ヒロイン登場? (1)
「おい、アレがそうなのか?アレが例の」や
「とんだ期待はずれだったな」「確かにw」
など後ろから声が聞こえてくるが、きっとオレの事ではないだろう。…うん、オレには関係ない。
オレは先ほどと同じ位置のテーブルの椅子に座っていた。
「適正職業なし。」
それが先ほど、カレンさんに言われた言葉だ。
どうやらオレは、1番基本的で最弱職な『見習い冒険者』にすらオレには資格がないらしい。
おっと泣くなクリハラユウキ。今ここで泣いても慰めてくれる人なんて誰もいないんだ。
って言うかオレをこの世界に送った奴は舐めてんの?
なんで、オレを送ったの?
オレはてっきり、オレには不思議な力があり、その力は魔王倒すための力的な感じかと思ったら適正職業なし。笑っちゃうわ
いや泣いてるけどね。
しかし本当にこの先どうしよう。
その秘められた力で衣食住はどうにかなると思ってたが適正職業なし。な為オレは冒険に出る資格すらない。
いや、あるにはあるのだがそれには条件が必要で、誰かとパーティを組むならば街の外に出てもいいらしいが、…コミュ障のオレには誘う勇気がない。
それにもう一つ
オレのレベルは、今は1らしい
しかしレベルが、上がるごとにステータスもあがる。
つまり、職業適正資格がレベルが上がれば出てくるかもしれない。
そのためには、やはり誰かとパーティを組まなきゃならない。
…クソ!やはり組むしかないのか
でも誰と?
「あーあ、誰かオレと組んでくれる物好きは居ないかなぁ」
オレがそんな事を小さく言ってみるが誰も声をかけてくれない。
ひどい!この街の冒険者はみんな薄情者だ!こんな、ザ・初心者を放っておくなんてこの人たちには血も涙も無いのか!
なんて可哀想な悲劇のヒロインを演じてみるが誰もきてくれない。
まぁ当たり前か
オレだって何の役に立つのかもわからない初心者をパーティなんかに入れたくない。それも自分から誘うなんて論外だ。
つまりもう残された方法は一つ。
やるしかないようだ。
ふふふ、ついにオレの真の力を発動する時
真の力とは!心を無にし、ただ決まりきったセリフを言うこと
何も考えずただ機械的にオレは近くにいたパーティの男たちにこういった。
「オネガイデス、パーティに入れてクダサイ」
少し棒読み感が強かったか?いやしかし、これだけ誠意を込めて頼めば街のヒーローであり守護者である冒険者が断るはずが…
「わりぃ、この後みんなでクエストに行かなきゃならないんだ」
そう言って断ってきた。
「そ、そうですか。ししし失礼します」
そのクエストにオレを連れてってはくれないのか?とかは野暮ってことだろう。
きっとオレにとってとても難しい、開始10秒とかで死んでしまうかもしれないクエストなのだろう。
だから、オレはいらないと言われたわけじゃない。
彼らは心配してくれたんだ。
オレが死なないか
だから泣くなユウキ
泣いても慰めてくれる人はどこにもいないんだから
その後もオレは若干棒読みが入りつつも誘ってみるが…
「この後予定があるから」だの
「うち人数がいっぱいだから」だの
話しかける前に何故か大きな声で
「さて、今日はもうお開きにしよう。明日は早いし」
などと宣言して、どっかに帰っていったパーティもいた。
どうしよう、詰んだ
職業無職の金なし、住む家なし、パーティメンバー0人
コレを詰んだと言わずして何という?
オレは昼休みに食べ損ねた弁当を、先ほどと同じ席で食べてると
「よぉ、兄ちゃん。パーティ募集してるらしいじゃねーか」
男4人組のいかにも中級パーティって言う人たちが話しかけてきた
神よ、感謝します
欲を言うならヒロインが1人欲しかったが、そんなことを言う権利はオレには無い
「ああああ、あのパーティを組んでくれるのですか?オ、オレはクリハラユウキです。職業はむしょ…」
オレが自己紹介してると
「あー、違う違う。組むのは俺たちじゃない」
と男は言ってくる
オレたちじゃない?じゃあ誰が。
オレがそんな視線を向けると
「ほら、あの娘だ。あのテーブルの端にいる」
1人の男が指を指す。
そちらを向くとオレとは真反対のテーブルに1人の女の子が座っていた
ヒロインキタァァァァ!!!
