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第一章 再臨 †前篇†

どうも、作者のあたっちめんとです。

長い間、連載を停滞していたこちらの作品を再び書き始めました。

バイオリンのほうもよろしくお願いします^^

〜5年前〜


「天月の勇将」を名乗った、後の伝説の英雄たちはキャメル村をエリシュオン騎士団とバルウェスト騎士団の戦いから守ったのだが・・・。

その戦いで、圧倒的な力を見せ付けた十人の勇将達は姿を消したのであった。

その戦いの後、各国は同時にありとあらゆる手を使って勇将たちを探した。

各国は軍事増強の為に勇将達を仕官させ、世界に大戦を挑もうというのだろう。後の伝説によれば勇将たちは村のどこかに武器を封印し、姿を隠したのだというが、真相を知るものはいない。


φ


キャメル村で採掘される鉱物資源

「ブラックファントム」。

この鉱物は大陸一の強度と信じられないほどの軽さを持っていた。

その大陸一の鉱物である

「ブラックファントム」を加工する技術と唯一の採掘場であるキャメル山、それは、キャメル村をおいて他には無かった。5年間に一度、決まった量しか採掘できないというそのいわくつきの鉱物は、魔力の宿る石とも呼ばれ、各国の商人や貴族、また軍はその鉱石を求めていた。

このマジックメタルを巡っておこった争いは

「キャメル戦役」と呼ばれ、何度も繰り返されてきた。

「天月の勇将」が現れるまでは・・・。


「天月の勇将」が名乗りを上げてからこの5年間はキャメル周辺の争いが止んでいた。

そして、キャメル村では古来より伝わる「ブラックファントム」を加工する技術を使用した工芸品や武具が作られ、他の国に輸出されていった。

そうはいっても、相当な量が他国に出たわけではない。

40年に一度10本の剣が他国に売り出されることになっているが、このマジックメタルはごく少量しか取れないため、そのような武具に加工されることも稀な事なのである。


そして、キャメル戦役から5年後のキャメル村のとある鍛冶工房での事である。



「ふぅ〜、やっと薪割りが終わったー。」少年が、薪を割っていた。その16~17才くらいの身なりをしている少年は、「ブラックファントム」の加工方を学ぶためにその工房に住み込んでいる。

どうやら、工房の親方の言いつけどおり、工房の炉にくべる薪を割っていたようだ。

「ウィル。薪割りは終わったようだな。では、加工を始めよう。」と、若い男が現れた。

すると、ウィルと呼ばれた少年は元気に返事をし、その男のあとに続いて工房に入った。


ウィルが工房に入ると、その男は木製の籠に入れられた鉄鉱石を取り出した。

「まずは、これを加工できる状態にするんだ。」といって、小さな杖と籠の中から鉄鉱石を一個取り出した。

そして杖を石に向け、呪文を唱えた。

「"我 汝の力を借りて 鋼鉄の殻を 打ち破らん Blade of wind"」

すると男が取り出した鉄鉱石は、杖から生成された風の刃に包まれ、銀色に輝く鉄球に変わった。

「これが、鉄の原型だ。この鉄球の状態にすると加工がしやすくなる、その上どんな金属がを判別することもできる。ウィル、やってみなさい。」と男は、ウィルに杖と鉱石を渡した。

「おっと、忘れていた。」そういうと、男は机の引き出しからペンダントを取り出した。

「最初はコイツを着けていなければ、魔法を使うことが出来ないかもしれないからな。このペンダントが魔力を供給してくれる。これからの練習には、これを着けて行うんだぞ。」と男はウィルにペンダントを着けながら言った。

