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第2話 お前を消す方法

誤字が多すぎる(汗

 視界が一面、白く塗りつぶされた。

それは一瞬のことで、気がつくと白い円筒形の空間の中に立っていた。

天井は三メートルほどであろうか。周囲は半径五メートルほどで、壁面に人が通れるぐらいの扉が一つだけあった。


〈サポートシステムを起動します〉


どこからともなく声が聞こえた。どこかにスピーカーがあるのか、どこか機械的な女性の声だ。


〈対環境防護スーツを展開します〉


 全身を黒い砂粒のようなものが覆い出す。それは少しづつ量を増し顔までもスッポリと覆い尽くした。

どれくらいそうしていたのだろうか、実際には一分に満たない時間だろうが思わず息を止め、目を瞑ってしまったために体感では数分に感じられた。


 ぶはぁと止めていた息を吐き出し酸素を求める。

目を開き両手で顔を覆おうとしたがその手は顔に届くことはなくガラス板のようなものに阻まれる。

ヘルメットのようなものを被らされているらしい。顔の前まで来ていた両手も黒いレザーともラバーともいうべきものに覆われていた。

体を捻り視界の届く範囲を確認すると全身黒ずくめでプラグスーツのようなものを着せられていることがわかる。


「これは……」


〈ご挨拶が遅れました。はじめまして、サポートシステムです。これよりマスターであるあなたのあらゆる面でのサポートを担当いたします。よろしくお願いいたします。〉


「えっと、よろしくお願いします?」


〈お困りの際はいつでもお呼びください。

 私はマスターの中にナノマシンとして存在している人工知能です。あなたのそばを離れることはありません。ただし基本は音声入力となります。ご用命の際は声に出してお願いします〉


あなたの中にいると言われ、思わず体のあちこちを手で抑えてみるが返ってくるのは厚いゴムのような感触だけだった。


「えっと……。そうだ君のことはなんて呼べばいいんだ? サポートシステム?」


〈パーソナルネームの設定はありません。必要ならば設定をお願いします〉


 名前かぁ、と考えてみるもののゲームなどで名前をつけるときは余り考えもせず適当につけていた。

しかし相手は高度な知能を持ちこれから長い付き合いになるかもしれない相手だ。ここで適当に名前を付けてしまっては後々後悔しそうな気がした。腕を組み考えること数分。


 散々悩んだ末にたどり着いたのは若かりし時に煩わされたイルカのキャラクターだった。おもわず、お前を消す方法とか聞いてしまいそうになる。しかし、そのままだと男みたいな名前なので一文字削ることにする。


「よし! 決めた! 君の名はイルだ!」


〈はい。以後イルと呼称します。

 それでは地表に降りる準備をしましょう。一旦、備品庫に転送します〉


一瞬まぶしい光に包まれたと思ったら所狭しと色んな物がおいてある倉庫のような場所に立っていた。


〈では、装備品についてのガイドをはじめます。

 まず最初にル・アト由来の装備品についてご説明します。ル・アト由来の装備品は三点あります。

 一つ目は製造工具。材料と知識さえあればあらゆる物を製造可能です。

なにか製造の際は私もサポートが可能ですので必要なときはいつでも仰ってください。

 二つ目はシールド発生装置です。危険と判断される脅威から自動的に障壁を発生させ防御します。高い防御力を誇りますが、限界はありますので油断されないようお願いいたします。

 三つ目はアポーツ装置です。これは、あなたにユーザー登録されている物品を遠隔地からでも一瞬で取り寄せることができます。必要な際は私に仰ってください。

以上の三点はすでにあなたの体内に内蔵されています。〉


 体内に内蔵されていると聞き、慌てて全身を触ってみるが返ってくるのは厚いゴムのような感触だけだった。


〈次に他の装備品についてご説明します。

 今この倉庫内にある製品はすべて現在ウス文明で流通しているものです。

 ウス文明は現在ル・アトが確認している文明では最も安定して発展しています。局地的、不安定的に発展している文明は他にもありますが、汎用性の高さとあなたたち地球人と体型が近いことからウス文明を選びました〉


