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第42話 報告

ちょっとスランプ気味です(;´Д`)



 レンデンブルグ砦。大陸中央に広がるエルフたちの支配域、シャインバルト大森林を取り囲むように作られたドワーフたちの砦。大陸の端に追いやられるように、森に押しやられるように海沿いに存在するウォールマンたちの国家。その国に最低でも1つは作られた人類の盾。その国にとって、この砦が落ちる、それはその国が亡ぶことと同義であることは、先のゼノア王国の悲劇が物語っていた。


「おおお! スローディン殿ではござらぬか! まだこの砦に居座っておられたか!」


「おぅヴォル坊か! 久しいのう!」


 レンデンブルグ砦の指揮官室にてヴォルフラムは旧知の武人と再会を果たしていた。


「最後にお会いしたのは三〇年も前でござろう。未だ現役とは恐れ入りましたぞ」


「懐かしいのぅ。ヘルン砦が落ちて以来か。ゼノアが滅んだ報を聞いた後も其方が生きていることは聞いておったが・・・・・・元気そうで何よりじゃ」


「そうじゃ、そのことでお伝えせねばならぬことが。まずはこの御仁を紹介させてくだされ。フェリエラ王国にて高名な魔道士でラウロ殿でござる」


 それまでヴォルフラムの後ろに控えていたラウロが前に進み出た。


「ラウロと申します。フェリエラより参りました。・・・・・・陸路にて」


そう言うとニヤリと笑って見せる。


「うむ、うん? 陸路とな? まさか!」


ガハハとヴォルフラムの笑い声が響いた。


「ラウロ殿たちは僅かな手勢でなんとゼノアを解放しよったのじゃ!」


「いや、某はほん少し手を貸しただけにござりまする。ヴォルフラム殿、正しくお伝え願いますぞ」


再びガハハと笑うとヴォルフラムはスローディンに詳細を語りだした。彼の視点で語られるジンの姿は伝説の勇者もかくやの活躍である。流石にラウロも苦笑が禁じえなかった。


「ふむ、ふむ。ゼノアが解放されたか。そうか、そうか。・・・・・・其方がこの砦を飛び出して行ってから三〇年、流石に我らドワーフであっても長かったのぅ」


「その節はご迷惑をお掛けいたした。ゼノア王は旧知の仲でござった。友の危機を座して待つことはできなかったのでござる」


スローディンは昔を懐かしむように何度も頷くとおもむろに席を立ち窓際に歩み寄ると遠くに見える森を眺める。


「ヴァル坊にそのジンであったか、それにフェリエラの元宮廷魔術師殿が今、この砦に集まったのは天の采配と言えるのかもしれんの」


その言葉にラウロは苦笑した。


「バレておりましたか」


「其方ほどの高名、流石に田舎の爺と言えども存じておりますとも」


ラウロは恥ずかしいのか後ろ頭を掻く。


「もう貴族社会には嫌気がさしましてな。国の外に出ればワシのことを誰も知らぬだろうと期待しておったのですが。いやはや世間は狭いものですな。・・・・・・して、ワシのような隠居の身に何かできることでもありましょうか?」


「うむ。このところ各地でエルフどもの動きが活発になっており申す。未だ理由は掴めておりませぬが、小競り合いが頻発しておりましての。それに魔獣の動きがおかしい。北の地に住まう大型魔獣がこの近辺でも目撃されておるのです」


「それと、陣の刻まれた魔石ですかな?」


スローディンは驚きを隠せず、目を丸くしてその視線を外からラウロへと移した。


「実はワシらもそれらの敵と戦い申した。ラウロ殿、あの魔道具を」


ヴォルフラムに促され、懐からエルフより奪った魔道具を取り出し、テーブルへと並べる。


「大型魔獣もエルフの仕業でございます。この魔道具を使い、陣を刻んだ魔石をもつ魔獣を操っておりました。似たような技術が神域ダンジョンにあるらしく、彼らはその技術を再現する術を得たようです。直接交戦したジン殿がエルフたちと会話をしております。そこで得られた情報ではまだ実験段階であるようです」


