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組分け

        1

 ジョニーが目を開くと、薄暗い部屋の中にいた。

 周りから、仲間たちの息づかいが聞こえる。

「ここは……?」

 部屋の外から、人々の騒がしい話し声が聞こえる。

 手を握っていたセレスティナから、一気に力が抜け落ちた。倒れ込むセレスティナの肩を、氷細工を扱うかのように優しく抱き止めた。

「大丈夫だ、セレスティナは霊力を使い果たして、気を失っているだけだ。死んではいない。眠れば治る」

 ボルテックスの優しげな声が、隣から聞こえる。

「ここは、どこだ?」

 ジョニーの疑問に応えるかのように、扉を開いた。

 サイクリークスが、開いた扉の先には、見覚えのある廊下が広がっていた。

「宿屋だ。……! シグレナスと、ヴェルザンディの国境沿いの宿屋か! ……どうして俺たちは、ここにいる?」

 夜、セレスティナの部屋に入ろうとした店の客を、追い払った記憶がある。

 窓を開けると、日差しが入ってきた。

 夕焼けが赤い。

 仲間たちが一斉に立ち上がり、伸びをしている。部屋の床には、魔方陣が白い塗料で描かれていた。

「魔方陣……? あらかじめセレスティナが描いていたのか?」

 出発当日、セレスティナは遅刻して来た。

「そうだ。“転送魔術テレポーテーション”は古代の魔術だと、セレスティナは説明していたぞ。魔方陣を二つ作れば、自由に行き来できる」

「どうしてそこまでする必要がある……?」

「ガレリオス遺跡調査には、最後に何を見つけたのか、お互いに報告する必要があるのだが、ヴェルザンディに見られては困る品物をセレスティナは持ち出した。だから、あえて抜け道を見つけたのさ」

「全部、セレスティナは計算していたのだな……!」

 アイシャをわざと増長させ、最終的には有利な状況、報告会をうやむやにした。

「……今夜は、ここに泊まる。明日の朝、シグレナスに直行する。それまでに、身体を休ませておけ」

 ボルテックスが命令した。

「ダルテ、ゲイン。窓から敵がいないか様子を見てくれ。プリム、サイクリークス……。食い物と水を店から持ってきてくれ。……酒は持ってくるな。やめておけ。アイシャが血眼になって、俺たちを捜している。二日酔いでは、逃げ切れん」

 ジョニーたちは簡単な食事を済ませた。

 誰しもが疲れていた。周りで寝息が聞こえだした。

 セレスティナは寝台に寝かされた。まだ起きない。

 不寝番どころではなかった。ジョニーも泥のようになって眠りに落ちた。

        2

 建物の外から物音が聞こえる。

(火事……?)