 淡々と続く説明に理解が追いつかず、思わず待ったをかける。

 ゆっくりと周りを見渡す。


「なぁ……、これらを使って俺が良からぬことをするとは考えなかったのか?」


〈もしもの場合はル・アトが責任を持ってあなたを消去しますのでご安心ください〉


 背中に氷柱でも突っ込まれたような悪寒がはしる。


「そ、そいつは安心だね。ははは……」


〈あなたと似たケースは過去に数例存在しますが、今までル・アトが介入した例はありません。

 文明レベルの差をご心配されているのかと思われますが、過去にはこれらの装備をもってしても殺害された例があります。油断なされないようご注意ください〉


「ちなみに、そいつはどうやって死んだの?」


〈言葉巧みにだまされ自殺に追い込まれたようです〉

 

 俺を消す方法はいくらでもあるってことか、と独りごちる。


「オーケー、わかった。装備品の説明に戻ってくれ」


〈了解しました。では、すでに着られている対環境防護スーツの説明をさせていただきます。

 これはウス文明における深宇宙探索における基本装備で、軍隊でも特殊部隊が使用している防具です。

あらゆる環境に対応し、体温を一定に保つ能力があります。しかし限界はありますので恒星に飛び込んだりはしないでください。浅い溶岩ぐらいなら大丈夫です。無酸素環境下でも九六時間は酸素の供給が可能です。この他にも、反重力発生装置と光学迷彩機能が搭載されています。

 反重力発生装置はスーツにかかる重力をゼロからマイナスにする力場を発生させ浮くことができます。しかし、長時間の使用ができません。基本的に転落、墜落事故を防ぐ用途に使用します。連続の使用もできませんのでご注意を。

 光学迷彩機能は周囲の外観に合わせ不可視化させることが可能です。こちらは長時間の使用が可能です。しかし、この倉庫の物以外の物を身につけられた場合、その物品には対応しませんのでご注意を〉


なんとなく凄いことはわかったがどこまで耐えられるかの詳細はわからないので万能冷暖房スーツと思うことにした。

 説明書は困るまで見ない。それが陣平の流儀。


〈以上が基本装備の説明となります。

 それではオプション装備を選んでいきましょう。なにかご要望はありますか?〉 


 陣平は旅には何が必要かを考えた。まずはバックパックだ。生前、外人さんが町中ででかいバックパックを前にも後ろにも身につけて歩いているのをよく見かけた。今ならわかる。未知の惑星を探索するには必須アイテムである。日本も外国から別の惑星と言われていたし、日本人も自覚症状があったりするから困ったものだ。とにかく旅にバックパック。これは外せない。


「バックパックある?」


〈ガイドをはじめます。視界にルートを表示します。ルートに沿ってお進みください〉


すると視界に光の線が伸び倉庫の一角を示した。


〈このように、今あなたの着用している対環境防護スーツを通じてもサポートが可能です〉


 ネトゲのチュートリアルみたいだなと思いながらガイドに従い進んで見る。

 そこにはスポーツ用品店の登山コーナーのようにバックパックが揃っていた。その中から丈夫そうなボックス型のアタックザックを選ぶ。

 次にガンベルトをはめ、そこに円筒形の腰ポーチと小物入れになりそうなポーチ類をいくつか取り付ける。

 イルの勧めもあって非常食三日分とサバイバルキットを腰ポーチに入れ、水筒をガンベルトにつける。

 これで外見だけなら立派な探険家にみえる、かもしれない。

 いろいろと選びながら、これらを作ったウス人の事も話に上がる。ウス人は頭が一つ、手足がそれぞれ一対で指は五本という極めて地球人に近い形状であったが祖先は恐竜のような生物であり、地球人とはかけ離れた外見らしかった。銀河系から外へ出るほどの技術はないものの星間戦争ができるほどの高い技術力を誇るようだ。