その少女は見た目は、多分オレと同い年ぐらいで、髪と目が水色でいかにも物語のヒロインと言う感じだった。
多分あの子がオレのヒロインだ。
と心の中で喜んでいると
「あの娘いつも1人でさ、最近ウチのギルドにきたんだけど話しかけてもコッチに全く反応してくれなくてさ」
1人の男が言ってくる
なるほど、つまりあの子とパーティを組み、冒険をし恋をし魔王を倒しそして結婚…
つまり、そういう事だな!
「わ、わかりました。さ、誘ってきます」
オレが言うと男たちは
「おう!頼むぜ兄ちゃん。」
そう言い背中を叩いてきた。
あ、なんか今の冒険者のやり取りぽかったかも
少し嬉しくなり、テンションが高かったオレはその子の近くの席に行き
噛まずにしゃべりかけることができた。
「ここここここんにちは。よよよかったらぼきゅとパパパパパーティを組みまままませんか?」
…コミュ障だもの。仕方がない
しかし女の子はオレが喋りかけてるのがわかったようでこちらを向き
「………。」
少しこちら見てすぐに元の見ていた方を向いた。
5分経過
今のは何だろう?もしや無視されたのでは?
オレの中で不安が出てきた。
最初はオレへの返事を考えてくれてるのだろう
と待っていたが、5分経過してもこちらを見向きもしないという事は無視か?
いや、もしかしたらこちらが何を言ってるのかがわからなくて困っているのかもしれない(現に噛み噛みだったし)
よし、それならばもう一度行ってあげるのが紳士の務めだろう。
オレは深く息を吸い
「こここんにちは!ぼぼ僕とパーティを組みましぇんか!」
うん!だいぶ噛まなかったし結構伝えたいことを伝えられた気がする。
そして
また5分経過
今度はこちらを見向きもしなかった。
この女は知っているのだろうか
無視をされた人間の辛さを
アレは5月の事だろうか
クラスで学級委員と言うのを無理やり押し付けられ、先生に
「渡辺さん呼んできて」
そう言われ、勇気を出し渡辺さんに話しかけたがガン無視
最初は聞こえなかったのかな?と優しいオレはもう一度話しかけるも無視
ど、どうしよう。
と困りつつももう一度勇気を振り絞りもう一度話しかけたら
「何かうるさくないー?」
渡辺さんの隣で喋てった女子が渡辺さんに言う
「ほんと、ウザくね?」
渡辺さんもこちらを見ながら返事をする
まぁ流石のオレもこの時点で無視されてるのがわかり、オレはその場を立ち去った。
後で先生に呼び出され理由を説明すると先生は帰りのHRで
「渡辺、なぜ栗原を無視した」
少し怒りつつも渡辺さんに話しかけた
オレはザマァみろと思った。
この後、渡辺さんは説教され泣きながらオレに謝ってくるだろうと思ってた。
だが簡単に許しはしない。渡辺さんには色々と仕返しをと考えていると
「すんませーんでした、先生。」
などと全く反省してない態度で
「栗原空気くん、空気すぎて気づきませんでしたキャハハ!」
…泣いたのはオレでした。
この後、渡辺さんパーティに色々と仕返しされたのは後日話そうと思う。
いけない!うっかりこんな事を思い出してしまい、つい目頭が熱くなってしまった。
危ない危ない。
それからオレは決めたのだ。
無視する奴には徹底的に叩き潰すと
無視された場合においてオレはこのコミュ障を解除する。
だが最後通告はどんな時でも必要だ。
オレはできるだけ穏やかな声で怒りを殺し
「オレとパーティを組んでくれないかな?」
笑顔も交えて言った。
何コレ、完璧だろ
オレは一応顔は普通な方だと思うし、コレでこのセリフだ。
コレを無視する人間なんて…
5分経過
1つわかったことがある
こいつは人間じゃない。
こんなひどい事を簡単にできる奴が、人間のはずがない。
オレは彼女に一歩近づき、彼女の着ている服の胸ぐらを掴み思いっきり引き上げた。
彼女は急な事でされるがままにされ、椅子が倒れ大きな音を立てた。
周りにいた連中は、何かあったのかとこちらを向きだす。
そしてオレは大きな声で叫んだ
「てめぇ!人の事を無視するなんて「どこ掴んでのよ…」最低だブエっ!」
彼女に思いっきりぶっ叩かれた。