“鋼鉄銃士”
1
ジョニーは、吹き飛ばされた空中で、体勢を立て直した。
“空中二段跳び”で空を蹴り、着地する。
レオン・サザードは、自身の霊骸鎧“伝説”と一体化した。
“伝説”は、全身が白い鎧であった。
随所に金色の装飾が施され、神々しい風を放っている。
「まるで、霊骸鎧の王様みたい……」
メクスが評価した。
強者に通ずる、独特の圧がある。
(こいつは、強い。……アドバッシュの“竜爆神”、アイシャの“龍王”、チェイサーの“聖兜王”と匹敵するほどだ)
ジョニーは、強者の圧を、両頬で受けた。
大剣“破壊の剣”を振り回してくる。
「“貝殻頭”……! 手伝うだか!」
アドバッシュが声を張り上げる。だが、ジョニーは手で制した。
「アドバッシュ、手を出すな! シグレナスの問題は、シグレナスで解決する。……だが、セレスティナを頼む」
「ほいきた!」
アドバッシュが“伝説”と距離を保ちながら、セレスティナに走り向かった。
ジョニーは、印を組み、“影の騎士”に変身した。
大剣を構える“伝説”レオン・サザードと、向かい合う。
(……弱い)
ジョニーは驚いた。
(控えめに評価しても、弱い)
構えが、目茶苦茶である。産まれて初めて剣に触れた子どものようだ。
(霊骸鎧の性能は、最高級だが、中身は、素人だな)
霊骸鎧も中身も一流の“聖兜王”チェイサーとやり合ったあとで、拍子抜けである。
(だが、馬鹿にはできない。膂力に優れ、しかも、速度もある。戦闘技術を捨てて、身体能力に全振りしたような奴だ。……奴の剣撃を“羽音崩し”で受ければ、俺の腕ごと折れるだろう)
ジョニーは、柱の裏に隠れた。
真正面からやりあえば、力負ける。
背後から突く攻撃しかない。
アドバッシュとメクスが、セレスティナの手を引いて、扉の外に逃がしていた。
(まずい!)
セレスティナを心配したのではない。自分に危険が迫っている。
ジョニーは、反射的に、その場から逃げた。
柱が真横に切れた。
重厚な柱が倒れ、まるで幼児に崩された積み木のように、床に鈍い音と煙を立てて転がった。
(これが、“破壊の剣”の威力なのか。火力では圧倒的に負けている。どうする……?)
ジョニーは、柱の残骸で身を隠しつつ、別の柱に逃げ込んだ。
(そうだ、“星幽界”だ。セレスティナに相談しよう)
“星幽界”を開いて、セレスティナを呼び出す。だが、セレスティナからの反応はない。
ジョニーは現実の世界に引き戻された。
剛の剣が、ジョニーの首めがけて、一閃する。
ジョニーは側転して、回避した。
“星幽界”に浸っている暇はない。
“伝説”は、ジョニーを狙いに定めているのではなかった。手当たり次第に柱を斬り倒している。
(俺を燻し出すつもりだな……。あと、“落花流水剣”対策か)
ジョニーは一瞬にして、“伝説”の意図を理解した。
(“伝説”は、俺の“三角跳び落花流水剣”を知っている。……だが、奴は、俺が壁を蹴らずして“完璧落花流水剣”を出せるとは、知るまい)
ジョニーは、“伝説”に向かって、走り出した。
直前で足を滑らせた演技をする。
“伝説”レオン・サザードが、全力で剣を振り上げ、ジョニーに向かって一閃してきた。
ジョニーは“気配を消す”能力を発動して、身を躱し、空中に跳んだ。
“伝説”の頭上を飛び越え、“空中二段跳び”で、空中を蹴り、“伝説”の後ろ首に回転斬りを浴びせかける。
(“完璧落花流水剣”……!)
だが、金属で金属を打つ音が、部屋に響き渡り、ジョニーは弾き飛ばされた。
“羽音崩し”が、ジョニーの手から離れ、曲線を描いて、大理石の床に転がる。
ジョニーの霊骸鎧……“影の騎士”から黒い煙が出てきた。
視界が曇ってくる。
霊骸鎧は、本来の動きを超えた動きをすると、煙が出始める。
(こんなときに、“影の騎士”が活動限界になるとは……!)
