第12話 はじめてのおつかい
残酷な描写があります。
※誤字、脱字等訂正しました。
翌朝、今日一日を旅の準備にあてることをダニオ一家に伝える。
「きた にし まち じかん?」
「北西の町なら領都コルテアでしょう。馬なら半日、徒歩なら一日と言ったところでしょうか」
おそらく、ダニオ家の馬車での時間だろう。一頭引きにも関わらず家族三人と荷物を載せて何時間も進むことができる。パワーと持久力は凄いがスピードは人の足より若干早いくらいだ。
「あるがと かう いてきます」
ご飯をどうするか聞かれ、屋台で済ます事をなんとか伝えた。
ダニオ家を離れ一路冒険者ギルドを目指す。旅に必要な物なら冒険者ギルド界隈で見つけられるだろうとあたりをつける。
冒険者ギルドに着くと昨日と違い若夫婦風の二人が店を切り盛りしていた。この施設は一階が酒場で二階が宿泊施設になっている。宿泊施設は冒険者ギルド員しか利用できないようになっており、格安で泊まれるらしい。そんな泊まり客相手に朝の対応をするのが若夫婦なのだろう。
しばらく冒険者ギルドを観察していると出発する冒険者だろうか、背負い袋を膨らませ剣や斧を腰から吊るした一行が出てくる。
「お、昨日の妖精じゃねぇか」
昨日、目立っていたのかジンの事を覚えていたようだ。
その冒険者たちに保存食を売っている店を聞くと、この界隈の雑貨屋ならどこでも似たような値段で売っているらしいこと、干し果物が欲しいなら市に行ったほうが揃いやすいことを教えてもらう。
礼を言って別れると、近くの雑貨屋を目差す。
雑多な商品が山積みされた店を見つけ、軒先から覗いてみる。食べ物や箒など色々と揃っているようだ。キョロキョロと見まわっているとお店の人に見つかってしまう。
「あら、かわいいお客さんだよ」
恰幅の良いおばちゃんである。
カタコトの単語で保存食を買いに来た旨を伝える。
「それなら堅パンが一枚一〇スー、干し肉が五〇〇グラムで六〇スー、塩タラが一切れ五〇スーだよ」
ここに来てまさかのグラムである。
ジンの中でここが宇宙人による仮想現実世界説が首をもたげる。廃棄されてしまうのか、エビ反りで弾を避けるのか。
しかし初耳の単位、スーの存在によりその考えは霧散する。
金種ごとに小ポーチに分けて入れていたお金の中から大銅貨を一枚だす。
「すー?」
「おやおや、この国で買い物するのは初めてかい?
小銅貨一枚で一スーだよ、大銅貨一枚で一〇スー、少銀貨が一〇〇スー、中銀貨が五〇〇スーって感じさね」
一スーが日本円でいくらぐらいの価値なのかよく分からないのが気になるが調べる方法も知らないので考えることをやめた。
ジンはこの店で堅パン一〇枚、干し肉五〇〇グラム(厚切りを量り売り)、塩タラ五切れ、塩五〇〇グラム(粗く引いた岩塩)、スパイスミル(小さな乳鉢と乳棒)と各種別々に保管するためのカゴや袋を購入。
しめて五二五スーであったので中銀貨一枚と大銅貨三枚で支払い小銅貨五枚のお釣りをもらう。
値引きにチャレンジするもカタコトでは通じなかったのか、通じない振りをされたのか一スーも負けてもらえなかった。
雑貨屋を後にすると次は市を目指す。
場所が分からなかったがイルにスキャンしてもらい、人が大勢集まっている場所を探してもらう。
スキャンの結果、町の中央に大勢集まっていることがわかり、そこを目指す。
町の中央は広場になっており、沢山の露天がひしめき合っていた。しかし大半の人はさらに町の中央付近に集まっているようだ。
遠目で見るとステージがあるらしく、何か催し物でもあるのか人々はそちらに集まっていた。
人混みの足元を掻い潜り先頭まで来ると、ステージは常設なのか石造りであることが分かる。
舞台下手には四人の男、一人は立ち、三人は椅子に座っていた。舞台中央には輪切りにされた丸太が設置されていた。
立っていた男が舞台中央に歩み寄ると大声を張り上げる。
「罪人入場!」
すると舞台上手より薄汚れた男たちが手枷足枷をはめられて入場してきた。
ジンたちが捕らえた山賊たちであった。
舞台に座っていた男たちの中で客席に近い席に座っていた男が立ち上がり、羊皮紙の巻物を縦に広げる。
「この者たちは先日、行商人に対し山賊行為を行い同行していた冒険者によって捕らえられた!
