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第9話 ルーメの町

漢数字の書き方に違和感が(;´・ω・)




 目的地の町の名はルーメというらしい。そこそこ大きな町で夕方には到着するそうだ。人の早歩きほどの速度で森の中の小道を馬車は進む。

 御者台にはダニオが座り馬の手綱をとっている。そのほかのメンバーは荷台だ。他に荷物を載せていないとは言え、一頭引きのくせにすごい馬力だなとジンは感心していた。速度は遅いが。

 狭い荷台を見渡す。奥さんのダリアはまだ予断を許さない状況だ。最初に出会った時の昏睡症状は失血性のショック症状ではないだろうかとジンは考えていた。時折意識を取り戻すがひどい頭痛があるらしい。娘のベルナは母に寄り添うようにして眠っている。年のころは一二~一三歳くらいだろうか。あの恐怖体験がトラウマにならなければよいがと心配になる。

 それに対して冒険者のエッツィオは元気であった。ゴブリンに激しく抵抗していたらしく全身を打ちのめされ、骨折に打撲と大変なことになっていたが、クラフターによる治療でほぼ回復しているようだった。

 そうこうしているとイルから探知情報が入ってきた。



 村を離れ三時間ほどすると道の先に丸太が倒れていた。

 山賊による待ち伏せである。前に三人、後ろに四人、左右の木の上に一人づつ。周囲スキャンで丸わかりだ。

 状況はすでに全員に周知済み、ジンも先に光学迷彩で消えている。丸太の前に馬車を止めると、物陰から髭面の男たちが姿をあらわす。


「こおんにちわああ! 山賊屋さんですよおおお!」


ゲヘヘワハハと下品な笑い声が響く。


「全部ぜぇええんぶ置いて逝って下さああい!」


剣や斧をチラつかせたりナイフの刃を舐めたりして楽しそうである。


「ひいいいいっ! 山賊よぉぉお!」


「もうだめだー」


娘ベルナの迫真の演技と、父ダニオの芋演技が冴える。


「ぐああああ!」


次の瞬間、ボトリボトリと左右の木の上に隠れていた男たちが落ちてくる。そちらに視線が行っている隙に後ろの四人が膝を撃ちぬかれて倒れる。


「な、何しやがった!?」


先ほど楽しそうに口上を述べていた男が叫ぶと同時に、それを挟んでいた二人が倒れる。


「後は君だけのようだね」


余裕の父ダニオである。


残った山賊は剣を振り上げ駆け寄ろうとするが、容赦なく膝を撃ちぬく。それを確認すると、それまで荷台で奥さんのダリアを守っていた冒険者のエッツィオが降りてきて一人づつ縛り上げていく。

 途中、ロープが足りなくなりクラフターで作ったりしつつ、作業は進む。縛り上げた順に傷を治していくが失った血までは回復しないので皆フラフラである。

 全員を縛り上げると尋問タイムである。山賊たちのねぐら、規模などを聞き出すためだ。エッツィオが山賊の持っていたナイフで刺して、ジンが治してを繰り返すとあっさりと白状した。


 山賊のアジトへはエッツィオとジンが向かい、捕えた山賊たちはダニオ一家に任せてきた。娘ベルナが楽しそうに小突きまわしていた。ジンは元気になったベルナに安堵したが、ダニオ家の将来がすこし心配になった。


 はたしてアジトは供述どうりの場所にあった。居残りが二人いたが軽く無力化し、お宝を漁る。

 この国の法で山賊の財産は倒した者に権利があるらしく、エッツィオもダニオもたとえ足止めされてでも稼ぎ時であったのだ。食料、酒、武器などはあったが現金や貴金属は少なくエッツィオは落胆した。仲間を失い、雇い主を死なせ、冒険者を続けるにせよ辞めるにせよ、再出発のために資金が欲しかったのだ。ダニオにしてみても、奥さんが回復するまでは行商はできないと思い、降って湧いた好機に期待していた。


