序次章 思考は単純、現実は複雑
「Yahoo!知恵袋で声優になりたい…検索っと…うわぁ…ちょっとこれは心に来ますなぁ…」
ネットで検索するとそれそれはひどいものだった。
「そんなもの目指しているならろくに稼げるようになってからにしろ」
「ニート乙」
「どうせ生半可な気持ちでしか目指してないんだろ」
そんな書き込みばかりで、まったくもって応援するコメントだったり書き込みなんかは存在しなかった。
確かにそうだ、ネットで「声優になりたいんですけど…それにはどうすればいいですか?」なんて書いてたら確実に叩かれるに決まっている。
それがその人を思ってのことか、それともただ単純に他人を叩きたいだけのネット厨なのかは別としてだ。
「僕は声優さんに会いたい!だから声優になりたいんだ!」
なんてこと言ってしまえば尚の事…
実際問題、不純な動機で役者なんて目指そうとするやつは覚悟もたりずロクなことにはならない。
じゃあどうすればいいのか…
どんな道を通ったりしてもまず一番の問題になるのが「金」の問題。
これは避けては通れない。
親を頼るのが一般的なのだろうがこれはちょっと個人的には嫌だった。
僕自身が子供だからというワガママもあるが、うちの親は「お前は公務員が向いてるから公務員になれ」が口癖なくらいに僕を公務員にしたかったらしい。
こんな親に「オレ、声優になりたいからが専門学校か、養成所行きたいんだけど…」っといったところで折れてくれるわけがない。
むしろ、「お前は県内で働きなさい。県内で公務員か会社員とかになったほうが絶対にいいから」と説き伏せてくるだろう。
まあこの程度で説き伏せられては声優なんて目指せるわけがないのだろう。
県内でもない、安定した職業でもない。
全くの正反対の職業を認めるわけがないのは最初からわかっているからね。
かと言ってこのまま会社員になったとすれば、確実に後悔しかしないのだろう。
そんなのは嫌だ。
これは自分の問題で家族や周りの人間に左右されない。
中学生時代の僕はこんな独りよがりを考えていた。
今からバイトをしたとして中学生ができるバイトってあるんだろうか?
「中学生からのバイトは基本的に法律で禁止されている…か」
これじゃさすがにお金を貯めるのは無理があるか。
というかその前にもし失敗して時にはどうやって生きていくのか…
「失敗を想定するな、成功するイメージだけを持て」
こんなことを言う人がいらっしゃいますがこれは正直なところ「成功者の感覚」であって成功したからこそ言えるのです。
成功したあとは何とでも言える。
「一心不乱の努力は必ず成功する」
こんなのは成功者の言葉からしか出てこないです。
だって失敗した人にはフォーカスが当てられることもなく消えていくだけなのですから。
努力したからといって確実に小説家になれるでしょうか?
いいえ、運が必要です。
ただ、最善の状態に持っていくことは可能でしょう。
その最善の状態というのはその人の状況次第なのです。
一心不乱に小説家を目指して良い人もいれば、バイトし、家賃を稼ぎ、節約をしながら目指す人もいる。
はたまた会社勤めをこなしながら、空き時間にネット小説を投稿し出版の機会を伺っている方だっている。
だから学生の方にはぜひ言いたいのですが「いまは勉強しなさい」
どんな職業を目指している方にも言えると思いますが、中学校なんて時期は思いつきでなんでもできます。でもそれが本当に正しく素直な気持ちかどうかは今のあなたでは判断するには経験不足です。
「備えあれば、憂いあってもどうにかなる」
このエッセイはまだ失敗も成功もしていない未熟者の自分が書いてるためそんなことを言える立場でもないですが…(笑)
さて中学校時代の僕はどう考えたか…
「自分の技能を増やそう!普通の人がなかなか経験できないものを経験値にしよう!」
それにはどうすればいいだろうか…
いまは中学二年生。
周りと違うこと…周りと違う進路…
ただ、単純に声優の学校行くだけではなんの備えにもならない。
もし失敗した時をシミュレーションしてみようじゃないか。
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「俺は声優養成所を出たあと2年間も仕事がなくずっとぼーとしている」
2年前に養成所を卒業した僕はその後仕事もなくバイトをしてなんとか生計を立てている状況だ。
そろそろ就職するか…
でもなんの技能もないじゃん俺…
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よし死ぬか――
GAME OVER…
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いあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
そんな未来は嫌だぞ!