着地すると、脚に力が入らない。走ると、もつれる。
ジョニーは、自分の出す煙で前が見えなくなっていた。
煙の中から、“伝説”の腕が伸びてきた。
(避けきれない……!)
ジョニーは、反射的に両腕で十字を作り、顔面を守る。
両腕が爆発したかのような衝撃を受けたかと思うと、ジョニーは球のように吹き飛ばされ、壁に激しく背中を打った。
後頭部に亀裂が入ったような痛みが走った。
ジョニーは視界は、急激に暗くなった。
身体も動かなくなる。
意思だけはあるのに、闇の世界に放り出されたかのようだ。
(まさか、俺は死んだのか?)
ジョニーがもがくと、顔を覆う面の一部が、黒く焼けた炭のように剥がれた。剥がれた隙間から、謁見の間が見える。
“破壊の剣”を肩に担いだ“伝説”が力強い足取りで、一歩一歩と近づいている。
起き上がろうにも、身体が動かない。
(どうした? “影の騎士”……? 動け、動け!)
片目ばかり動いて、何もできない。片目以外の身体から、感覚が消えている。
(変身を解く……!)
ジョニーは変身解除を試みた。
だが、“影の騎士”は、何も反応しない。
解除機能すら故障している。
“影の騎士”は、煙だけを出し、沈黙している。装甲が炭化して、薄くなり、崩れやすくなっていた。
(死ぬ……? そうか、“影の騎士”は霊骸鎧が死んだのだ)
ジョニーは理解した。
“影の騎士”を短期間で、酷使しすぎた。無理をさせすぎたのである。
(……負けたか。こんなところで死ぬとは……)
だが、“伝説”の横っ腹に、体当たりを喰らわす霊骸鎧が現れた。
頭部は蜥蜴のようで、重厚な装甲を身にまとい、背中には円筒を積み、手には、蛇腹の大剣“竜牙刀”を構えている。
アドバッシュの“竜爆神”だ。
ジョニーは、嬉しいながらも、恥ずかしくなった。アドバッシュには援助を断ったものの、身動き一つできずに、助けてもらっているのである。
アドバッシュは、“伝説”と距離を保った。“破壊の剣”が届かない位置から、“竜牙刀”を鞭のように振り回す。
刃が“伝説”の両腕に巻き付かせた。
魚を釣り上げたかのように、“伝説”を空中に投げ飛ばす。
天井に“伝説”を叩きつけ、返す手首で床に叩きつける。
「おおっ、重量級の“伝説”を軽々と持ち上げるとは、“竜爆神”の膂力も負けていないぞ?」
何度も叩きつけると、“破壊の剣”が、“伝説”から離れた。
「いいぞ、アドバッシュ! そのまま倒してしまえ!」
ヴェルザンディの霊骸鎧に、シグレナスの霊骸鎧を倒せと頼むとは、我ながら、奇妙である、とジョニーは感じた。
ジョニーの複雑な気持ちをよそに、“伝説”が光の霊力に包まれた。
「あれは、“体力増強”……!?」
ジョニーは、この能力を知っている。
一時的に、すべての戦闘能力を倍増させる能力だ。
“伝説”は両手首を戒めていた“竜牙刀”を引き千切り、一体の光となって、脱出する。
謁見の間を跳ね回る。アドバッシュとの距離を縮めて、殴りかかってきた。
武器を失ったアドバッシュの判断は素早く、格闘戦に切り替えた。
“伝説”の拳を難なく躱し、殴り返す。“伝説”は地面に転がり、倒れ込んだ。
アドバッシュの“竜爆神”は“伝説”よりも体格差に優れている。さらに、拳の打ち方も、精密で無駄がない。“伝説”よりも、戦闘技術や体格面、すべてにおいて上回っていた。中身の性能は、アドバッシュが上なのだ。
アドバッシュは“伝説”を、取り押さえる。チェイサーほどではないが、アドバッシュは、寝技にも強い。
“伝説”の全身を覆う光が増した。
自分にのし掛かっているアドバッシュを投げ返し、自分は距離を取る。
「“体力増強”を重ね掛けしただと……!」
“伝説”がさらに、光の層を増やした。
「三重の層になっている……? 三倍“体力増強”だ。逃げろ、アドバッシュ。距離をとれ! “伝説”の消耗を待つのだ!」
ジョニーがアドバッシュに声をかける。
だが、口の部分が塞がっているので、声が出ない。
アドバッシュが、背中を蹴り飛ばされた。
閉鎖空間において、アドバッシュの“竜爆神”は、せっかくの飛行能力が活用できないでいる。
反対に、あまりにも“伝説”の動きが素早く、ジョニーの肉眼では、捉えられないほどだ。 通常が三倍の速度となった“伝説”が、アドバッシュの背後を奪い続け、一方的に殴る蹴るを繰り返している。
“伝説”は、高速で“竜爆神”アドバッシュの後ろに回り込み、首を抱えて、投げ飛ばした。 アドバッシュが地面に叩きつけられ、大理石の床に、くぼみを作った。
(アドバッシュを、“十二神将”の一人を倒すとは、かなり強いぞ?)