「まぁ、これだけの物を売れはばそれなりの金額になると期待しよう」


エッツィオの言葉を受け、クラフターで大きな袋をいくつも作り、片っ端から詰め込んでいき先ほど倒した山賊に括りつけていく。



 山賊たちは首と両手を木の棒に括り付けられ、首同士を数珠つなぎにされて歩く。足の遅い山賊をつれては時間がかかったため、一夜を野宿で明かし、町についたのは翌日の昼前であった。

 町は三メートル程の壁に囲まれ三つの門から出入りが可能だった。そのうちの西門に近づくと町の守衛兵が二人駆けつけてきた。

 

「ダニオさんじゃないか! これ、何があったの?」


一人はダニオのご近所さんの若者であった。パンツ一枚で縛り上げられ、その中には大きな袋をぶら下げている者もいるのだ。


「やあ! フィロ君、君の顔がまた見られてホッとしたよ。コイツらは山賊だよ、引き取りをお願いするよ」


「わかりました。コイツらに括りつけてある荷物は剥ぎ取り品で?」


「そう、剥ぎ取り品は纏めてコイツらに括りつけておいたから検分をお願いします。それと、妻が具合が悪くてね、詳細は妻を休ませてからでも良いかな?」


「わかりました。話は通しておくので後で詰め所まで来てくださいね」


「ああ、それでお願いします。それとこちらは道中助けてもらった旅の妖精族の方だよ。入門税は私が持つので手続きをお願いします」


町に入るのに税金が必要なのを知らなかったのでジンはホッとしていた。

 山賊が連れられて行き、入町の手続きをしたがアース族最後の一人という設定が新たに付いた。



 町に入ると、全員でダニオ家へむかい、奥さんをベッドに運び、娘のベルナは医者を呼びに走った。奥さんの事は娘に任せ、ダニオとエッツィオとジンの三人は冒険者ギルドに向かう。




 「私は知りたい、冒険者ギルド」


道すがら尋ねてみる。ゲームに出てくるような冒険が待っているかもしれない。まさか反復クエしかないとかはないよな、と期待と不安が入り交じっていた。その問にはエッツィオが答えてくれた。


「あー、冒険者ギルドってのはな、国がやってる集まりでな。本来、根無し草の穀潰しからも税金とるための施設さ。」


よく分からなかったので、顎に人差し指をあてて小首を傾げてみる。幼児のこのポーズは破壊力高いやろ、とか考えていた。


「まずは冒険者から話さないとだな。この世界はいろんな生き物に満ちてるだろ?ゴブリンみたいな奴らがいるから町から出たら危険だらけさ、そんな危ない場所に行ったり怪物なんかと戦ったりするのが冒険者のお仕事さ、でも冒険者は畑とか耕さないし物を売ったりもしない。だから税をいくら取っていいか分からない、冒険者一人につき幾らなんて掛け方したら税を取らない国に行っちゃう。

 じゃ、税を取らなかったら農民も商人も俺は冒険者だとか言いはじめる」


ジンはロマンあふれる仕事かと思っていたので、なんだか説明が世知辛いので落胆が隠せない。


「でも、悪い事ばっかりじゃ無いんだぜ?税を取らなきゃいけないので、冒険者への依頼は必ずギルドを通さないといけない。報酬の一割が税だからな。で、嘘の依頼で冒険者を騙したりしたら国が取り締まってくれるのさ。仕事も斡旋してくれるし、街の出入りも無税だしな。ただし、戦争がはじまったら強制参加な」


エッツィオの説明では夢も希望もないように聞こえる。そうこうしているうちに冒険者ギルドに到着した。

 木製の柱に漆喰の壁、カウンターにテーブル席。どう見ても酒場にしか見えない内装の中に、依頼書を貼り付けてあるボードが唯一、冒険者ギルドであることを主張していた。

 大きく張り出したカウンターの中に親父が一人。看板娘みたいのがいたが空いているテーブル席で天に大口を開けてイビキをかいていた。


 エッツィオは事の顛末を親父に説明し、ダニオが事実であると証言した。親父は終始黙って聞き、最後に一言、大変だったなで終わる。三人は夕方にまたここに集まる約束をして、一旦解散となった。

1話3000文字ほどで安定してきました。短いですかね?

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