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依頼

「…先に言っておくが争い事はごめんだぜ?」


相手を牽制するように鋭い視線をなげる。無論、まだ客人は一言も発していない。

ただ客人の様相がリックを警戒させた。


年齢的には齢五十ぐらいといったところだが、屈強な体格に鎖帷子を巻き付けた者が普通の客人なわけがないだろう。また腰には短剣を身に着けている。


リックが警戒するのも無理ない話だった。


「争い事か…確かにそういった事もあるかもしれんがちょっと違うな」


「争い事に違うもクソもあるのか? 俺は平和主義者なんだよ」


「ハッハッハッ…だったら話しが早い。俺も平和主義者なんだ。こんな格好してるから疑われるがね」


客人は豪快に笑う。

その姿にリックは余計に訝しむ。兵士以外に何があるんだ?―――と。


「…冒険者かしら?」


大人しく聴いていたルナが呟いた。興味なさげにしていたのに話しはちゃんと聞いていたらしい。


客人が嬉しそうに頷いた。


「おっ! 正解だよ姉ちゃん。俺の名はクライブ・クェンティン。冒険者だ。クラブと呼んでくれ」


自信満々に自分の名を名乗るクラブ。


ただ反転してルナは呆れて興味を無くしていた。


この世界において冒険者とはつまるところ放浪者だった。


まっとうな職を持たず、この世界を練り歩く。


実際この世界には謎も多く存在する。


リックが元居た世界においても深海の調査が全体の五%も進んでいないよう、それらを自身の好奇心によって解明、発見していくのが冒険者だった。


「冒険者ねえ…まあ争いごとに巻き込まれなきゃなんでもいい。だが、報酬は払ってもらわなきゃ困るぜ?」


「リック、悪い事は言わないから辞めときなさい。冒険者が満足いく報酬を払ってくれるわけないでしょ? 彼らは放浪者。その日暮らしが常の人種なのよ」


トゲのある言い方だがルナにはルナの考えがあった。


もちろん放浪者と一括りにするのは失礼に値する。世界を散策し全く新しい鉱物を発見して巨万の富を築いたものも確かに実在する。


だが、それはフリーターが夢を追ってるが如く現実は中々厳しい。


若くして店を営み魔術師として給料を貰うルナは『お金を稼ぐ』という行為がどんなに難しいかをよく理解している。


だからこそルナは冒険者に偏見を持ち過度な期待をしていなかった。


「三十万でどうだ?」


「リック! この仕事すぐ受けなさいッ!」


「お前なあ……」


ドンッ! と、報酬を机の上に乗せたと同時にルナが立ち上がる。

キラキラと輝く目はもはや放浪者以下の薄汚いハイエナであった。


「つーかお前関係ねえんだから黙ってろ。―――じゃあクラブ。報酬が払えるのは分かったから話しを聞くよ。依頼はなんだ?」


「……それなんだが」


さっきまでの態度は何処に、急に言いよどむクラブにリックは一抹の不安を覚える。どんな無理難題を言ってくるのだろうか…と。


クラブがようやく重い口を開いた。


「東の呪詛山。―――ラングル鉱山の謎を解きたいんだ。協力してくれ」


読んで下さりありがとうございます。


ブクマと評価嬉しかったです

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