「ふむ。すると北の地で暴れておるというドラゴンもエルフどもが操っているとしたら由々しき事態か」


「その話である! ワシもその報を受けてファウストベルグより派遣されたのでござる」


ヴォルフラムは持っていた斧の石突を床へと叩きつける。


「報告では下位龍であったようじゃ、数は二匹。いずれも多大な犠牲を伴って討伐されておる。しかし、ドラゴンは神域ダンジョンの守護者。今までダンジョンから出たなどと言う話は聞いたことが無い。これらもエルフの仕業であろうか」


この問いに、暫し思案していたラウロが声を上げた。


「ドラゴンは魔獣の雛形となったものと聞き及んでおります。ドラゴンにも魔石があるとすれば操ることも可能でありましょう。・・・・・・幸いなことに彼らの技術では両手両足ぶんしか操れぬ様子。四つ足に羽をもつドラゴンと似た体形であるマンティコアと交戦しましたが、目的地まで徒歩で移動させた後、魔道具の効果を断ち、ただ暴れさせるという戦法を取っておりました」


ふむ、とその報告にスローディンが思案していると、指揮官室の扉をドンドンと荒く叩く音が響いた。


「大将! 一大事ですぜ!」


扉の外から野太い声が響く。


「むむ、かたじけない話はまた後程に。入れ!」


そう言うと扉を荒々しく開けて全身を板金鎧に身を包んだドワーフ兵が入ってくる。


「報告しやす! 狩りに出ていた部隊が敵と遭遇! 相手はオーガ! その数、約五〇!」


「な!」


スローディンはその報告に目を見張った。それはオーガの数が多いことにある。普段オーガは(つがい)で行動し、多くても繁殖期に子ども連れで五匹ぐらいなのである。


「スローディン殿、そのオーガ、エルフどもが操っていると思われまする」


ラウロの進言にスローディンは思考の海から浮上する。


「ゼノアの時で同じでござろう。奴ら、精霊術の【昏睡(ソーパー)】で生きたまま妖魔や魔獣を集めるのには長けており申す」


ヴォルフラムは眉間に皺をよせ、ゼノアのことを思い出していたのか斧を握る手は小刻みに震えていた。


「ふむぅ。しかし、ミロルの一件といい、奴らの狙いが分からぬ」


「おそらく、ミロルは実験を兼ねた陽動でしょう。ミロルに兵を割いておるうちにここを襲撃する手はずだったのではないでしょうか」


「となると、狩りに出ていた部隊が敵主力部隊と偶然に遭遇したと?」


「主力にしては数が少ないように思われまする。おそらくこれも陽動。やはり狙いはここかと」


スローディンは白くなった髭を扱くとニヤリと笑う。


「やはりラウロ殿がここに来られたは、天の采配でござったな。ヴォル坊、少数の手勢を率いてオーガにあたってくれるかの」


ヴォルフラムは斧の石突を床に叩きつけるとニヤリと笑う。


「お任せいただこう!」


「ズーニル! 五〇名を率いて至急出撃せよ。ヴォルフラムの指揮に従え!」


すると先ほど報告に来たドワーフ兵が満面の笑みになる。


「黒鉄殿と斧を並べられるたぁ、俺にもツキが回ってきたぜ! 至急五〇名を搔き集めて出撃しやす!」


そう言うと右拳を左胸に荒々しく叩きつける礼を取ると指揮官室を飛び出していった。


「スローディン殿、オーガの背後には操っておるエルフも同数おるはず、五〇名では少なくはありませぬか?」


「ふふふ。お主たちがそのジンとかいう御仁を抱えておるように、ワシらにも切り札になりうる人物を抱えており申す。ちょうどその狩り部隊に同行しておりましてな。おそらく増援部隊が到着するころには決着が着いておるやもしれませぬぞ」


「ほう! そのような人物がおるとは初耳でござる。これは楽しみだわい。ではワシも準備が整い次第出撃いたす。然らば御免」


ガハハと笑いながらヴォルフラムも指揮官室を後にした。


「では、ラウロ殿。我々も敵主力部隊を向かい討つ準備でもしますかな」


「お供いたしましょう」


そう言うと二人はニヤリと笑った。






 投稿が少し空いてしまいました、申し訳ございません。

 ちょっと難産気味です。

・書いても書いても面白くならない

 ↓

・時間だけが過ぎていき焦る

 ↓

・せや! 関係ない話挟んでワンクッション置いたろ!


で、遅滞を図ったのがこの42話です。なんか申し訳ありません。




ブックマーク増えてました。ありがとうございます(人´∀`*)


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