ウィルは返事をして、杖と石を持った。

そしてウィルは、杖を握りしめ、呪文を唱え始めた。

「よ〜し。ええと・・・。"我 汝の力を借りて 鋼鉄の殻を 打ち破らん Blade of wind"」

すると、杖から風の刃が生成され、鉱石を包み込んだ。

しかし、少し傷を入れた程度だった。

「やっぱりクロウさんみたいに上手くは出来ないね。」とウィルは言った。

すると、クロウと呼ばれた男はこう促した。

「ふむ、もう少しゆっくりと焦らずやってみなさい。」

ウィルは、再度挑戦した。

「"我 汝の力を借りて 鋼鉄の殻を 打ち破らん Blade of wind"」

再び風の刃が生成される。そして、鉱石を包み込んだ。

すると、今度はクロウのそれと同様の鉄球が出来上がった。

「出来た。僕も魔法を使えた・・・。」

ウィルは、喜び、クロウに出来上がった鉄球を見せた。

「クロウさん、出来ました。」ウィルはそれをクロウに手渡し、クロウはそれをよく見た。

「うむ、よく出来ている。では次の工程だ。」

クロウが次に取り出したのは、球3つ分に溝の開いた厚い鉄板だった。

さっきの鉄球とクロウが生成した銅球をその板に填めた。

「この器具は、金属を合成したり分離したりする器具だ。まぁ、さっきと同様に魔法を使わなければ出来ないんだがな。」クロウは呪文を唱え始めた。

「"我 汝の力を借りて 我が眼前の物質を 融合せり Material uniting"」

すると2つの球は光を帯び、2つの光は空中で舞った後、1つの光となって3つ目の溝に生成された。

鉄球と銅球とが組み合わさった金属。それは、金色に輝いていた。

「この金色の球は銅と鉄の融合物質だ。鉄より少し加工しやすくなっている。」

「このように物質を組み合わせなければ、ブラックファントムの加工は難しい。」

特殊な鉱物は単体で加工しようとすると抵抗が生まれるのだが、銅や鉄の混合物質は最も抵抗が少なくて加工しやすい。その代わりに金属としては少しやわらかくなってしまう。

ブラックファントムは、主に上質の鋼と7:3の比率で混合させて加工させるのが一般的で、単体を混合させられる鍛冶師は大きな街にも1〜2人と言われるほど困難である。

「よし、では混合の魔法を込めてみろ。さっき魔法を使ったときの集中力を忘れるな。」クロウがウィルに銅球を渡した。

ウィルはゆっくりと息を吐き出し、呪文を唱えた。

「"我 汝の力を借りて 我が眼前の物質を 融合せり Material uniting"」

今度は、上手く出来たようだ。クロウのときと同様、金色の球が出来上がった。

「出来たようだな。では、最終工程だ。」そういって、クロウは奥の部屋へと進んだ。



その頃、村の外れに在る洞窟では・・・


「間違いねぇ、ここだ!」と言って大きい体格の男たちと黒い装束を纏い、杖を持った集団が洞窟の中へと入って行った。

洞窟の奥は・・・・壁であった。

「本当にここか?行き止まりだぞ!」体格の大きな男が言った。

「ここで間違いない。皆の杖や魔法具は、この先にある凄まじい魔力に同調している。」黒い装束の男が言った。

「ということは・・・おい!この壁を崩すぞ!」

そういうと、男たちは斧を振り上げた。しかし、斧が壁に触れた瞬間、ガキンッという音がして斧を弾いた。

黒い装束の集団は魔法を一斉に放ち、壁を破ろうとするが、壁に当たる寸前で魔法がかき消されてしまった。

「何でこの壁は破れねぇんだ!」男たちがそう叫ぶと、集団の後ろから、白いマントを纏った金髪の男が前に出た。

「俺がやってやるよ。」男はそういうと、装飾のついた剣を取り出して構えた。

すると、剣の装飾が青い光りを放ち、男は残像も残さずに消えた。と思ったら、一秒もしないうちに元の場所にいた。

壁を見ると何も起こっていない。

「何をしたんだか知らないが、何も起こらないぞ。」男たちは口々に言う。

前に出た男は、こう言い放った。

「バーカ、お前たちの眼は節穴か?よく見てみろ。」

一人の男が壁に触れた。

すると、壁が・・・壁だった物が鮮やかな切り口を残した岩の欠片となって崩れ落ちた。

「なっ・・・・!?」そこにいた集団は唖然とした。

しかし中にあるものを考えると、ハッと我に帰るのであった。

「よ・・・よし、中に入るぞ。」集団は壁の奥に進んだ。

白いマントの男は、再び集団の後ろへ下がってゆく。

その集団のなかでは、今の不可解な出来事についてが話されていた。

