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第39話 ジン敗れる

魔法を【○○○】と言った形にしてみました。

 ジンは木漏れ日の揺れる森の中、木々の合間を縫うように駆け抜けていた。

 リユー村を襲ったマンティコアが倒されたのを見届けた後、その場を立ち去るように移動する反応を見つけたジンは村を仲間に任せて、その反応を追跡していた。

 相手もジンに負けず劣らずの速度で森の中を駆け抜けている。スキャンの結果から対象が人間大のサイズであることは分かっている。これが人型であるならばかなりの身体能力である。


 一〇分程追跡したであろうか、対象は移動をやめた。そして新たに三つの反応を感知する。仲間と合流したのだろうか、はじめに追跡していた対象を合わせると、その反応は四つに増えた。そのうち一つは人間よりもはるかに大きな反応を示している。


 ジンは光学迷彩で姿を消すと足音を出さないように慎重に近づく。


「どのような技を使っているかは分からぬが、うまいこと姿を消しているな。だが、我らには通じんよ」


 久しぶりにジンのバイザーには字幕が表示されていた。


<妖精語です>


 そこには半裸の男たちが三人、ジンを見つめていた。その姿はみな細身に整った顔立ちで、全身に隈なく刺青を施していた。そんな彼らの最大の特徴は長くとがった耳であった。


樹の民(エルフ)か」


ジンはぼそりと呟くと光学迷彩を解除し姿を現す。


「マンティコアは?」


「こいつに倒されたよ。走らせるだけしかできなかったからな。まるで使い物にならなかったよ」


風の民(ハーフリング)にそんな力があるのか?」


「ただ暴れるだけのでかい獣だ。我らでも倒せぬことは無い。オーガを出せ、良い実験になる」


 そう言うと、奥に控えていた一人が両手に独鈷のようなものを持ち、胸の前で両手をクロスさせる。すると、両手の独鈷のような物と額のサークレットのようなものから仄かに青白い光が発せられる。

 バサッと奥の茂みが揺れ体長が三メートルは優にあろうかと言うほどの巨人が飛び出してきた。全身を革製の鎧で包みその表情も窺い知ることはできないが、これがオーガであろう。手には巨大な細剣が握られていた。

 先ほどの彼らの話からするならば、魔獣を操っていたのは彼らで間違いないようだ。何よりも青白い光を放っている独鈷のようなものと額のサークレットが怪しすぎる。

 オーガは刀身を垂直に眼前にピタリと止めると、シュンと一振りし、フェンシングのような構えを取る。その動きは洗練されていてとても魔獣のものには思えない。操られているのは明白だ。一方、操っている方は先ほどのポーズのままその場を一歩も動いていない。

 ジンは軽く周りを一瞥するとニヤリと笑う。ヘルメットをかぶっているので相手にその表情は見えないだろう。彼の脳裏には勝利の算段がすでに組み上げられていた。


 オーガが人の背丈ほどもありそうな細剣で鋭い突きを放つ。ジンはその突きを半身になることでかわすと、震脚を使い一気に間合いを詰める。操縦者に。

 オーガの脇をすり抜け、操縦者すらも超えてその背後に立つ。今、オーガとジンの間には操縦者が挟まれている形だ。オーガは剣を向けるがその先には自分の姿が見える。狼狽しているのかその剣先は小刻みに揺れていた。


 この事態に残りの二人のエルフは舌打ちをすると剣を抜きジンに飛び掛かってきた。鋭い突きがジンを襲う。しかしジンは防御をシールドに任せ、操縦者にぴったりとしがみついた。


「な! こいつ! 離れろ!」


「剣が通らない!」


 狼狽する二人を尻目に、ヘルメットを収納し素顔をさらすとニヤニヤをした笑いを彼らに見せる。


「よい も わるい も リモコン しだい」


「こんな弱点があるとはな!」


 エルフは今一度鋭い突きを放つがその一撃は蒼い燐光を撒き散らすに終わった。


 ジンからしてみれば、遠隔操作ロボットへの対処法は昭和の時代に確立済みだ。システムを乗っ取るか、操縦者を倒せばよい。ファンタジーの世界に生きる彼らにはまだ早すぎたようだ。

 やはり搭乗型がロマンであろうと考えているとニヤニヤ笑いが止まらない。しかしこの後をどうするかでジンは迷う。なんとか無力化したいが捕らえる方法が思いつかない。


 とりあえず、遠隔操作潰しを堪能できたので操縦者から離れると先ほどから斬りかかってくるエルフの方へと向き直る。人間に比べると遥かに素早い動きを見せている。

 操縦者の足元でチョロチョロしているのでオーガは襲ってこない。


「どして たたかう?」


 ジンとしてみれば初エルフである。今後もこの世界で生きていくのであれば彼らの意見も聞いてみたい。この日のために妖精語も少しは勉強している。


「知れたこと! 森を侵す者に生きる資格は無い! 来い! 【光の精霊ウィル・オー・ウィスプ】!」


 答えたエルフの頭上に光の玉が現れ、高速でジンに飛来する。流石にジンも一歩後退してしまった。光の玉はジンに届くことなく蒼い燐光を散らし消滅してしまった。

 魔法もシールドで防げることに安堵しつつ、神聖術と精霊術には詠唱が無いのかと冷静に分析していた。


「精霊も効かないだと! 化け物か!」


「ドワーフ ハーフリング ウォールマン なかよし エルフ ちがう どして?」


 エルフ二人は攻撃が通じないことに衝撃を受けると、ジワリと後退し距離を取る。


「ドワーフ? ウォールマン? 笑わせるな、火に魅入られし呪われた者どもはこの地上より消し去らねばならん。それが世界に選ばれし我らエルフの使命だ!」


「せかいにえらばれし?」


「森は全ての命を育む。我らエルフは生命の守り手。我らはお前たち異物を排除するために神より遣わされた選ばれし民なのだ!」


 ジンはその答えにポカンとしてしまった。選民思想につける薬が思い当たらない。


「分かったなら、お前も森の糧となれ! 【恐怖(フィア)】!」


 ドクン! ジンの心臓が一つ大きく鼓動した。次の瞬間、心臓が締め付けられるような感覚に陥る。全身から血の気が引いていく。背筋に氷の杭でも打ち込まれたように悪寒が走る。

 ジンは足腰に力が入らず、たまらず膝をついてしまった。


「精神の精霊への干渉は効果があるようだ。ならこれも喰らえ! 【混乱(コンフュージョン)】!」


「あ あ あ あ ああ ああ ああああああ!」





大変お待たせしてしまいました。

今後はペースを戻せると思いますが、投稿頻度は以前より落とそうと思います。


仕事漬けになってる間にブックマークが増えて12件に!ありがとうございます(人´∀`*)

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