23. 215日目① 冬の気配。
森の中にある家で3人が暮らし始めてから6ヶ月の月日が流れていた。季節も移ろい、赤や黄色に色づいていた木々も段々と葉が落ちるようになり、間もなく冬がやってきそうな気配だ。
「段々と肌寒くなってきたから、そろそろ冬も近いのかな?」
おそらく肌寒いのは肩やお腹が出っぱなしになっているミノリの衣装にも原因はあるのだが、色々試した結果、普通の服を着ることが出来ない事が判明しているため、ミノリは今ではその事については考えない事にしている。
ちなみ、一応今着ている衣装の上に、何かを羽織る等は出来るのだが、見た目があまりにアンバランスになってしまうので、ミノリは基本的にそれは避けている。
「そういえばこのあたりってどれぐらい雪が降り積もるんだろう」
転生してきてから初めての冬を体験するミノリ。当然ながらこのあたりではどれぐらいの積雪となるのか知る由もなかった。
「ねぇトーイラ、ネメ。このあたりっていつもどれぐらい雪が降るのか知ってる?」
ミノリは、近くのキテタイハの町出身である2人に尋ねた。
「んー……結構降るよね、ネメ」
「うん、余裕で雪だるま」
その答えから察するに豪雪という程ではないけど、雪が結構降る地域だとミノリは推測した。
「そうすると……、そろそろ冬支度を始めた方がいいのかな」
そうミノリがつぶやくと、
「ママ、冬支度って何するのー?」
「興味津々」
2人が興味深そうに問いかけてきた。
「んーとね、雪が降る前に薪を集めたり、保存用の干し肉を作ったり、冬を過ごせるように色々と準備するんだよ。吹雪になったら外に出られないし、それが何日も続いちゃうと飢え死にしたり、凍死したりする事もあるからそうならないように必要なの」
ミノリは2人にそう説明すると、
「それじゃ、私たちもママのお手伝いするー!」
「おね……おかあさんの為ならえんやこら」
2人ともミノリを手伝う気満々のようだ。本当にいい子たちだなぁ……。
「……あ、あと冬の間は宅配はしなくてもいいってシャルにも伝えなきゃ」
しかし、シャルの名がミノリの口から出ると、途端に2人の顔が不機嫌そうに。
「……ママに取り入ろうとして全く……」
「ピンクゆるすまじ……」
「あ、あのー……、トーイラさんとネメさん……、目が……据わっていますよ……?」
2人の突然の不機嫌っぷりに思わず動揺して敬語になったミノリだった。
暫くすると2人の機嫌が収まったようなので、分担して冬支度の準備をする事にした3人。
トーイラは落ちた枝を集めたり、倒れた木を風魔法で切り裂くなどして薪作りを、ネメとミノリは干し肉用にモンスターを狩りに。
モンスターを狩りに行くぐらいならミノリ一人でも大丈夫なのだが、今日はシャルが宅配に来る日なので冬の間は来なくてもいい事を併せて伝える旨をネメが耳にするなり、
「ダメ。おね……おかあさんはあのピンクと一人で会っちゃダメ。ピンク脳がよりピンクになる」
と、何故かNGを出したので、結局2人で狩りに行くことに。
一体どうしてそこまでシャルに対して敵愾心剥き出しなんだろうかと不思議がるミノリなのであった。




