2. 1日目② 荷物を物色。
森の中にある川縁まで戻ってきたミノリは、先ほど回収した行商人の荷物を下ろして早速中を確認することにした。
「えーと……薬草と毒消しと保存食と火熾しの道具とナイフと……、あ、調味料もある」
ひとまず今日はこの保存食を晩ご飯にする事にしたミノリはここを野営地と決めて火を熾し、早速保存食の調理を始めた。味付けは適当だったがまずまずの味だった。
「少し節約すればあと3日分は保存食あるけれど……自分でごはん用の食材を探したり、狩れるようにしたりしなくちゃだめ……だよね」
その通り。今回はたまたま行商人が置いていった荷物の中に保存食が入っていたから夕飯にありつけただけで、運が良かっただけである。
しかしこんな幸運はそう起こらないし、同じような手段を何度もすれば討伐隊を組まれる可能性がさらに高まり、結果として自分の命を縮めるだけだ。
「弓道部だったから一応弓は使い慣れているし、命をいただく事も……うん、大丈夫」
転生前のミノリの実家では家畜を飼っており、その肉を食卓に並べていた。小さい頃は飼っていた家畜を屠殺する事に抵抗があったが……。
「確かこのあたりに出現するモンスターは……あ、おいしそうなのいっぱいいるじゃん。ラッキー」
……今では頭の中で食べたいモンスターを頭の中に浮かべてはよだれを垂らしそうになる程に慣れっこになっていた。
「あと狩りをするには……あれ?そもそも矢って何本持ってるのかな?」
弓使いが狩りをするためには当然矢が必要であり、ゲームでもこのモンスターは弓矢を使って攻撃してくるのだから当然矢を所持しているはずである。ミノリは腰に身につけていた矢筒に目をやると……。
「……すくなっ!」
矢筒の中には矢が五本しかなかった。
「これ5回撃ったらおしまいじゃん……。ってことは一発勝負状態になることも沢山……うわぁ厳しい……。命中率を上げるために練習しよう……」
ミノリはひとまず弓の練習をする事にした。普段使っていた弓とは形状が異なっていたが、すんなりと手になじんだ。おそらくこのモンスターが元々持っている特性なのだろう。
そして近くの木の枝に的をしぼり……矢を放った。矢は一直線に飛び、狙っていた枝を吹き飛ばした。
「わぁ、この弓初めてなのに一発で当たっちゃった!よーしこの調子でもっと練習を……あれ?矢が減ってない?」
もう一回練習しようとしたミノリが矢筒を見ると矢は減っておらず先程と同じ5本のままでだった。
「あ、もしかして一発で当たったのも、矢が減らないのもこのモンスターの特性なのかな?それだと楽になるかも」
ゲームでのこのモンスターとの戦闘を思い出してみると、確かに矢がはずれる事は無く、ましてや矢が無くなっておろおろするような描写もない。あったらただのポンコツモンスターである。
ひとまず狩りに対する一番の不安点が解消されたミノリ。明日はどうするかを決めつつ今日は眠ることにしたのだった。