調べにより数多の余罪が発覚! 法に基づき死罪を言い渡すものなり!」
山賊の一人が舞台中央に引き立てられる。
集まった民衆から殺せコールが巻き起こった。司会であろう男が執行と叫ぶと座っていた三人の中の中央の男が立ち上がり、山賊に声をかける。
「最期に祈りの言葉を」
聖職者であるらしい、その男に山賊はつばを吐きかける。よくあることなのか慌てることなく懐から布を出すとつばを拭く。
一人の処刑人に丸太へ押し付けられるともう一人の処刑人が斧を振り下ろす。胴から切り離された首は三メートルほど飛んだ。
ジンはここまで見るとステージから遠ざかる。流石に見ていて気持ちの良いものではなかった。
遠巻きに人混みを眺めながらこの国の司法制度に思いを巡らす。昨日の今日で裁判に刑の執行まで行われていた。単純化されているのか、それとも雑なのか。大きな歓声が上がるたびに一人、また一人と首を刎ねられているのだろう。自分が裁かれるようなことになった場合を考えて背筋が凍る。きっと冤罪なんか当たり前なのだろうから。
しばらくして刑の執行が終わったのか、人々は散っていく。今、人が殺されていたのが嘘のように市には賑わいが戻っていた。
ジンは干し果物のお店を見て回り、その値段を見て買うのをやめた。良く考えれば生の果物を買って作れば良いのだ。スキャンだけして素通りする。
一つ八スーのリンゴを一〇個、小銀貨一枚で購入、お釣りに大銅貨二枚をもらう。
あとは市をブラブラと冷やかし、お昼時に羊肉の串焼きを1本購入。三〇スーを大銅貨三枚で支払う。
リンゴ一個に対して高いような気もしたがボリュームもあり、塩とハーブが効いていて美味しかった。この星に来て暫定一位である。
そこでジンは香辛料が気になり専門の露店を眺めるが、どの香辛料がどの料理に合うかなど全くわからないため購入は断念した。胡椒ぐらい欲しかったのだが見つけることはできなかった。
帰りしな、また雑貨屋に寄り、小さな片手鍋と小さなフライパンを購入。しめて一〇〇スーを小銀貨一枚で支払った。
「そいや、イル、この服のサイズとかどうなってるの? バックパックも縮んでない?」
久しぶりに使う日本語である。
〈はい。ナノスキン製の製品はクラフターを使わずともサイズ調整が容易です。スーツの方は体型を読み取り自動でサイズ調節を行います。武器のホルスターなどは武器に合わせる必要があったためそのままですが、そのほかは、可能な限り調整を行なっております〉
「そかー、ありがとね」
バックパックはリンゴ一〇個で一杯である。しかし、容積を増やそうと思えば可能らしい。
ダニオ家に帰ると食卓にリンゴを並べる。
対面にはベルナとダリアが座っている。ダリアは立ち歩いても大丈夫なのか心配になったが、仕事は無理でも歩くぐらいは大丈夫らしい。
「おさら こっぷ」
皿を二枚、コップを一つ借りた。皿には完成品と皮やヘタなどその他の部位、コップには水が入る予定だ。
「ジンちゃんなにをはじめるの?」
言われるまま皿とコップを準備しながらベルナが聞く。
「つくるます ほしくだもの」
事前にイルと打ち合わせしており、まずは一個、試しにやってみる。
リンゴが一つ、砂のように崩れると、それぞれの皿の上に一センチ角ほどの完成品と砂状になったその他の部位、コップには水が貯まる。
上手くできたようなので残りのリンゴも片付ける。
できたそばから、あら美味しいわねと、母娘に貪られるが寝泊まりさせてもらっているお礼と思うことにした。
全部干しリンゴ化してしまうと、残ったゴミを馬の所へ持っていく、元はリンゴ、無駄は出さない。
馬の前に差し出すと鼻息で吹き飛ばされた。お気に召さなかったらしい。
実はドライフルーツのことはよく知らないのです(;´・ω・)
某料理サイトに作り方とか出てたし、中世にもあるんじゃね?ぐらいのノリです。




