第3話 ファイアウォール
短いです。
「あばばばばばばばばばばばばばばばばば」
〈警告! 重大なエラーが発生しています!
警告! 重大なエラーが発生しています!〉
地表に転送すると言われ転移したのは、どこまでも白い空間だった。
その空間をどこまでも落下していた。
しかも、ただ落下するわけではないのだ。
全身を激痛が襲っていた。顔が、腕が、足が、胴が、波打ち、焼け、砕け、潰され、そして再生していた。
〈全身をスキャン中、エラー!
空間をスキャン中、エラー!〉
絶え間なく安っぽい警告音が鳴り続ける。
〈管理者からの干渉かと思われます!〉
時間にして三分もなかっただろう、突然真っ白だった視界が色を取り戻す。
今度は青だ。一面のスカイブルー。視線を巡らすと強い光が目に刺さる。
未だ落下は止まらない。だが激痛は無くなっていた。思うように動かない体を捻ると、再び視界が切り替わる。
眼下に広がっていたのは世界そのものだった。
広大な森、高い山々、遙か先には海が見える。
〈反重力発生装置作動、減速します。
地表到達までの時間をカウントダウンします。
20……、
10……、
……5……、
4……、
3……、
2……〉
ぶわり、と体が引き上げられる感覚のあと、視界を流れていた世界はゆったりとした景色へと変わる。
足もとには小さな泉があった。
〈1……、着水します〉
重力を取り戻した途端、次は水中へと引きずり込まれる。
溺れる! と、もがくがスーツ内は酸素が供給されるのを思い出し、落ち着きを取り戻すとゆっくりと岸をめざした。
水面に上がり、水面に映った姿を見て、生き返った後、初めて自分の姿を確認した事に思い至った。
そこに映った自分は、全身黒ずくめで頭に至ってはまるで黒い壷でもかぶったよう姿であった。
陸地へと上がり、再びその姿を確認するが屈折か、反射か、それとも角度が悪いのか、ひどく自分が小さく見えた。
〈製造工具を起動します。濡れた分の水分を分離します〉
一瞬。足下に水がぱしゃりと落ちると、全身を濡らしていた水は無くなり乾いていた。
「うわぁ、何それ便利すぎるー」
〈マスター、三つ報告があります〉
「あ、はい」
〈一つ目、母船とのリンクが切断されました。転送機能などは今後使用できません。
二つ目、マスターが――〉
「ちょ! ちょ! ちょっと待て!
どゆこと? 待て待て待て、情報を整理させて。
……まず、母船て何? リンクが切れるとどうなるの?」
〈現在、ウス文明にて使用されている最新鋭の深宇宙探査船をコピー、準備させて頂きました。
リンクが切断された事により母船への通信、帰還が不能となり、マスターの衣食住及び装備の補充に支障が発生します〉
さっきまでいた場所は宇宙船の中だったらしい。
そして、装備品と聞いて自分が持ってきた武器を思い出す。
「……今後しばらくは、ロマン武器だけで切り抜けろと?」
〈そうなります〉
まぁ、武器を使用する状況というのが予想できないので、荒事は回避するように動けば問題ないだろうと判断する。
「よし、次の報告よろ」
〈マスターが縮みました〉
「……はぁぁあああ!? どゆことー!?」
〈地表に転送される際、この世界を覆うアストラル層と呼ばれる特殊な大気層に阻まれました。
そこで一旦、肉体が分解しかけましたが、この世界の管理者の介入により一命を取り留めました。
この時の影響により、現在三歳児なみの肉体になっております〉
先程、水面に映った姿は見間違えではなかったのだ。
「この星の大気は呼吸可能?」
〈はい、可能です。周囲の大気に含まれる有害な物質も基準値以下です〉
「ヘルメット! これ、どうやって取るの?」
〈収納します〉
そう言うと、ヘルメットは顎の部分から折り畳まれてゆき、襟部分に収納される。
風か頬をなでる。初めて吸ったこの星の大気は森の香りがした。
髪がヘルメットの展開に邪魔にならないようにするためか、インナーとしてフードを被っていた。
水面を覗き込みながらフードをとると、顎のラインまで伸びた黒髪がこぼれる。
水面にはショートボブにアホ毛が一本伸びた美少女が映っていた。
「こ、これが……あ・た・し?」
思わず両手が股間に伸びる。
返ってきた反応から息子の生存を確認でき、胸を撫で下ろす。
もう一度、水面を覗き込むと、今度は大きなワニのような顔がそこにはあった。
呆けて見つめていると、その大きなお口がゆっくりと開いてゆく。
「お?」
次の瞬間、バレルロールを決めながら飛びかかってくる。
横向きに咬みつこうとしたその大顎だったが、閉じられる瞬間、ヘクスマップ模様の青白い光の壁に阻まれた。
〈これがシールドです。この程度の攻撃ではびくともしませんのでご安心下さい〉
いまだに噛みつきを諦めないワニを見ながら陣平は決意した。
「よ、よーし、パパ鉄砲うっちゃうぞー」
腰のホルスターからニードルガンを取り出すと目の前のワニに向って構える。小さかったはずのグリップは今の手ではかなり大きく感じられた。
喉の奥に狙いを定め、引き金を引く。
パスッ! と小気味よい音を立てて発射された弾はワニの口内に着弾する。弾は上顎から後頭部に抜け血や肉片をバラまく。
「うわぁ、グロいわぁ」
絶命したワニは背中から水面に落ち、泉の中にゆっくりと沈んでいった。
〈ヘルメット着用時は、射線や着弾点を表示できますので今後はそちらもご活用ください〉
はーい、と返事をしながら銃をホルスターにしまう。
「ところで三つ目の報告はなんだったの?」
〈はい。救難信号を受信しました〉
とりあえず初日の連投はこの辺にしておきます。
誤字が多すぎて……。チェックと修正だけでかなり時間取られますね。
スマホで書いてるんですが、予測変換機能が荒ぶっておられる(汗
書いてるときにチェックしてるはずなんですけどねぇ。