俺の未来は「声優さんとキャッキャうふふ」なんだからよ!
いや…それは言いすぎか。
とりあえず就職するために有利な状況を作るためのなにかをすればいい…
就職率が高い…
就職率…
「ん……あそこって」
その時思い出したのが小学校の頃憧れた高校の一つだ。
その学校を初めて目にしたのは「NHK」で「ロボコン」を見た時だった。
「工業高等専門学校」略して「高専」
高専の就職率はほぼ100%を誇っている。
高専は技術者を育てる学校で、国立高専機構が運営している。
倍率もそれなりでそこそこ頭が良くなければ…というか今の自分だと先生に「厳しいかもね」と言われるレベルだった…
「そうだ、ここに進学して勉強すればもしもの時に就職に困らないかも…?」
安易な考えで自分が進路を決めた時だった。
ただ正直なところこの時点でなかなかの難関だったのだ。
「君の学力だったら無理なことはないけど…正直厳しいかも知れない」
この曖昧な言い方をしてくるところを見ると、結構無理なラインだということは自分自身でわかっていた。
それからは勉強する毎日。
当初の目標「声優さんに会いたい」という目標から「高専合格!」というのはあまりにかけ離れた事柄だったと今でも思う。
中学生ってのは単純に馬鹿だった。
でも、考えなしに動く馬鹿というのは意外に強いものだ。
英語は一日3時間!
一番大事な数学は一日5時間以上!
した…
いいえ嘘です。
はい、えーと全く勉強しませんでした。
正直なところまったくもって合格すると思っていなかったのです。
「どうせ無理だろうな…」
そんな気持ちにでしかいなかった…
でも、この小説のあらすじを読んでくださったかとならわかるかもしれませんが事実、現在進行形で「高専生」なのです。
もし受験に失敗した方がいらっしゃったら申し訳ないのですが、やる気は少しはない方がリラックスして試験に臨めるのかもしれませんよ。
絶対合格してやる。
絶対成功してやる。
こんな感覚は実際のところ傲慢なのです。
傲慢な人を受験の神様は合格させたいですか?
「神なんていないから落ちたんだ!」
そうでしょう、あなたの中のあなたが神様なのですから。
あなた自身が、自分を追い込んでしまっているから全力を出しきれないのです。
「もしよければ全力を出させてくださいな」
そんな気持ちで自分の中の神様にお願いできた人こそ本当に成功できたのではないでしょうか。
自分も成功というのはほとんどしたことがない劣等生でした。
結果を残そう、周りに恥ずかしくないように頑張ろう。
そんな圧力を自分自身が自分の体と心に大きな重石を乗っけていたのかもしれませんね。
「失敗してもいいや」
こんな気持ちで試験を受けたことはなかったです。
それまでは「英検」だったり「漢検」だったりは周りが優秀で必ず合格していましたから「自分も負けない」という気持ちが先行していました。
でも今回の入試は違った。
そういう気持ちで試験を受けれたのはとても大切な経験だったのかもしれません。
「やり直しは効くんだから」
ここで本当の決心がついたのかもしれないです。
「失敗してもいい、声優を目指してみよう」と…
この時の経験が今に生かされているのは確かです。
テストの時ノー勉で臨んでひどい点数を取った時のショックを抑えることができますから(真似しちゃダメすよ!)
実はこの執筆の数日後にはテストがあったりなかったり…
読者様はもちろん、テスト週間中ではありませんよね?
仕事中でもないですよね?(仕事中の方は今すぐ仕事に取り掛かってください!!!)
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今更ですが、「だす、である」口調のところは過去の自分。
「です、ます」口調のところは今見直して感じてみて読者の皆様に伝えたいことです。
エッセイというかただの回想と高専の宣伝じゃないかと思う方もいらっしゃるとは思いますがそこはお許し下さい。
ありのままのあったこと、感じたことを書きたいと思っておりますので。
それがみなさんの人生の糧なんておこがましことは言いません!
少しでも頭に残ってくれる文章になりますように…