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第20話 パーティー編成

※誤字修正しました。

 帰り道にカルロからねだられてショートボウを二張りに矢を二〇本、矢筒まで作ってやった。それを見たロドヴィコも俺にも頼むよと言ってきたのでこちらにはレギュラーボウを一張り、ついでにニコロにも予備にともう一張り作ってやった。


「今日は遠距離の攻撃手段があれば最初にもう少し数が減らせたと思うんだ」


ロドヴィコの一言にカルロも頷く。


「当たらなくても牽制ぐらいできるだろうし、ヴェラの魔法は強力だけど数で責められたらどうしようもないからな」


「わ、私も弓もとうかしら?」


「やめとけ、仲間射って終わりだ」


 街が見えてきたあたりで門が閉められるまで弓の練習をすることになった。ショートボウは二張り作っていたのでヴェラも挑戦してみることとなった。


 クラフターで土をいじって的を三つ作り、矢も六〇本ほど追加で作ってやった。

 ニコロを先生に練習をはじめる。

ロドヴィコはさすが戦士と言ったところか、しばらくすると的に当たりはじめる。カルロも三〇メートル位なら的に当たりはじめた。ヴェラは一メートルなら的を外すことはなかったが、一〇本目で指を切ったので、その後は文字通に指を咥えて見ていた。


「なかなか難しいな」


カルロはなかなか良い筋をしていたが、距離が開くと途端に当たらなくなることに少し苛立ちを覚えていた。


「今、練習はじめたばかりで的に当てられたら僕の立つ瀬がないよ。でも、そうだな、クロスボウなら初心者でも的に当てられるかもね」


「クロスボウ ざいりょう たりない てつ ほしい」


「鉄がありゃ、作ってくれるのか?」


「くずてつ できる」


「屑鉄で良いのか?」


ジンは大きく頷くことで返した。


「クロスボウが屑鉄だけで作れるなら、相当安くつくんじゃないかな? 買うと剣並みに高いしね」


「だな。じゃ、早速帰って屑鉄集めなきゃな」


 陽は西の稜線に姿を隠し始め、空を赤く照らし出していた。弓の練習は早々に切り上げることにし、屑鉄集めと装備の買い出しにと、町に帰ることにした。弓の練習結果は、ロドヴィコは本物の矢を仕入れ、常備することとなりカルロはクロスボウに期待するらしい。生兵法でフレンドリーファイアは避けたいようだ。ヴェラは皆にお前は魔法があるだろうと慰められていた。

 

 町に着くとジンは姿を消して門をくぐった。節約は大事である。

 途中、鍛冶屋をめぐり矢を仕入れたり屑鉄を集めながら冒険者ギルドに帰る。

 冒険者ギルドに着くと打ち上げである。ジンは皆からの奢り、カルロは皆からのツケである。

 今後の方針として、あと三日ほど森を捜索しゴブリンがいないか確認する事にした。報酬は出ないがジンも付き合うことにする。食事代はパーティーから出してくれるらしい。

 その後、ヴェラと話し合い、取れた一〇個の魔石のうち、七個をジンが貰えることとなった。


 一段落着くと、一旦冒険者ギルドの裏手に周り、人目がないことを確認すると屑鉄を再生する。

 バックパックに金属を詰めると結構な重さになった。

 ジンは今日、弓を練習した場所に明日の朝に集合と告げると、フラフラしながら夜の闇の中へ消えていった。





 翌朝、冒険者たちは約束通りに弓を練習した場所に向かった。

 するとそこには一軒の小屋が建っていた。小屋と言ってもちょっと小さい。これを建てたのがジンであることは明白である。

 取り敢えずロドヴィコがノックしてみたが、まるで返事がない。

 扉にドアノブは無い。よく見るとスライドドアのようだ。

 今度は少しばかり強くノックすると、なかから「うぃー」と返事があった。

 ひとまず安心した一行はしばし待つと、ガラリと戸をあけて黒い小僧が顔を出す。

 その顔は朝日が眩しいのか半目に涙目で、腹をボリボリと掻きながら出てきた様はまるでおっさんである。


「カルロ これ」


そう言って小屋の中から何かをずるりと引き出す。


「これ、クロスボウか?」


見た目はほぼクロスボウだが、冒険者たちには見たことのない部分があった。それは曲銃床すなわちライフル銃などに見られるストックである。ジンがカルロに少しでも狙いやすくなるようにと考えた結果である。


