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第27話 燃えよジン

短いです。

 ジンの朝は早い。

目を覚ますと顔を洗い。上半身裸になるとバスタオルで寒風摩擦にラジオ体操。


「腕を前から上にあげて 大きく背伸びのうんど~ぅ」


次は朝食の準備だ。メニューは全く増えていない。いつものパン粥だ。

 スープが出来上がる間に語学の勉強だ。


「さいた さいた さくらが さいた あかい あかい ひのまる あかい」


かなり話せる単語も増えたが、日本人特有の外国語アレルギーなのかいつまでたっても発音が上達しない。一歩先を行かれたイルが先生なのがちょっと悔しい。

 次に魔力を練る訓練だ。朝は軽めに太極拳もどきである。未だ魔力が動く気配はない。


 スープが出来上がると堅パンを砕いて入れる。器はない、鍋のまま頂く。

味は香辛料のおかげか美味しいのだが、さすがに飽きてきた。狩りでもして焼肉と洒落こみたいがこの辺のお肉は軒並みグールさんが美味しくいただいてしまっている。


 グールグールグール。いい加減飽き飽きだ。今だって離れた所からグールがこっちを見ている。階段を登りきった所からこっちをジッと見ている。もう後ろから押すグールもいないのだろう。

 この都市のグールのほとんどが今、ジンの足元で蠢いていた。

 二十メートルの高さから落ちれば死ぬだろうと思っていたが、時間が経つにつれ死体をクッションに生き残る者が増えだした。


「この街のグール、これで全部かな?」


<八七%がこの広場にいます。あとはマスターに足を撃ち抜かれた者などが街に散らばっています>


「あー。そういうのもいるのか」


 足元で蠢くグールを眺めながら、今後をどのようにするか思案する。正直言ってジンにとってグールは脅威足りえない。なぜか垂れ流される涎がシールドを通過してくるのが嫌なくらいだ。


「イル、隣に今いる足場と同じような物を作ってくれ」


 一メートルほど離れたところに同じような足場が出来上がる。ひょいと飛び移ると次に地面に伸びる細い階段を作る。しばらくするとその階段を伝って一匹のグールが登ってくる。立ち向かうは上半身裸の幼児。


 眉間に皺を作り口角を上げ顎を突き出す。半身に構えるとテンポよくフットワークを刻む。時折左手の親指で鼻の頭を擦るのを忘れない。


「フォ~ ホァ~ア チョォ~」


グールはヨタヨタと駆け寄ると両手で掴みかかってくる。それを僅かな動きでかわすと懐に潜り込み

腹部に掌底を叩き込む。シールドが発生するとグールを足場から弾き落とす。

 落ちたグールに向かって静かに合掌。顔を上げると次のグールが登ってきた。

今度は掴みかかる手を払いのけ続ける。隙を見て突きを繰り出すがリーチが違いすぎて届かない。

仕方なく懐に潜り込むと水面蹴りを脛に当てる。体勢を崩し前かがみになった所に飛び蹴りを当て場外へと吹き飛ばす。


 しばらくグール相手にカンフーごっこを続けていたが、一〇匹もすると飽きてしまった。

 一旦階段を崩し、鐘のある足場に戻る。スーツを着込むと事態を改善するべく思案にふける。


「ティンときたってばよ」


 まず隣に作った足場を消し、範囲内に散らばるグールの死体を分解、消滅させる。そして一〇メートル先にグール一人が登れるだけの階段を作る。階段を登り切った先には何もない。上ってきたグールは後ろから来たグールに押し出されて落ちるだろう。

 さんざんやってきた罠の応用だが位置エネルギーは馬鹿にならない。頭の悪いグールぐらいにしか効果はないだろうが。


 ジンはグールと会った当初、どう戦うか悩んだ。高台に陣取り狙撃を行うも、射程の短い銃では効率が悪すぎた。そこでジンは冒険者たちのことを思い出した。彼らは数の差を罠で覆して見せた。しかしジンには機械的な罠の仕組みなど分からない。考えに考えてたどり着いたのが落とし穴だった。


 お昼頃になると足元がグールの死体で埋まり始める。死んだそばから分解していく。あまり効率は上がっていない。相手は一度罠にかかり手足を損傷しているものがほとんどだ。ゆっくりとしか階段を上ってこない。中には途中で転げ落ちる者もいる。

 見た目だけなら阿鼻叫喚の地獄だが、奴らは声を出さないので静かなものだ。ニチニチと肉の擦れる音が聞こえてくるぐらいだ。


 日も高く上り、ジンはお昼ご飯を食べていた。そろそろコルテアで買い集めた保存食が尽きる。この先、どこかで補給を考えないといけないが、人里が近くにあるとは思えない。ここに辿り着くまでに3つの都市、一〇の農村を見つけたが、どれも廃墟で人影など見当たらなかった。食料品も漁ったが見つけられたのは塩とワインぐらいなものだ。この体になってからは、どうにも酒が美味しく感じない。本当に幼児になってしまっているのだろうか。なので持ってきたのは塩ぐらいだ。


 モグモグと溶かしたパンを咀嚼する。完全に溶かさないで固い部分を少し残すのがジンの好みだ。

一〇メートル先のグールと見つめ合いながらの食事はあまり美味しいものではない。


 しばらくグールと見つめ合っていたが、そのグールがゆっくりと崩れ落ち、階段の上から転げ落ちる。その頭には太矢(ボルト)が刺さっている。


「ジン! 無事か!」


外壁の上からクロスボウを構え、顔を覗かせていたのは盗賊のカルロだった。

投稿頻度落とします(´・ω・`)

次回は17日に投稿します。

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