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☆迷い込む哲平☆

 先程までのが嘘だったとでも言うように、風が少女の髪を揺らし、行き交うヘッドライトがこちらを照らした。


「君、一体何者なの? 君が時間を止めて、僕を助けようとしたんじゃあ……」

 

「私? 違う違う。ただの通りすがりの変人だよ」


 少女は美しい銀髪を手櫛で整えながら言う。それから腰を落として、へたり込んだように座っている哲平に目線を合わせた。


「君こそどうしたの? 何か嫌なことでもあった?」

 

「……別に、聞かれるほどの事じゃないよ。それより、君は何者なの?」

 

 外国人の様な見た目だと思った。ロイヤルブルーの袖なしパーカーに、ダークオレンジのミニスカート。ツインテールが風に踊る。

 

「さてね……名乗るほどの名は無いさ。まあ、近々また会うことになるだろうけどね」


 少女はそう言い残すと、猫のような身のこなしで塀に飛び乗り、次の瞬間には夜闇の果てに消えていた。哲平はようやく立ち上がり、ズボンに付いた砂を払う。また彼女に会うまでは、確かに生きようと思った。

 

 #

 

 ピピピピと、聞き慣れた目覚ましの音で起きる。日曜日のドラマを見ているような、そんな感覚に陥った。学校に行き、帰るだけの、二ヶ月で十分に慣れてしまった日々が少し気鬱だった。

 

 昨日のあれは何だったのか。

 

 行き先は友達の家と伝えていたので、親からのお咎めは無かった。布団に入ってからもそればかり考え、気づけば朝。どれくらい眠ったのか、よく覚えていない。眠ったのかどうかすら、分からない。

 

「行ってきます……」


 家を出て駅までの道を間違わずに進む、何回目かの信号待ち。暖かい風が吹き、自転車ごとふわっと浮いてしまうんじゃないかなんて思う。しかし、風と共に訪れたその光景に、まだここは夢の中なのではないかと凍りついた。

 

 何気なく目を瞑った瞬間、世界を構成するナニかが変化した。

 周りの全てが光を透過し、街の光量が跳ね上がる。

 

 目を開けたとき、哲平は自分が氷細工の中に迷い込んだのかと思った。見渡せど見渡せど、透き通ったの水晶のようになってしまった街からは音一つしない。

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