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第19話 冒険者

※残酷な描写があります。

 ジンと冒険者たちは街を出ると森に入った。

森に入ると弓の材料となる木を探す。クラフターのスキャン機能ではすぐにイチイの木を見つけたものの少し分け入らなければならなかった。


 クラフターでレギュラーボウをつくり、弓使いのニコロに渡す。


「凄いね、ホントに作れるんだ」


 弦は自前のがあるらしく、周りの木々などを上手く使い器用に張っていく。

 一度ピンと軽く弦を鳴らすと、次は大きく引き絞る。感触を確かめて弦を調整しまた引き絞るという作業を三度繰り返し、矢筒から矢を取り出すと近くの雑木に射ち込む。


「いい弓だ。ホントに貰っても?」


 その問にジンは何度か頷くことで返した。


「ちょっと時間をくれ。仕上げる」


 そう言うとバックバックからいろいろ取り出す。

布に油を染みこませ、弓全体をこすり、弓柄に革を巻く。握り具合を確認すると、何度か弦を引く。


「取り敢えずこんなところかな。待たせたね」


 弓を一度高く掲げ太陽に透かして見ると、皆を振り返った。


「ジンちゃん、私、魔法使うのに一戸建てが――」


「ばかやろう」


 ヴェラのボケにカルロがツッコミを入れたところでゴブリンの探索を開始する。


 前日に遭遇した場所へ警戒しながら進む。先頭は弓使いのニコロ、すぐ後ろに戦士のロドヴィコ、真ん中に魔法使いのヴェラとジン、殿(しんがり)は盗賊のカルロの隊形をとる。

 ようやくファンタジー感が出てきたことにジンは興奮していた。

 目標のポイントより大分手前でニコロは停止の合図を出す。全員を集めると囁くように話しだす。


「危なかった。すぐそこにいる。数は八匹、恐らく昨日の奴らだろう。昨日二匹仕留めたか別行動しているか。どうする? まだ引き返せるよ?」


その問にはロドヴィコが応えた。


「もう、俺たちに後はない。ここで逃げ出したら、冒険者廃業だろ、やろう。」


その言葉に全員が頷く。


「少し下がって、転ばせるためのロープを何箇所かに張ろう。近づく奴から順にニコロが射って、抜けてきた奴を俺たちが担当する。ニコロは殺そうと思わずできるだけ多くに射ち込む。そうすれば臆病なゴブリンだ、逃げ出す奴もいるだろう。どうだ?」


カルロの提案にニコロは周囲を見渡す。


「簡単な罠なら仕掛けられそうだ。イケると思う」


「よし、それで行こう」


最後にロドヴィコがGOサインを出す。


 全員は静かに下がりながら罠を仕掛ける。木々の間には足元の高さにロープを張り、枝を短く切り先端を尖らせた物を地面に刺した。

 若干開けた場所に陣取るとニコロは弓を構え、ロドヴィコは盾を構え静かに剣を抜く。ヴェラは杖を握りしめ、ジンはヴェラに犬小屋を差し出す。カルロは顔を背け肩を震わす。


「ゆ、夢の、い、一戸建て、ふぇ」


カルロがツボにはまる。

皆、目が合うとくすりと笑う。


「はじめるか」


そう言うとニコロは弓を構えゴブリンがいた方に矢を射る。矢が届いたのか、先の方からグキャーとゴブリンたちの鳴き声がする。

 しばらくするとゴブリンが視界に入る。一射目、首に命中し一匹脱落。二射目肩に当たるも走るのをやめない。三射目、別のゴブリンの腹にあたり蹲る。

 ここで一匹が足を取られ転倒、転んだ先には尖らせた枝があり腹と目に刺さり痙攣する。

 更に一匹が転倒。無傷であったがそのゴブリンにニコロの四射目が胸に突き刺さる。

 ここまでで四匹が脱落、一匹が軽傷。一匹がうろたえ足を止める。

 無傷の二匹がロドヴィコに接敵するがうち一匹は突然転倒する。姿を消したジンが膝を裏から蹴り、転倒させたのだ。

 その隙を逃さずカルロがナイフで延髄を一突きすると激しく痙攣し起き上がらなくなる。

 ロドヴィコと鍔ぜりあっていた一匹も横からヴェラに杖で殴られ怯んだ隙を一刀に伏される。

 足を止めていた一匹は不利と見たか逃げ出すが、その背に矢を生やすことになる。

 最後に肩に矢を受けた1匹が勇敢にも飛びかかってくるが、ロドヴィコの盾で抑えられ、カルロに背を斬られ、つんのめったところに剣で首を一突きされると動かなくなった。


「怪我してる奴は!?」


すかさずロドヴィコが叫ぶが皆首を横に振る。


「油断するな、周囲を警戒しつつトドメを」


ニコロが気を引き締めさせる。

 ここでスキャンしたところ、まだ全員に生命反応があった。あれだけ刺されたり斬られたりしても死なないものかと、変に感心していた。

 ニコロとカルロが警戒、ロドヴィコが心臓を一突きにしていく。

 ジンは死亡を確認したゴブリンの死体をスキャン。魔石だけを取り出す。ゴブリンの魔石はパチンコ玉サイズのガラス玉のようだった。

 それをまず一つヴェラに渡すとロドヴィコの後について魔石を取り出す。


「便利だな。ゴブリンの魔石はへその下辺りにあるから、前やった時なんか腸を引きずり出して大変だったのによ」


 カルロは毒づきながらゴブリンの右耳を削ぎ落とす。これが討伐証明になるらしい。


「ちょっと来てくれ!」


遠くからニコロの声が響く。全員が駆け寄るとそこには二匹のゴブリンの死体があった。その死体は無残に食い散らされていた。


「昨日、俺たちがやった奴か?」


死体を剣先でつつきながらロドヴィコが呟く。


「弱ったから喰っちまったってか」


カルロは呆れながらもその死体から耳を削いでいく。

 ジンは周囲をスキャンし転がっていた魔石を見つけると回収した。


「まだいると思うか?」


ロドヴィコは剣をボロ布で拭いながらニコロに聞く。


「どうかな、おそらく狩りのための小集団と思う、全員オスで子どもも居ないようだからね」


「なんにせよ一旦引き返さないか?今なら日があるうちに街に戻れる」


カルロの提案に全員が頷く。

仕掛けた罠を回収しながら帰路につくことにした。


久しぶりの戦闘シーンでした。あまり戦闘をメインに捉えていないので、あっさりめに書こうとしているんですが、はたして伝わっているのかが心配です(´-ω-`)

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