
かなりどうでもいい事で、思い悩むのであった。
その後、数回かくれんぼをした2人は十分満足したようだ。
ミノリも久しぶりに遊んだかくれんぼに、自分もすっかり童心になってのめりこんじゃったなぁなどと思っていると、トーイラがミノリの元へと駆け寄り、あるものをミノリに見せた。
「所でクローゼットに水着っぽいのがあったけど、これママの?」
そう言ってトーイラが取り出したのは……、スク水である。
「ひぃぃいいい!!!!」
記憶の彼方へと追いやったものが突如目の前に現れ、思わず叫ぶミノリなのだった。




