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1話 「星割り」


SF映画にでてくるような近未来チックな内装、外縁部に行けば見えるのは真っ暗な闇の中に数多の光る粒の数々。


宇宙船の中から外を眺めながらこれからの戦闘に向けて気持ちを切り替えていく。


この宇宙船には人の形をしたものが3人乗っている。


まずは長い黒髪のポニーテールをしていかにも武士という服装と身長より長い刀を抱いている女性、

もう一人は白に近い薄い青の髪をして西部劇に出てきそうな服装をしているが色を失ったかのように全身が白い男、

見た目通り腰には拳銃を2丁携えている。


そして最後の一人は、黒い髪に白くゆったりとしたローブのようなものを羽織り、特に手には何も持たず

肘をついた手であごを支えながら今進んでいる方角を眺めている。


「あと数秒で着くぞ」


3人が広い宇宙船の中でも最も広く中心に存在するリビングのような空間で静かに待っていた際、

そんな女性の言葉が宇宙船のスピーカーから聞こえてきた。


「よし、じゃあ手はず通り3組に分かれる。終わったものからバルドラに帰還しろ。」


「はい!」


はっきりとした声で刀を持つ女は返事をし、銃を持つ男は無言でうなずいた。


光速で移動していた宇宙船の急停止、当然高度な科学技術により慣性による重力などは宇宙船内部に発生せず、何もなかったかのように3人は立ち上がり宇宙船後部に歩き出す。

そしてゆっくりと宇宙船後部のハッチが開いて3つの惑星が見えた。


3人の男女はそこから全く異なる3方向に飛び出す。


外は当然宇宙であるがそのようなことを忘れるように3人の見た目は生身そのものである。

飛び出すというのもそれぞれの脚力にものを言わせた力強い跳躍に過ぎない。


しかし3つの惑星の中心に停止した宇宙船からそれぞれの惑星にたどり着くには十分過ぎる勢いを持った跳躍は3人を流星のごとく宇宙を移動させる。



一つ目の惑星は非常に荒んでいた。

世界の終わり、文明を感じさせる建造物はことごとく破壊され、生命を全く感じさせない火炎と砂ぼこりの大地、海は枯れ、空気は濁っている。

静かに終わりを迎えるそんな惑星に突然の爆音と衝撃が走る。


巨大なクレーターとそこから波状に広がる衝撃と砂ぼこりが巻き起こる。


急に中心から突風が起きては砂ぼこりが切り裂かれ、一つの影が見える。


落下の現場を見ていたものであれば誰もが隕石の落下だと疑わない破壊の中心から現れたのはあまりに華奢な女性。


「この星を壊しに参りました、名を千代と申します。」


そう言って見事な一礼を行う。


ゆっくりと顔を上げると巨大で重装備の黒い騎士が目の前に存在した。


「-------------」


全く持って聞き取れない不思議な言葉を発しながら巨大な大剣を振り下ろしてくるのを目で追えない速度で背後に移動して千代が躱す。


「失礼しました。翻訳機のスイッチを切っていましたのでもう一度話してください。」


青い宝石のようなイヤリングに触れながら落ち着いて話す千代。


その声に反応するように先ほどとは少し落ち着いた声を黒い騎士は放つ。


「-------------」


やはり生では聞き取れない声である、しかし翻訳機による同時通訳が作動し千代が認識可能な言語になって声が聞こえる。


「殺してくれ」


千代にはそう聞こえた。

そこで事前に知らされていたこの惑星の情報を思い出す。



----------------------------------

少し前の宇宙船にて


「千代、お前に任せる惑星Aの状況を伝えておく」


黒髪の男にそう言われて床に正座する千代。


長期滞在しない惑星についてはややこしい固有名詞を出さずに覚えやすいAやらBやらで説明するのは

自分の主の癖である。


「惑星Aにおける3日前の時点で邪龍の尖兵が襲来。

といっても来たのは最弱の小型のみだが反撃虚しく1日で文明の壊滅となった。

惑星Aの管理者によると少数の優秀な人間を避難させたが最も個人戦闘力の高い生存個体Aが洗脳を受け、

2日ほど敵味方関係なく破壊を行った結果、邪龍の尖兵を全滅、今も建造物を破壊しながらさまよっているらしい。

依頼人の惑星Aの管理者からはその生存個体Aもろとも惑星Aを壊して構わないと言われているが現場の状況を見てどうするかは任せる。

数時間前からその生存個体Aはとある座標に留まっており、座標は、、、、」


----------------------------------


千代は記憶から、この目の前の黒い騎士こそが生存個体Aであることに確信を持った。


整理のついた頭から導き出された命令は刀を抜き、高く掲げて振り下ろすというものだった。


黒い騎士は咄嗟に躱そうと動くが何かが邪魔をしたようで踏みとどまった。



キン、そんな音が聞こえて惑星Aを一周するように一本の線が走る。

その線は当然目の前にいる黒い騎士の中心も通っている。


「ありがとう」



そんな翻訳を聞いた直後、黒い鎧が左右に割れる。

中から金の髪をもつ女騎士が現れ、力なく前に倒れこむ。


いつの間にか鞘に戻った刀を左手に持ちながら千代は黒い卵のようなものを転がっている騎士に放り投げる。

黒い卵は液体となって騎士を飲み込み、人ひとり分のカプセルと変化した。

千代はそのカプセルを右手で掴み、宇宙船から飛んだ時と同様の要領で大地から飛び立つ。


飛び立つ背後には先ほど通った線が巨大な割れ目となって噴火のごとく赤いものを吹出している。

他に何も聞こえなくなるような轟音、惑星Aの最後の花火が大地と空を覆い、星の崩壊が始まった。



千代、華奢な体に鎧など一切まとわぬ道着のような軽い武士装束、

そこに似つかわしくない長き刀から引き起こされるのは2つに分かれた惑星A。


彼女は「星割り」そう呼ばれている。

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