強いのか弱いのか、よく分からない。
だが、“伝説”にも異常が見られていた。“体力増強”を表す光の層が消え、足取りが、不安定である。歩く速度も、明らかに遅くなっている。
大理石に転がっていた“破壊の剣”を、手にする。
“伝説”が青白い光を放ち、光は“破壊の剣”に吸収された。
“伝説”は、首を項垂れている。
(“破壊の剣”は、触れる者の命をすすり喰う……。“破壊の剣”が、“伝説”の霊力を喰っているのか……?)
ふらつく足取りで、“伝説”が、“破壊の剣”を振り上げた。
変身の解けたアドバッシュが、気を失って倒れている。
(まずい……! アドバッシュを殺る気か?)
ジョニーは、立ち上がろうとした。だが、炭化した“影の騎士”に拘束されて、動けない。
(くそっ。動け、動いてくれ、“影の騎士”!)
ジョニーは、横から風を感じた。
暖かい風だ。
風というより、光である。
優しくて、安心する……セレスティナを思い返した。
ジョニーは、顔を動かせない。肉眼ではセレスティナの居場所が分からない。
唯一動く片目を閉じる。
ただ、セレスティナを、おへその奥側に思い描いた。
セレスティナが、目を閉じて祈っている。
セレスティナは、隣のメクスと手をつないだ。メクスも目を閉じて、隣のプリムと手をつなぐ。プリムはサイクリークスに、サイクリークスはセルトガイナー、セルトガイナーから、クルト、ビジー、フリーダ、最後にセレスティナに戻った。
仲間たちが、手をつないで、ジョニーに霊力を送り続けているのだ。
ジョニーは、胸の奥から熱い涙が込み上げてきた。
「俺は傲慢だった。自分で、何もかもできると思い上がっていた。周りの奴を無能だと心のどこかに思い込んでいた。……だけど、すべて間違っていた」
ジョニーは目を閉じた。
暖かい光が、全身に満ちていく。
ジョニーは、輝く光そのものになった。
目を覚ますと、暗くて、周りには何もない部屋に倒れていた。
壁が見えるが、遙か遠くにある。暗くても、壁の存在が認識できた。
(神殿……?)
シグレナスの大神殿と雰囲気が似ている。
神々の住む場所だと、瞬時に理解した。
一体の石像が立っていた。
ジョニーと同じくらいの背丈である。人間の形をしていて、頭部は、貝殻のように滑らかな表面をしている。
「“貝殻頭”……? 顔のない霊骸鎧……“影の騎士”か?」
ジョニーは自分の霊骸鎧を客観的に見る機会は初めてだった。
(……力が欲しいか?)
声が聞こえる。“影の騎士”が、ジョニーに語りかけてきた。
「“影の騎士”……? そうだ、俺は力が欲しい」
ジョニーの隣で、陶器が割れた音がした。
音が鳴った場所には、いつの間にか石像が建っていた。ジョニーや“影の騎士”よりも一回り大きい。
ジョニーは、石像を手で触れた。
両目が赤く光る。
(どんな力を望むのか?)
