表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

☆飛び降り☆

前ほど悪ノリは酷くないです。

 落ちていく。

 

 

 遥か上空にはさそり座が瞬いている。このビルは30階建てだから、そろそろ後頭部の砕ける音が耳に届いてもいい頃だ。

 六月の中頃。今年は、連日ニュースで騒がれる程に遅い夏だと言う。

 

 

 しかし、時が凍ってしまう程にとは、誰が予想したものか。

 

 気づけばさそり座は、瞬きを止めていた。

 先ほどまで耳元で唸っていた風も、やかましいくらいに輝くヘッドライトで埋まった大通りも、示し合わせたかのようにぴたりと動きを止める。街は、静寂の箱となった。

 

「え……はぁ!? 何が……どう……」

 

 鳥谷哲平(とりたにてっぺい)が、高校生になったのはつい二ヶ月前のこと。入学後すぐに不良に目をつけられ、早々に孤立したとは言っても、不登校になったのは二週間前のことだ。

 思い詰めたわけじゃない。「遠くに行きたい」ただそれだけの理由で、街一番の高いビルから飛び降りてみた。飛び降りたはいいものの、哲平は今、地面すれすれで手足を天に向け、空中で静止しているのだ。

 

「う、動かない……なんで……」


 哲平の腕を伝う汗はもちろん、目の前に映るさそり座の瞬きでさえもがピクリとも動かない。しかしこの静寂の中に、足音を鳴らすものがあった。


「なにやってんの( ^ω^)」

 

 哲平がどうにか顔を動かせるようになった頃、足音が真横で止まった。無理やり首を捻り、声の主を見上げる。2つのくりくりした目と、視線がぶつかった。

 

「ね、それなんて能力? 腹筋すごいね、辛くないの?」


 目の前にいたのは、無邪気に笑う、一人の少女だった。


「君が……時間を止めたの?」


「何が? 私そんなこと出来ないよ?」


 珍しい格好をした少女は、分からないという風に両腕を広げてみせた。

 不意に、さそり座がちらりと瞬く。瞬間、世界は音と動きを取り戻し、哲平は背中に痛みとアスファルトを感じた。なんだかんだで生きている。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