 ジョニーは、窓……木の板そのものを押し開け、外を見た。

 熱気を顔を撫でる。

 七色に光る、不思議な炎が、庭に焚かれていた。

 高く立つ煙が、天空に呑み込まれている。

 無人のたき火を周りに、人々が集まっている。不審げな表情をしていた。

「ヴェルザンディの特殊な祭り……でもなさそうだ。だとすれば、あれは、狼煙……?」

 ジョニーはすぐに理解した。

「俺たちの居場所をアイシャたちに報せるためか? 工作員スパイの仕業か……? セルトガイナー!」

 ジョニーはセルトガイナーの襟首を掴んだ。

「よせ、リコ。今は犯人捜しをしている暇はない。俺たちを捜しているヴェルザンディ王国軍……いいや、アイシャが、まもなく到着するだろう。一刻も早くここから出るんだ」

 ボルテックスが、セレスティナを抱きかかえ、部屋の外に出た。セレスティナには力がなく、死んでいるかのように眠っている。

 怯えきったセルトガイナーを放り投げ、ジョニーはボルテックスの後を追う。

 店は寝静まり帰っていた。

「おや、もうお帰りですか?」

 宿屋の主人が一室から出てきた。

「急用ができた。さっさと馬車を出せ」

 ボルテックスは、銀貨を宿屋の主人に押しつける。

「多めにくれてやる。だが、他言はするな」

「かしこまりました」

 宿屋の主人は、ずる賢い笑みを噛み殺して、銀貨を懐に引き込んだ。

 宿の外に出ると、馬が繋がれた馬車が用意されていた。

 馬車には、一人が眠れる空間があり、ボルテックスはセレスティナを、世界一の宝物であるかのように、寝かせた。

 丁重に扱うボルテックスの所作は、自警団とは思えないほど高貴な動きをしていた。“白馬の王子シャイニング・アーマー”のようである。

 仲間たちが隊列を整えている中、ジョニーは背筋を伸ばして、夜空を見た。

 月明かりが強い。

 松明がなくても、歩道を辿れば、シグレナスに戻れる。

 強大な霊力の塊が飛来してくる。遠すぎて、肉眼では認識できないが、ジョニーは、アイシャの霊力を感じ取った。

「どうした? アイシャと待ち合わせでもしているのか?」

 ボルテックスが、ジョニーを急かした。

「……好都合だな。俺たちで、迎え撃ってやろう。アイシャを……“龍王ドラゴン”を倒す」

「戦うのか? せっかく逃げられたのに?」

「多分、すぐに追いつかれるだろう。ヴェルザンディの国境内にいる限り、俺たちに味方をする者はいない。それに、アイシャであれば、約束を簡単に破る。越境してこないとは限らないしな。セレスティナを先に逃がして、誰か足止め役が必要だろう。……それに、喧嘩を売られて許すほど、俺は優しくない」

「リコ。お前らしいや。足止め役が必要だよな、それは分かる。……どうする? どうすれば、アイシャを“龍王”を、倒せる?」

「……作戦は、貴様が考えるのだろう?」

「違う違う、俺には作戦を思いつく頭脳はねえよ。俺は、セレスティナの命令通り動いていただけだ。お前も感じただろう? “竜爆神ジェットルーラー”のとき、セレスティナの作戦が頭にすらすらと流れ込んできたのをさ」

「……貴様がセレスティナと相談して作戦を練っていたと思っていたぞ」

「セレスティナの考えだと、アイシャと戦う状況を想定していない。シグレナスに帰るまでで終わっている。今は、セレスティナはこの通りだから、もうセレスティナに考えてもらう方法はないよ」

 ボルテックスは、セレスティナの眠っている馬車を振り返った。

「だから、俺たちでどう倒すか考えなきゃいけねえ。……リコ。俺よりも、お前が戦いに向いている。お前が、セレスティナに任命された指揮官だ。何でも命令してくれ。俺たちは何でも従うよ。俺たちの中には、軍師型の奴がいないんでね」

 ジョニーは目を閉じた。

 軍師。

 そういえば、ボルテックスはビジーを軍師と呼んでいた。

 軍師ビジーは、ボルテックスとカーマインを一騎打ちさせ、背後からジョニーの狙撃で倒した。

「セレスティナだったら、どう考えるだろうか……?」

 ジョニーは、“竜爆神”との戦いに感じた、胸に吹いた風を思い返した。

 セレスティナそのものが、ジョニーの身体に憑依したかのような心地よさを覚えた。

「まず、二手に分けよう。狙撃組と護衛組だ。護衛組は、セレスティナと一緒にシグレナスに帰る。狙撃組はアイシャを迎え撃つ」

と、ジョニーは閃いた言葉をそのままボルテックスに伝えた。

「誰と誰が狙撃組なんだ? リコ、お前が選んでくれよ」

「まず、シズカだ。サルンガは、シズカが使う。もしシズカの霊力が尽きれば、俺とサイクリークスが代わりに狙撃する」

 ジョニーは、シズカにサルンガを渡した。仲間のうち、飛び道具に適性を持った三人を選んだ。この中で、一番シズカが霊力がある、とジョニーは思った。

 サイクリークスと隣で、プリムが手を挙げた。

「おい、リコ……。おれは……? おれもさんかしたい」

 プリムが自分を指さして訊いてきた。

「プリム。貴様は、セレスティナと帰れ。貴様の“螺旋機動ヘリコプティア”は、“龍王”に空中戦を挑んでも、圧倒されるだろう」

 ジョニーが説明した。“竜爆神ジェットルーラー”戦で分かった。プリムは、空を飛ばない敵には強さを発揮するが、同じ飛行系の敵には、追いつけず、後手を取る傾向にある。“竜爆神”よりも、“龍王”はさらに強いのだ。

