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第26話 王都ゼノア

「なんか書いてあるね」


ジンは脱出ポットの周囲をぐるりと回り、その文章を発見した。それはポッドの外殻に小さく書き込まれていた。手書きであるらしいその文字は丸みを帯びてなんだかかわいい感じに見えた。


 <読み上げます。


 同胞がこれを発見することを祈ってここに記す。


  "公爵"の乗ったシャトルに突入するも

 貨物ブロックに閉じ込められてしまった。

 その後、何が起きたのかはわからない。

 シャトルが艦を出た直後のことだ、地表接近警報が鳴った。

 とっさに脱出ポッドに乗り込めたのは幸いだった。

 分解するシャトルから放り出された私は

 何とか地表に着陸することができた。

 私は"公爵"を追いシャトル墜落地に向かう。

 奴のことだ、死んだとはとても思えない。


 銀河自由同盟歴三二八年一三月二四日

     士官候補生 リウル=グラン


 以上になります>


 生存者がいることは確かだ。眉根を寄せ情報を整理する。

生存者は確定が1名。もう一人いる可能性がある。一人は軍人。もう一人はよくわからないが反政府的な存在か、犯罪者か、反乱者か。いずれにしてもトラブル臭がする。

 生存者はシャトルを追ってすでにここにはいない。


「他に情報はないかな?」


<文字媒体、データ類は見当たりません。発信されていた信号ですが救難信号でした。発信装置が故障したようで、応急修理をして発信していたようです。そのため微弱な信号しか送れなかったようです。その他に読み取れる情報は見当たりません>


「情報が少ないね。トラブルの予感しかしないけど、追うしかなさそうだね」


 この世界でSF世界の軍人が暴れるのも良いことに思えない。生存者は相反する存在のようだがどちらが善でどちらが悪かもよくわからない。判断材料が少ない。とにかくどちらかでも見つけることが先決のようだ。


「シャトル墜落地点へ行こう」


<ルートを表示します>



◇◇◇



 旧ゼノア王国、王都ゼノア。ジンがこの地に辿り着いて三日になる。

 おびただしい数の白骨を踏みしめ、廃墟を彷徨う。

 もう何体のグールを殺したのか分からない。

 王都の城門をくぐる前に、いつものように大穴の罠を仕掛けた。

 三つも作ったその穴はすぐに埋まった。


 グールの身体能力は人間並みしかなく、知能は極めて低い。日中は視覚が極めて弱いらしく聴覚と嗅覚に頼って行動する。動きは緩慢で攻撃手段は噛みつきか腕を振り回すだけだ。しかし、夜になると豹変する。その動きはまるで猿のように素早く、力も人間以上に出せるようだ。


 ジンは日中は探索に当て、夜はなるべく堅牢な建物を選び身を潜めた。


「今日、通った場所に"訓練生"の痕跡は無かった?」


<ありません>


「この街の未探索領域はあとどれくらい?」


<あと一七%です>


 この都市に入った初日、町の一角でエネルギー兵器による戦闘痕を発見した。十中八九リウル士官候補生の痕跡であろう。無事、この都市を脱出し移動しているなら良いのだが、その痕跡も見つからない。死体になっているなら装備品の反応ぐらいあるだろう。

 未探索領域を片付けたらさっさとこの都市を出よう。そう考えながらバイザーにこの都市のマップを表示し、オレンジ色に塗りつぶされた未探索領域を見つめていた。


 その時、メキメキと派手な音を立て天井が崩れる。

僅かに空いた穴からグールたちが零れ落ちてくる。


「まったく、飯食う暇もないのかよ!」


 腰から素早く銃を抜くと、ろくに狙いもつけず乱射しながら後退。壁際まで来ると壁に穴を開けて部屋から脱出する。今いる場所は四階建ての建物の最上階だ。外壁に足場を作りながら隣の建物に移動する。


「もう、頭きた。あいつら殲滅します」


 そう宣言しながらも空腹と眠気が限界なので新しく拠点を構築しながら今日はもう休もうと考えていた。周囲の建材を分解、再構成しドーム状のシェルターを作ると干しリンゴを水で流し込み就寝。


 翌朝、床に穴を掘って部屋から脱出。一路、中央広場を目指す。

大通りに出ると立ちふさがるグールたちに乱射しながら駆け寄り、その足元をスライディングで抜けると素早く立ち上がり再び走り始める。

 広場までたどり着くと、今度は外周に沿って走る。走るそばから高さ二〇メートルの壁が次々とせり上がる。厚さ二メートルもある一枚レンガの壁である。一周走り抜けると広場はぐるりと囲まれ、閉鎖空間が生まれた。

 内部に取り残されたグールを始末すると次はこの壁を罠へと変えるための作業に取り掛かる。

まずは円の中央に高台を作る。広場の中央には石造りのステージがあった。いつか見た処刑の光景が思い起こされる。

 一度首を左右に振ると記憶を振り払い、ステージの床を軽く二回蹴る。するとそこには高さ二〇メートル、直径五メートルの円柱が立ち上がった。その円柱の外周に沿って螺旋階段のように足場が突き出しておりそれを伝って上に登ることができる。

 ステージに隣接して建てられていた銅像から鐘を作り頂上に設置する。頂上には火を焚くための竈も設置してある。

 次に広場を歩き、この都市から人がいなくなったために生えてきた木々を分解し薪に変えていく。

この薪も頂上に運び込むとおおよそ準備はできた。

 次は最後の作業だ。外壁まで来ると、これに足場を作り上へと登る。上り終えた足場から消していく。降りるときは飛び降りて半重力発生装置にお任せである。

 頂上に着くと円周に沿って全力疾走をはじめる。通り過ぎた後の頂上は内側に向かって鋭角な斜面が作られる。次ここを通ろうと思ったら内側に足を滑らせてしまうだろう。

 そして、壁の外側に八ヵ所、頂上まで登れる階段を作っていく。一周走り終えると頂上から飛び降りる。半重力発生装置で軟着陸すると、素早く態勢を整え中央の円柱へと走る。

 後ろを振り向くと早くも階段を登り切ったグールが後続に押され頂上から身を投げていた。

円柱を駆け上り、階段状の足場を消す。これでもし生きて着地できたグールがいたとしても登ってくることはないだろう。

 ジンはどっかりと腰を下ろすと鐘の(ぜつ)から伸びたロープを揺らす。これで神社の鈴のように鳴らすことができる。時々鐘を鳴らしながら竈に火をくべる。もう陽は中天に差し掛かっていた。やっと朝食である。


初評価頂きました。ありがとうございます(人´∀`*)


自分では下手な文章だと思っていたので、文章に4ptも頂けたので悶絶しております。

早く論文調を抜け出せるようにこれからも精進してまいります。

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