「こう構えるのか? あぁ、これ肩に当てるのか」


クロスボウは見たことがあるので似たように構えてみると銃床がしっくりと肩に当たる。


「その肩当は初めて見るけど、ライトクロスボウだね。ジン、分かってるじゃないか」


ニコロの評にサムズアップで答える。


「前のほうに鉄の輪っかがあるだろう。それは(あぶみ)。そこに片足を入れて弦を両手で引き上げるんだ」


カルロはニコロに言われるがまま、片足を鐙に入れて弦を両手で引き、弦受けにセットする。


「ライトクロスボウのライトって何?ヘビーとかあるの?」


杖を握りしめヴェラが聞く。昨日、弓で馬鹿にされたので少しクロスボウに期待していたのだ。


「ライトってのも俗称なんだろうけどね。テコの原理を利用した"ヤギの足"って道具を使って弦を引くのがヘビーかな、ヘビーって呼ばれるのには他にも違う仕組みのがいくつかあったりするけど。手で弦が引けるやつは大体ライトって呼んでるね。歯車なんかの機械を使って弦を引く、クレインクライン・クロスボウってのもあるよ」


ふぅんと聞くだけ聞いて興味なさげなヴェラである。機構が複雑に見えて壊してしまいそうだなと、ちょっとあきらめ気味だ。


「ちょっと試し射ちしていいか?」


カルロに言われ、昨日と同じように土で的を作る。

矢はボルトと呼ばれるクロスボウ専用の矢を昨日のうちに仕入れてある。それをセットし狙いを定める。

 的は三〇センチほどの外円と中心に一〇センチほどの内円を描いている。

三〇メートルの距離から三本射ってみて三本とも中心円は外したが的には命中している。


「弓よりは格段に狙いやすいな」


「まぁ、射てるまでに時間がかかるのと、曲射は難しいのがあるから使い勝手は絞られるけど、威力は高いし狙いやすいし、カルロは筋もいいし、使うのには僕は賛成だよ」


「良し、ちょっと頑張ってみるわ」


射った矢を回収しに行ったカルロとニコロを暫し待つ。ジンはロドヴィコの裾をクイクイと引っ張った。


「ロドヴィコ つくた あげる」


そういうと小屋からジャラジャラと鉄の塊を引きずり出す。


「チェインメイルじゃないか!」


「きのう てつ あまり つくた」


ロドヴィコはチェインメイルを広げると天に掲げ子どものように喜ぶ。


「これ、本当にもらっていいのか?」


コクコクと頷いて返す。こんなに喜んでもらえるとは思っていなかった。

 ロドヴィコは革鎧を脱ぎ捨てると早速チェインメイルを着込んでポーズを決める。


「どうだ? 似合うか? 帰ったらサーコート買わなきゃな!」


「さーこーと?」


「あぁ、鎧の上からばっさりと被る布だ。本当は紋章なんかを入れて自分の家格を示したり敵味方を判別したりするのに使ってたらしいんだけど、俺たち冒険者の場合は草木の枝なんかにチェインメイルが引っ掛けたりしないように上から羽織るのさ」


世界史の教科書にあった十字軍のイラストを思い出し、あぁあれかとジンは納得した。


「つくてみる」


早速クラフターで布を作る。頭を通す穴をあけただけの長方形の布だ。


「おおお! 純白とか格好良すぎる!」


渡されたサーコートを早速着込み、剣をつっていたベルトを一旦外しサーコートとチェインメイルの上から巻き直す。


「うお、騎士様っぽくなってんな」


矢を回収したカルロとニコロが合流した。


「みんな装備、一新だね」


「ジンちゃん! 私も何か欲しい!」


「お前、一戸建て貰っただろうが!」


 はじめて彼らに出会った時の悲壮感はもう無かった。

 もう一度、身に着けた装備等を確認すると、一行は再び森へと挑む。

会話を多めにしてみました。

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