「サイクリークス……」

 プリムが悲しげな表情で、サイクリークスの手を掴んだ。片手には、サイクリークスが彫った竹とんぼを持っている。

 サイクリークスがプリムに耳打ちをした。プリムが驚いた顔をした。

「ほ、ほんとか? ほんとうにけっこんしてもいいのか?」

 プリムが驚く。

 サイクリークスが無言で頷いた。

 プリムが、竹とんぼを片手に、跳ねて喜んだ。

「なんだ、これは……。ひょっとして、プリムとサイクリークスは仲が良いのか?」

 ジョニーは二人のやりとりを見て、ボルテックスに訊いた。

「知らなかったのか? あいつら恋人だぞ?」

「プリムとサイクリークスが? いつの間に?」

 ジョニーは驚いた。

「……割と、公然と昔から仲が良かったと思っていたんだがなぁ」

 ボルテックスが頭を掻いた。

 サイクリークスは、プリムの胸が大きいと知っていた。

「こうびしたんだ!」

 プリムの泣き顔を思い返した。 

「恐れながら、拙者も参加しとうござりまする……」

 ゲンロクサイが進み出た。異国風の着物に身を包んでいる。

此度こたびは、拙者もシグレナスの一員になると決意いたしましたとすれば、武士道とは、死ぬと見つけたりッ。ヨロシクオネガイシマスッ」

 ゲンロクサイが、独特な動作で、頭を下げる。独特な言い回しで、ジョニーは疲れを覚えた。

 派手な服装で扱い方が色んな理由で難しいが、“自動二輪オートバイ”の機動力はすさまじい。

「むしろ、貴様がセレスティナを乗せていけば良い」

 ジョニーは提案した。

「ノーヘルでニケツは、無理でござる。しかも、意識を失っている者を乗せるなど、愚の骨頂」

 ゲンロクサイが反論したが、異国の言葉が多すぎて、ジョニーには理解ができなかった。「気を失ったセレスティナを“自動二輪”に縛りつけるわけにはいかねえだろ」

 ボルテックスが優しく通訳した。

「“自動二輪”を馬車に直結させては、どうだ?」

 ジョニーが提案すると、ゲンロクサイが首を振った。 

「道路が石畳で舗装されているとはいえ、馬車の中がガタガタのポップコーンじゃ」  

「だから、馬車が揺れて、中のセレスティナが大変な目に遭う」

 ボルテックスが通訳をしてくれて、ようやく意味が理解できる。

「リコ。ゲンロクサイはわらわを心配してくれているのじゃ。察してくれ」

と、シズカが割って入り、ゲンロクサイの手を握った。

「わかった、とにかくゲンロクサイは狙撃組だ。……シズカが危険になったら、乗せて逃げろ」

 ジョニーは役割を与えた。

 ゲンロクサイと、シズカが手を合わせて小躍りした。

「それと、セルトガイナー」

 ジョニーはセルトガイナーを指名した。セルトガイナーが気まずく目を逸らした。

「いや待て、リコ。もうセルトガイナーの火力では、“龍王”には通用しないだろう。護衛組が、道中に襲われるかもしれない、護衛組に入れるべきでは?」

 ボルテックスがジョニーの意見に反対した。

「いいや、セルトガイナーをセレスティナから引き離しておく必要がある」

「……どういう意味だ?」

 ボルテックスは、首を傾げた。

「フリーダ。貴様は護衛組だ」

 フリーダは、セルトガイナーに視線を送ったが、微笑んで、ジョニーの指示に従った。

「最後にクルト、貴様はサイクリークスと一緒にいろ。電撃鞭が“龍王”に効けば最高だ」

 単体の戦闘力では、ヴェルザンディの霊骸鎧に通用する者は、クルトかボルテックスかしかいない、とジョニーは考えていた。

「今の貴様は、俺より強い。……頼りにしている」

 ジョニーが本心を伝えると、クルトが白い頬を紅潮させて喜んだ。別に褒めるつもりではなかったが、真実を語ったまでなのに、ジョニーが心配になるほど、クルトは喜んでいる。そんなに喜ばなくても、とジョニーは思った。

