14. 14日目② 2人の狩り初挑戦。
狩りでモンスターを倒す描写がこの話は特に多い関係上、残酷な描写ありとなっています。
苦手な方はご注意ください。
3人は獲物の目と鼻の先まで近づいたが、いまだに獲物はこちらの気配に気づいていないようだった。ウマミニクジルボアに至っては眠りこけている。
「ネメとトーイラはあっちのムスヤクニルドリを狙ってちょうだい。私はウマミニクジルボアを狩ってくるから」
小声でミノリが指示を出すと、2人はコクリと頷いた。そして、これも練習の内だからと、ミノリはムスヤクニルドリの性質を教えるのみに留め、どうやって倒すのかに関しては2人にお任せした。
念のため回復薬と状態異常回復薬を2人に持たせると、ミノリは2人がいる所から離れ、まずはお手本とばかりに、先にウマミニクジルボアを倒す事に。
「2羽いるから先にネメの範囲攻撃魔法で……」
「範囲攻撃魔法はもう少し離れていないとダメ……だから最初は別の魔法で……」
2人の相談する小声が聞こえてくるのを耳にしながら、ミノリはウマミニクジルボアの方へと回り込み、早々にウマミニクジルボアの眉間へとめがけて矢を放った。矢はミノリの狙った場所に突き刺さり、無事ウマミニクジルボアを仕留める事に成功した。
一方のトーイラとネメもどうやってムスヤクニルドリを倒すか作戦が決まったようだ。
「それじゃ私が麻痺魔法であの2匹を動けなくするから、ネメはその後にあの2匹へ範囲攻撃魔法を使って」
「うん、わかった」
(2人の狩り初挑戦、無事成功するように……)
近くまで戻ってきたミノリは固唾を呑んでその様子を見守る。
おそらく詠唱だろうか、トーイラが指先をムスヤクニルドリに向けて、ぶつぶつと何かを唱えている。
その直後トーイラの指先が光ったかと思うと、ムスヤクニルドリは突然うめきながらその場でひっくり返り、一歩も動けなくなった。
無事に麻痺魔法は成功したようでムスヤクニルドリが動けなくなったようだが……何故かトーイラは驚いた顔をしてミノリの方を見ている。
「あ! ネメ作戦変更、右の鳥にだけ攻撃魔法使って! 私左の鳥狙う!」
「ほーい」
どうしたのだろう。ミノリは疑問に思ったがここは2人を見守ることを優先してそのまま動かないことにした。
「えーい。燃えろ」
ネメが火の魔法を唱えると右にいたムスヤクニルドリは瞬く間に炎に包まれ断末魔をあげながら動かなくなった。
「これでもくらっちゃえー!」
一方のトーイラが唱えた風魔法も、左にいたムスヤクニルドリを鎌で切りつけるかのようにずたずたにしたかと思うと一瞬でその首を刎ねていた。
ミノリは2人の放った魔法による、圧倒的で、かつ恐ろしくも美しい光景に身動きが取れなくなっていた。
(すごいなぁ2人の魔法……。うん、これなら2人に狩りを時々お願いしても大丈夫そう……。)
そんな事を考えていると、無事に狩りを成功させた2人がミノリの元へ駆け寄ってきた。
「ママー! どうだったー? ……あっ!」
「ひゃんっ! 冷たっ!」
ミノリの手前まで来たトーイラが何かに躓いたのか突然転んでしまうと、手に持っていた薬をどちらもミノリにぶちまけてしまい、ミノリの全身は薬でずぶぬれになってしまった。
「おね……おかあさんだいじょうぶ?」
「わぁー!!ママごめんなさーい!!」
心配する様子のネメと、ミノリに謝るトーイラ。
「あはは……うん、これぐらい大丈夫だよ。でもすごいねぇ二人とも。初めての狩りで成功するなんて。大変よくできました」
2人の狩りの成功に比べたら、自分が薬でずぶぬれになる程度のちょっとしたミスならなんとも無い、そんな気持ちでミノリは2人の頭をなでた。
2人ともミノリに褒められて、頭もなでてもらえてとても嬉しいのか、えへへぇ……と、すごくにこやかだ。
「さーて、それじゃ、狩った獲物を持っておうちに帰ろっか」
「「はーい」」
3人は、それぞれが狩った獲物を持って家に戻る事にしたのであった。
(そういえば2人の会話からして範囲攻撃魔法が使えるみたいで、最初それを使おうとしていたみたいだけど……どうしてさっきは使わなかったのかなぁ……まぁいいか。)
一瞬その事が脳裏を過ぎったが、特にそれ以上深く考えるような事はせず、ミノリはウマミニクジルボアを担ぐと、先に歩き始めていたネメとトーイラの後ろをついていくのであった。
……一方、ミノリの前を歩いていたネメとトーイラは、ミノリに聞こえないように小声でささやきあっていた。
「うぅー……。麻痺魔法の範囲が予想以上に広くてママまで麻痺させちゃったー……」
「でもおね……おかあさん麻痺したのに全然気づいてなかったし、トーイラがわざと転んでみせて薬をおね……おかあさんにぶちまけて麻痺回復させたので問題なし」
「うーん……、だけどこれからは範囲魔法、特に全体攻撃魔法は使わない方がよさそうだねー……。もしママまで攻撃対象の範囲に含まれちゃったら大変だもの」
「そだね。おね……おかあさんの生命力低いから万が一くらっちゃったら多分一発で死んじゃうかも」
「本当にねー……。気をつけなくちゃ……」
「うん、私も気をつける」