見知らぬ霊骸鎧の石像が、語りかけてくる。
「……相手に打ち勝つ力だ」
ジョニーが答えた。だが、ジョニーは自分の発言に違和感があった。
(……本当か? お前は、奴と戦いたいのか?)
石像は問いかけてくる。
人間の声には聞こえない。抑揚のない、平べったい口調である。
「奴……」
石像の問いかけに、“伝説”レオン・サザードを思い返した。
「戦いたくない……」
ジョニーは、全身から力が抜け落ちる感覚になった。足下から崩れるような感覚である。自分自身が自分自身でなくなっていく。
(どうしてだ? どうして戦いたくないのだ?)
霊骸鎧の声は、自分の声に似ている、とジョニーは思った。
この声の主は、自分自身……。
「奴は、俺の仲間だからだ。……いいや、戦う理由などない。殺し合っても、虚しいだけだ」
虚しい。
ジョニーは、自分の感覚を、不戦の理由とした。
(どうして虚しい?
「味方同士で殺し合う。それはつまり、自分で自分の身体に傷をつけるような愚かさだ。勝っても負けても、虚しいだけだろう」
(もう一度、問う。……お前は、どんな力が欲しい?)
石像が問い続ける。ジョニーを責めているわけでも、急かしているわけでもない。
「俺が欲しい力……」
ジョニーは、へその奥から、熱い力を感じた。
熱い力が、込み上げていく。
迷う気持ちを、力が抜け落ちる感覚を、熱い魂が焼き溶けさせていく。
「それは、戦いを止める力だ!」
ジョニーは叫んだ。
石像が、ジョニーの触れている手を軸に回転し始めた。
高速で回転し、ジョニーの手中で、丸まった。
丸まった石像は、球体となって、熱い炎のように燃え上がった。
「“火”の霊力……?」
目の前に、光の線が現れた。光の線は何本もあり、線と線の間に、空白がある。
「霊骸鎧に変身するときに出てくる印だ……!」
ジョニーは、“火”の霊力をつかんで、動かせた。
光の線をなぞらせる。
見慣れぬ印を組んだ。通りに走らせた。
「出でよ、我が霊骸鎧! “鋼鉄銃士”」
石像の表面が溶け、金属性の光沢を放った霊骸鎧となった。
霊骸鎧“鋼鉄銃士”が、ジョニーと重なる。内側から全身に、全身から外の世界に、爆風が広がった。
2
仲間たちが驚く声がする。
ジョニーは、謁見の間にいた。現実の世界に戻ったのである。
「あれは、なんだ……?」
クルトが、ジョニーを指さして、驚いた。
「ジョニーの兄貴だよ。新しい霊骸鎧を手に入れたんだ……!」
ビジーが感極まった声を出した。両目に涙を浮かべている。
ジョニーは、立ち上がった。
足腰が重い。
生身や、“影の騎士”の状態と比べて、身体が重い。
“伝説”が、ジョニーに振り返った。
“破壊の剣”を振り上げて、“竜爆神”アドバッシュに止めを刺す一瞬であった。
ジョニーには、“伝説”が少し縮まったように見える。
少し世界が小さくなった気がする。
(いや、俺自身の身長が伸びたのだ)
ジョニーは自分の両手を見た。
(腕が重い……!)
両腕に鋼鉄を巻き付けたかのように、腕の動きが、ぎこちない。
(歩きづらい……!)
脚も重たい。泥沼に脚を突っ込んだかのようだ。
試しにジョニーは、走ってみた。
足が遅い。
走っているつもりなのに、生身の姿で歩くよりも、遅い。
(“鋼鉄銃士”は、重すぎる……)
“伝説”が、ジョニーに向かってきた。標的をアドバッシュから、ジョニーに変えたのである。
“破壊の剣”を背中に担いで、向かってくる。
(武器……。武器はないか……!?)
ジョニーの念が通じたのか、右太ももが、半分に開いた。太もも内部に、一丁の拳銃が収納されていて、ジョニーの手元に射出される。
(“烈破弾”……!)