「他に何が必要かな?」


〈必要になればまたここに帰ってくれば良いので、取りあえず地表に降りる事を考え、選択していきましょう〉


「武器はどうしようか。やっぱり必要?」


〈肉食の野生動物などが多数おり、現地人も武装していますので必要と思われます〉


 武器の並ぶ棚の列を見渡すと、そこには膨大な数の武器らしき物が揃っていた。

 戦争に行くわけじゃないし、長物を持っていって現地人に警戒されるのも嫌なので、イルに護身用の小型拳銃のようなものはないかと尋ねる。それならばこちらが良いでしょうと、示されたルート案内に従い進むと、拳銃のようなものが並ぶ棚にたどり着く。

 その中から小型のオートマチックピストルのようなものを手に取ってみる。


 「銃口ちっさ!」


 そこには直径二ミリほどの穴が開いていた。


 〈そちらはニードルガンになります〉


「レーザーとかビームとかじゃ無いんだ。実弾か」


〈そのような物も取り揃えてありますが?〉


 そうなの?と聞き返しながら手元のニードルガンのグリップ部分からマガジンを取り出す。


「うわぁ、弾、ぎっしりやぁ」


〈弾丸は直径二ミリ、長さ二五ミリの針状の物を電磁誘導で射出します。装弾数は九〇発。

 射程距離は五〇〇メートルから一五〇〇メートルほどです。

 空気抵抗の影響を受けやすく、大気圏内での使用では有効射程距離が三〇から四〇メートルほどとなります。

 小電力で駆動し、初速は秒速八〇〇メートルと高速ながら反動はほとんど無いという優れ物です〉


 一部わからない箇所があったものの、かなりの性能だということらしい。


〈低コスト・低反動という、電磁誘導分野では偉大な発明をした開発者でしたが、エネルギー兵器全盛の時代に実弾兵器を作るなどと馬鹿にされ非業の最後を遂げたそうです。

 現在ではロマン武器とされ、一部の愛好家の間で人気を博しています〉


「ロマン武器ってなんだよ! ……でも推進力とかに転用とかできなかったのか?」


〈すでにワープドライブがありましたので〉


 脱力感に苛まれながら、もうこれで良いやと思いつつマガジンを本体に戻す。見渡した限りこの銃が一番小さいようなのでこれを選ぶことにした。


「ホルスターとマグポーチ三つ、予備マガジン三つください」


 受け取った装備を身につけながら、他に必要なものは無いかと考えを巡らす、せめてナイフぐらいは持っていたほうがいいかと思い聞いてみる。


「ナイフとかある?」


こちらです。と案内された先にはそれほど種類はなかった。数種類のナイフの中から一つだけ変わった物を見つけた。黒いラバー製の円筒だけなのだ。


「これは?」


〈レーザー加工機と呼ばれる物の軍事用です。最大一メートルほどにレーザー光を固定しそれにより切断することを目的とした武器です。ウス人たちの銀河に住む小数民族が伝統的に使用している武器でウス人たちはあまり使用しておりませんが、高い切断能力を有しています〉

 

 ふぅん、と気のない返事を返しながらも内心は興奮していた。刃の出る向きに気をつけながらスイッチを入れると、糸のように細いレーザー光線が現れる。ちょっと想像と違ったが赤いレーザー光線を見て、暗黒面やでぇとか考えていた。柄頭にあるスイッチをいじると刃の長さを調節できた。一通りいじると専用のポーチを貰いガンベルトに装着する。


 武器はこれくらいで良いかと思い、他になにかないかと考えたが、これといったものが思いつかない。


「取りあえずこのくらいにして、一旦現地に行ってみよう。必要な物があったら取りに帰ればいいよね?」


〈はい、いつでも帰還が可能です。それでは地表に転送します〉


「待った。バスタオルある?」

 ニードルガンについてですが、マッハ2を超える初速ならソニックブームはどうなるんだよ!?

と思われると思いますが、ここでは細くすることで抑えられているというご都合主義で行かせていただきます。その代わり有効射程距離にもばらつきがあり、それを超えるとどこに飛んで行くかわからないという設定です。威力は小型拳銃並み.32 ACP弾ぐらいを想定しています。

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