「今、一瞬消えたよな・・・。」

「あぁ・・・。そう見えたな・・・。」

「あれは、瞬動だ・・・。確か、伝承では天月の勇将の中にも使えるやつがいたらしいが、ただの伝説だと思っていた・・・。」


白いマントの男は、最後尾に来ると・・、

「これで、封印は解けた。」と言い、立ち去った。


一同が進んだ場所は、空洞・・・というより広間のようになっていた。

明りに照らされたその広間には多数の祭壇があり、様々な武器が祭られていた。

「やったぞ、ついに見つけた・・・!」と集団は歓喜の声に満ちた。

そして、最前列にいた男が剣を抜こうとする、しかし・・・。

「なっ・・・!?この剣、ビクともしねえ!」

その後集団は、力のある者たちで剣を抜こうとするがやはり抜けなかった。

「くそっ・・・よし、この祭壇をぶち壊して、こいつを取り出そう!」

そういうと、再び斧を振り上げた。

「せぇーのっ!」振り下ろした。

しかし、さっきの壁と同様、祭壇に傷一つつけることができない。

「畜生っ!伝説のお宝が目の前にあるってのに何で取れねぇ!」暗い洞窟の中で山賊達が次々に不満気に叫んだ。

「落ち着け!」そこに三人ほどの男が現れ、一喝した。山賊の頭だと思われる。

「お前達は伝説を読んでいないのか?その武具は、選ばれた者しか取ることはおろか、触ることすらできねぇよ。」と、山賊の頭と思われる者が言った。

すると、山賊の一人が言った。

「それじゃ、どうやってこの武器を取るんです?」

「力ずくで取ろうとするな。宝ってのは頭を使って取るんだよ。」

頭はにやりとして、ゆっくりと言った。

「村人をしぼれば、こいつを手に入れる糸口くらい見つけられるさ。」



クロウの入った部屋は武器製鉄の最終工程、「たたら製鉄」を行う「ふいご」があった。

ウィルが部屋に入ると、クロウは鑪に火を入れた。

部屋といっても、今度は工房の作業場といったような雰囲気の場所だった。

「これが、最終工程だ。鑪製鉄ではこの鞴を踏むが、風量やタイミングを誤ってしまうと硬さがまばらになって崩れやすい鉄になってしまう。」

「よし、じゃあ手本を見せ・・・。」と言いかけた時・・・。

「クロウ。ちと今、いいかね?」工房内に村長が入ってきた。

「今日は、少しとばし過ぎたかな。最終工程は明日にしようか。」とウィルに言い、クロウと村長は部屋の外へ出て行った。

ウィルは残念そうに、「また明日か、村長が来なければ今日にでも打てたのに・・・。」とつぶやいた。


村長とクロウは工房の裏で話をしていた。

「話とはなんでしょう?村長がわざわざ私のところまでいらっしゃるということは、ただ事ではありませんね。」クロウが言うと、村長はクロウに言った。

「さすがは剣聖クロウ、見事な観察眼じゃ。そう、キャメル山に巣食う山賊たちが村人たちを襲ったのじゃ。」村長は袖から紙封筒を取り出してクロウに渡した。

「そして、これは今日、村の入り口に落ちていたんじゃが・・・。」

クロウはそれに目を通した。


『我々ガルフ山賊団は、キャメルの村人を人質に取っている。人質の解放と引き換えに、以下を要求する。

・天月の勇将の使用していた武具を引き渡す

・勇将と村長以外の交渉は認めない                   ガルフ山賊団』


「ただの山賊なら倒して人質を救うのは簡単だが、今回のは少々厄介だな・・・。」クロウが言った。

「どうしてじゃ・・・?」村長が訪ねた。

「山族なら村人と引き換えに村の"ブラックファントム"をよこせと言ってくるはずなのに、まるでここに武具を封印していることを知っているかのような言い回しだ。それに・・・。」クロウは封筒の折り目を見た。

「山賊がこんなに奇麗に紙封筒を閉じられるわけがないし、そんな事をしなくても乗り込んでくればいいはずだ。」クロウの表情がだんだんと真剣になってくる。

「相手が、簡単に折れてくれるような者であれば良いのだが・・・。今回はそうもいかないらしい。」

そして、村長にこう言った。

「俺は偵察をして来よう。話はそれからだな。村長は、他の"勇将"たちにこの事を伝えてくれ。」

「分かった。酒場に集結させておこう。夕暮までには戻るのじゃぞ。」

クロウは頷くと、その場から消えてしまった。

「"瞬動"か、懐かしいのぅ・・・。」村長も酒場のほうへと歩いて行った・・・。

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