なぜか武器の名前が分かる。
ジョニーは、拳銃“烈破弾”の引き金を引いた。
手首から肩に掛けて、強い反動が来た。
(霊骸鎧でなければ、発砲の反動で片腕が吹き飛ぶところだ……!)
“伝説”の左足首に脚に着弾し、爆発をした。
「掠っただけで、大理石の柱が爆散したぞ?」
クルトが指摘した。弾道が、大理石の柱に、えぐれた痕を残していた。
「拳銃というより、小型砲だね」
ビジーが耳を押さえて評価した。
“伝説”が柱に隠れた。
ジョニーは“伝説”のいる柱に銃口を向け、待ち受けた。
“伝説”が柱から顔を出し、“体力増強”を開放して現れる。
金色の霊力に身を包み、突風のような速さで、走り出す。
一気に距離を詰めずに、左右に動いて、ジョニーの照準を混乱させようとした。
だが、ジョニーが照準を合わせると、どこからともなく、赤い線でできた四角形が現れた。“伝説”を赤く囲った。ジョニーにしか見えない線である。
(自動照準……これが、“鋼鉄銃士”の能力なのだな?)
銃口も自動的に“伝説”を追いかける。なんと優秀な霊骸鎧なのだろう、とジョニーは感心した。
(……今だ!)
ジョニーは、二発、連続で撃った。
すべての弾丸が、“伝説”の肩、足を狙い通りに当たった。“鋼鉄銃士”の優秀さにジョニーの射撃技術が合わさって、命中精度が高い。
足を撃たれた“伝説”がよろめき、倒れる。
(攻撃が効いている……!)
火力も申し分ない。
だが、倒れた“伝説”が纏う光が三層、四層と肥大化した。
(四倍“体力増強”……?)
“伝説”は立ち上がり、またもや走り出す。
速度が四倍になった。
空を切る腕や脚の動きは、速すぎて見えない。
“伝説”は銃口を向けられると、予測できる弾道から、すぐに身を躱した。
四倍速で、ジョニーの周囲を回る。
(背後を取る気だな?)
ジョニーの赤い照準が、“伝説”を枠に押さえた。
ジョニーの身体が、“伝説”の動きにあわせて、自動的に回転し始めた。銃口を向けている間は、“伝説”の動きを完全に捉えているのだ。
(次は、両肩だ!)
ジョニーが発射した弾は、二弾とも、“伝説”の前で、爆発を起こした。四倍の速度も命中精度の前では無力である。
煙の中から、“伝説”が片手を掲げて、立っていた。
(……やったか?)
だが、“伝説”は、平然としている。
掲げた手を開く。指と指の隙間から、弾丸が二つ、床に散乱する。
(高速移動中に、銃弾を二発とも掴み取っただと?)
ジョニーは引き金を引いたが、弾丸は発射されなかった。
(弾切れか……!)
ジョニーの左太ももが開いて、中から弾倉が飛び出てきた。
左右の太ももに、銃と弾丸が収納されているのだ。
だが、ジョニーは弾丸を装填しなかった。
新型霊骸鎧“鋼鉄銃士”には、他にも能力がある。
なぜか、ジョニーは知っていた。霊骸鎧には、変身者と記憶を同期させる機能がある、とジョニーは考えた。
“烈破弾”を空中に投げ飛ばすと、“熱線銃”に変化した。
“熱線銃”を手に、ジョニーは柱に向かって、試し撃ちをする。
銃口から赤い光線が発射され、柱の中心に、円形の風穴を完成させた。貫通、というより、焼き切った痕である。
(“サールーンの日輪弓”……サルンガの小型版だな)
苦しむ“伝説”が、“破壊の剣”を杖にして立ち上がった。
重ね掛け“体力増強”は思いのほか、消耗が激しい。
苦しい足取りで、ジョニーを真っ二つにする間合いまで来た。
“伝説”は“破壊の剣”を振り上げた。
(“伝説”を無力化する……! これなら、掴みとれまい!)
ジョニーは“伝説”の肩に向けて、“熱線銃”を放った。