2話 「世界再生」
時は少し戻りもう一つの惑星にて、その惑星は遠めに見ても分かるように”黒かった”。
決して恒星の光を受けていないからというわけでなく、光が当たったうえでなお、黒であった。
そしてその黒は生きている。
悍ましい数の邪龍の魔獣、
形が様々なそれらの魔獣たちがこの惑星を黒く塗りつぶしているのである。
ビルの高さを超えるものもいるその黒たちは向かってくる存在に反応して着地地点となるであろう場所へと集まってくる。
そこに飛来するのは一筋の白い閃光、大気圏に入り、星に伸びる線が赤く染まる頃、
黒の大地から無数の赤き光線が放たれる。
幾万の赤い線が1点を目掛けて直線を描く様はピラミッドのような立体を描く。
しかしそれらの赤き線が白い閃光に触れた直後、すべてが弾かれては放物線を描きながら地上に降り注ぐ。
弾きながらも白き閃光の速度は変わらず、閃光の着地地点と思われる場所には黒を飲み込んでできた巨大な氷の柱が現れた。
弾かれた赤き光線より先に白き閃光は氷の塔にたどり着き、側面を滑走していく。
遅れて焼夷弾のような無数の爆発が星の色を黒から赤に変えていく。
爆発をかいくぐるように氷のレールが引かれ、その上を白き閃光が走る。
黒きものたちは行く手を阻むように襲撃を行い、閃光が過ぎ去ったレールを粉々に破壊する。
砕かれた氷片に爆発の光が反射しては輝きに変わる。
まるで閃光がその輝きを零しながら走るような光景。
ただしそんな幻想的な景色を楽しめるものなどここには存在しない。
黒きものたちは閃光の速度には追い付けない。
行く手を阻もうと立ちはだかるものはすべて氷のレールとなっていき、
ひときわ巨体であった黒を氷が覆うことでジャンプ台が出来上がった。
閃光は宙を舞い、最高高度にて停止した。
時が止まったように黒の攻撃も止まる。
まるでこれから始まる演劇を待つかの如く。
全ての視線が閃光だったものに集まりその変化を見つめる。
全ての黒が漸く閃光の姿を目視できた瞬間である。
その姿は人の形をしながらに青き宝石のような6枚の翼を背にそなえ、
白きマントを纏う様相は黒き世界に降臨した白き天使とも見える。
そしてその星は白になった。
文字通りの白、その星の黒はすべて氷雪に飲まれ、突如到来した氷河期に抗えるものは一片も存在しない。
この惑星から全ての生命が消えた瞬間であった。
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「星は壊すな、惑星Bは再起可能な状態だから生命体のみを排除する。
まあどうせ黒いのしかいないから遠慮なくいつものやり方で対応してくれればいいさ。」
黒髪の男は「グラース、お前が適任だろ?」と言いながら席を立つ。
「いつか私だってできるようになります!」
負けず嫌いで不器用な和装女子はそう声を張る。
「あぁ、そうなってくれると助かるよ。
白は眩しくて疲れるんだ。」
テンガロンハットで目元を隠しながら、グラースと呼ばれた白き男は笑った。
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生命の音が聞こえなくなった静穏な白き星はようやく長き眠りにつく。
惑星に描かれた歴史を白紙に戻す、そんな白き閃光は「世界再生」、そう呼ばれている。