「ダルテ、ゲイン、フィクス、ターキエ。貴様らはセレスティナを護衛してくれ。道中に山賊でもいようものなら、簡単に倒せるだろう」

 ダルテが前に出てきた。

「ジョエル・リコくん……。君は、シグレナス一番の勇士だ。私はこれまでに何人も軍人を見てきたが、君ほど心の強い男はいなかった。最後まで諦めない心の強さにいたく感服する。……シグレナスの正規軍に入らないか? ともに帝国のために戦おうぞ」

「俺は奴隷だ。正規軍には入れまい」

「であれば、解放奴隷になれば良い。私が代わりに手続きをしてやろう。こう見ても、法学に心得があるんだ。もし、シグレナスに帰ってきたら、私、いや、私たちの家に来て欲しい。歓迎するよ」

 ダルテの発言に、ダルテの腕を握っているフィクスが頷いた。ジョニーは二人の結婚が近いと気づいた。

 ゲインは腕を組んで「ふん」と目を逸らした。

「俺は用無しか」

 ゲインからは悪意を感じなかった。憎まれるふりをしている。あまり人に好かれる方法を知らない、とジョニーは思った。

「そういう点では、俺もゲインも似たもの同士というわけか」

 ゲインもターキエも地上の敵には強いが、空を飛んでくる“龍王”とは相性が悪い。

「貴様ら親子が二人そろえば、どんな奴が攻めてきても、護衛できるだろう。……頼りにしている」

 ゲインが腕を組んだまま、口元を緩ませている。

「これで、リコ、シズカ、ゲンロクサイ、サイクリークス、クルト、セルトガイナー……」と、ボルテックスが指を数えた。

「……当然、俺も狙撃組に入っているよな」

「ボルテックス、貴様は帰れ」

        3

「何でだよ? 主人公の俺様が帰ってどうする?」

「……主人公かどうかは知らんが、もう貴様は戦えない。全身が限界だと、セレスティナに気づかれていたぞ」

「俺は死なねえ。主人公だからな。俺がお前を守ってやる」

「嘘をつけ、全部分かっているぞ?」

「俺んちさあ、めっちゃ貧乏でさあ。兄貴はガキの頃から働きに出ていったんだよね。頭が良かったからかな。大神殿は、大神官以外巫女じゃないといけなくて、男禁止なんだけど、仕事ができるからって、当時の大神官に気に入られたんだよね」

 ボルテックスがいきなり自分語りを始めた。

「俺はガキの頃は身体が小さかったんだぜ。いじめられていたんだけどな、兄貴が代わりになって助けてくれたんだ。父親も母親も死んで、俺は俺の爺ちゃんが経営する、ボルテックス商店に引き取られ、兄貴はそのまま大神殿に就職した」

 セロンはボルテックスを、弟、あるいはボルテックス、と呼んでいた。

 ジョニーはボルテックスの生い立ちなんて興味がなかった。だが、セロンがボルテックスを名字で呼ぶ理由が分かった。

 ビジーがボルテックスやセロンの家系はすごい、と褒めていた。

 セイシュリアの王子カーマイン、ヴェルザンディのアイシャも家柄を気にしていた。

 セロンが子どもの頃から働かなければならないほど貧しかった、とは以外である。

「リコ。俺は、お前に惚れた。お前が“黄金爆拳ゴールデンボンバー”に立ち向かったとき、俺はお前が羨ましかった。お前みたいな男になりたい、と思った。小さい頃、兄貴に助けてもらっていたのに、スパークを見殺しにして、俺は本当に情けない奴だった。今までの俺は、世界に対して背中を向けていた。自分を誤魔化していた。だが、お前の勇気を見て、俺は俺の間違いに気づいた。俺は俺が誰かなのか思い出したんだ。リコ。お前のおかげなんだ!」

