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夜の街  作者: 未山
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出会い

この学校は結構大きくて県外から進学してくる人も多い。裕樹も優衣もそうで、それぞれ一人暮らしをしている。


俺はと言えば、実家から原付で通っている。15分で着くので朝も結構ギリギリまで寝ていられる。高校も自転車で10分の所だったため、我ながら狭い世界に生きていると思う。


ただこれは遺伝のせいなのかもしれない。父さんも地元の大学を出て、そのまま地元で公務員になっている。ただ、結構出世しているようで、俺は見ないが新聞に名前が載ることもあるらしい。


母さんも同じ県内の専門学校を出て、同じ職場で父さんと出会ったらしい。そのまま結婚して専業主婦を25年以上やっている。


料理は美味しいけど、さすがに20年間食べているからか、最近はアイツらと食べることが多くなっている。お酒を飲み始めたのも大きいかもしれない。


母さんも父さんも飲みに出ても特にうるさく言うこともないし、実家の居心地が良すぎて、逆に出て行くイメージが思いつかない。きっと家事に追われて3日で根を上げてしまうだろう。


家の駐車場に原付を停めると、玄関を開け母親に声を掛けた。


「ただいま。今日友達と飲みに行くから、夕飯いらない。」


「おかえり。今日昌志の大好きな肉巻きなんだけどな。」奥の方から声が聞こえる。


「取っといて。明日絶対食べるから。なんなら父さんの分少なめでいいし。」廊下を進みながら答える。


「お父さんも好きだから、みんなでキッチリ分けようね。そう言えばお姉ちゃん来月の土日どこかで帰ろうかなって。」


「お盆は帰れなかったもんな。日にち決まったら教えてよ。」


姉ちゃんは大学から県外に出てそのまま就職した。今は新人銀行員として働いている。


新人だけど、資格を取ったりで結構忙しいらしい。実家までは新幹線で1時間ぐらいなのだが、なかなか帰っては来られない。


自分で言うのもなんだが、我が家は家族仲が良い。両親の性格もあるのだろう。柔らかくて笑いが絶えない。そんな両親にあたたかく育ててもらったからか、今でも人見知りが治らない。


そんな俺とは対照的に裕樹は人当たりが良く、確か入学時の説明会で最初に話しかけてくれたのも隣の席に座っていた裕樹だった。


「なんか説明聞いても良く分かんなくない?」


「確かに。でも授業の取り方ミスったら卒業出来ないとかは勘弁して欲しいな。」


「そうそう。せっかく受験勉強して大学入って、またすぐ勉強って。しばらく休ませて欲しいわ。あ、俺多田裕樹。よろしく。県外から来てるからまだ全然友達いないんだよ。」


「俺は高木昌志。ずっとこっちに住んでるけど、俺もこの学部にはあんまり知り合いいないかな。」


人見知りの俺でも裕樹の人懐っこさと嫌味のなさに惹かれてすぐに仲良くなった。


それに優衣と仲良くなれたのも裕樹の明るさからだった。


裕樹と話すようになり授業も一緒に受けるようになっていた。そこで貿易論の授業で一緒になった。


教室入ったら真ん中あたりの席に優衣な1人で座ってて、いつもは女子のグループ何人かでいたと思うけど、その日は1人なんだぐらいに思ってた。


そのまま空いてる席を探してる時に、裕樹がなぜか優衣の隣に座ったんだ。


「ここいいですか?」


「あ、はい。空いてますよ。」


「昌。ここ空いてるって。」そう言って俺も座るように促す。


「一年生ですか?他の授業とかでも見た気がして。気のせいだったらごめんなさい。」


「経済学部の一年です。私も見たことあるような。」


「本当?良かった。俺、多田裕樹。それでこっちが高木昌志。」


「よろしく。私は佐々木優衣。」


「よろしく。」俺も慌てて参加する。


「俺、結構田舎の方から出て来てるから、まだ昌志しか友達いないんだ。」


「私もすっごい田舎から。隣の家まで歩いて五分とか。」愛嬌のある笑顔で話す。


「俺のとこも負けてないよ。夜とか街灯なくて真っ暗だし。昌はずっとこっちだから結構都会だよな。」


「ずっと居るから逆に分かんないけど、街灯はあるし、隣の家もすぐだよ。5分も歩くと回覧板とか大変じゃん。」


「うわっ。昌君が田舎を馬鹿にしてくるよ裕樹君?」


「あ、昌ひどい。そんな奴だとは。優衣ちゃんこれからは昌をほっといて一緒に授業受けよう。」


「待ってー。置いてかないでー。俺とも貿易しようよ。」授業の貿易論と掛けて言った。


「うわっ。やばっ。こんな見事にツルんと言った人見たの初めて。」


「都会のセンスは分かんないね。」笑いながら裕樹が答える。


「我ながら思うけど、今のはどこでもスベるわ。」優衣と裕樹が同時に笑った。


そんな感じでいつの間にか一緒にいる時間が増えていった。

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