「お褒めにいただいて、ありがたいが、お前が死んだら、どうする? 死なれても迷惑だ」

「たとえ俺が死んでも、俺の子どもがお前を守る」

「貴様の子どもが死んだら、どうする?」

「俺の孫が、お前を守る。いいや、俺の子孫は、末代までお前の子孫を守るだろう。ここに宣言する! いいな?」

「勝手に決めるな」

「なあ、知っているか? 霊骸鎧って、そいつの願望がカタチになっているんだって。俺は“光輝の鎧(シャイニングアーマー)”。輝きたいんだよ。誰かを守りたい。誰かを守っているときだけに、輝くんだ。それが、俺の、本当の願いなんだ。叶えさせてやってくれ、頼む! 俺はお前を守る。お前が愛する者はすべて、俺が守る。俺の居場所は、お前たちなんだ。お前たちを守る、ただそれだけだ」

「……知ったことか。好きにしろ」

 ジョニーは面倒になった。ボルテックスが喜んでいる。

「本当に、よく分からん奴だ」

 ジョニーはビジーの言葉を思い返した。

「ジョニーの兄貴も兄貴の頑張る場所、好きな場所を見つけなよ。多分、戦いの場所だと思うけど。それに、セレスティナに興味があるんだろう? だったら、なおさら行きなよ」

 俺の居場所……。朧気おぼろげながらも見えてきた

 居場所なんて持った感覚はなかった。

 ボルテックスは仲間を守る、それが居場所だと考えている。

 居場所、というより、生き方である。

「居場所とは、生き方なのか? そんな考えもあるのか……」

 組み分けが終わり、護衛組を先に歩かせた。

 ジョニーたち狙撃組は踏みとどまる。

 ジョニーはセレスティナの顔を覗こうと思ったが、そんな暇はない。

 ジョニーは、木の枝で、足下に絵を書いた。

 アイシャが出てくるまで、まだ時間がある。戦術作戦を説明する。

「……クルト、ボルテックス、サイクリークス、そして俺とで四方から登場して、アイシャの意識を引き寄せる。俺たちは囮だ。誰かを真っ先に攻撃してくるだろうから、シズカのサルンガで仕留める」

「……セレスティナみたいだな。簡単に作戦を立案して来やがる」

 ボルテックスが感心した声を出した。

「ゲンロクサイは、シズカの霊力が切れたら、シズカを“自動二輪”に乗せて、サルンガを俺かサイクリークス、近い側に持ってこい」

 ゲンロクサイがうなづいた。

「陣形の名前はどうする?」

 ボルテックスが手を挙げた。

「知ったことか」

「“殺竜陣ドラゴンスレイヤーフォーメーション”は、どうだろう? ……いや待てよ、“南十字星陣サザンクロスフォーメーション”もいいかも。でも、なんか世紀末っぽい響きだしな」

「だから、名前はどうでもいい」

「セレスティナがここにいたら、お前を見直したかもしれないのにな。考え方がよく似ているんだよ。お似合いだ」

 ボルテックスが余計な発言をする。

「セレスティナの件に関しては、どうやら俺の勝手な思い込みだったらしい。俺にはまったく見込みがなかった」

 ジョニーは肩を落とした。勝てる喧嘩ではなかった。

「まあ、そんなに気を落とすなよ。まだまだ好機チャンスはいくらでもあるぜ。多分な」

 ボルテックスは慌てて、取り繕った。

 ジョニーはボルテックスが慌てているようにも見える。

 ジョニーとボルテックスは同時に立ち上がった。殺気が向かってくる。

 遠い空に、赤く燃えた霊骸鎧が空中を飛んで、こちらに目がけてきた。

「早速おいでなすったな。あの様子じゃあ、かなりのお怒りだぞ?」

と、ボルテックスが印を組んで、霊骸鎧に変身した。

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