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1章04:勘違いは突然に

ブックマークが10件を超えました。

どうやって見つけて下さるのかがマジ謎なのですがありがとうございます。

そんな個人的な節目なのに今回話の内容が下らないですすいません。

石を投げないでください。

 さー、やってきました翌日!

 本日も晴天なりー本日も晴天なりー。

 いやー、ピクニック日和ですね!洗濯するのもオススメかも!?

 でも私の一番のお勧めは!


「待ちなさい、コラァァアアア!!」


「待てって言われて待たない奴はいねーんだよバーカッ!!」


 追いかけっこですかね!

 屋敷の中、翻るスソも気にせずに全力疾走。

 迸る汗!

 荒ぶる吐息!

 溜まる疲労!

 そして、捕まえた時の達成感と、私何やってるんだろう…、と突然押し寄せる倦怠感っ!

 さぁ、貴方も是非!是非に!

 私はもう二度とやりたくないって、毎っ回思ってるんだけどなー!!


「もう、また、ですか!?ワンパターンなんですか!?

 やる事に何でこう、レパートリーと言うか、もうちょっと工夫ができないんですか!」


 本当は怒るべきじゃない見当違いの所を思いっきり突っ込む。

 いやさ、真面目にやれとは言いたいよ?

 それを素直に聞いてくれるなら、喜んでエンジェルボイスもかくやと思う程甘い声で囁いてやる。しかも取り立ては無し。むしろ、金払ってやる。やだ奥様お買い得。


 でも、聞かないんだもんこのジャリん子!

 耳の穴に、右から左へ直通の坑道が出来ちゃってるんだもん!しかも脳みそ行きの横穴が一つも開通してない、ダメ坑道!

 そのクセ、セクハラ用の目から出る神経は、極太で脳までがっつり繋がっている始末。コンマ1秒の下着の色すら記憶するエリート。

 勉強ができるから記憶力が良いのは知っているけど、こんな残念な使い方があるかっ!くそっ!


 今日に限って、挑戦的な赤色にするんじゃなかった!!

 くそう!!


「なー、ユリシス。デートか?デートにでも行くのか?」


 捕まえて簀巻きにしてやったのに、口は相変わらずの軽薄っぷり。エロ回線の目の神経と繋がってるのか。

 口より先に鼻と繋がったら、少しは賢くなるかしら。


「…あの、ですねぇ。フィリップ様?

 私はここの奴隷で女中ですよ?

 そんな、他所に男を作る余裕なんてー」


「だよなっ!まさかユリシスに、男が出来るはず無いよなっ!」


 おいこら。

 間違った事は言ってないけど、ちょっと言って良い事と悪い事を区別しなさいよ。


「やっぱりなー。

 ユリシス、顔は良いけど性格がキッツイもんなー。

 よっぽど気が強い男じゃないと彼氏なんてなれないよなー」


 えぇい、言わせておけばこのガキンチョめぇ…。

 女の演技力を舐めるなよ。

 性格なんて人によってコロコロ変えれるし、涙をポロっと零してやればたちまち男の一人や二人落とせるっての(但し美少女に限る)。


 対して、男なんて女に振り向いて貰わなきゃ、冴えないヤローじゃない。

 顔と身長と収入のない奴は、自然淘汰されて未婚で童貞のまま、子供を残せず終わっちゃうんでしょ?

 男と付き合った事なんて無いけど、多分そーいうもんでしよ。


「…言ってくれますね、フィリップ様。

 随分と自信がおありのようで?」


「ッ、

 あ、当たり前だ!

 コレでも次期領主だからな!」


 なんだその理屈。

 次期領主だったら何なんだ。何かスキルでも手に入るのか。

 次期領主=ハーレムできるとか、そういのか。ゲームか。

 って言うか、次期領主としての勉強をすっぽかしているのに言う事じゃあ無いんだよなぁ…。


「はぁ、もぉ…。一体どうすれば真面目になってくれるんですか……」


 んー……。


 ……ん。

 あー、どうだろう。ソレっぽい事は思いついたけど、うーん。

 成功するかなぁ?

 まぁ、ダメ元で行くかな?このまま、いつもと同じ事をやってもしょうがないし。


「…じゃあ、その男っぷりを見せてもらいましょうか?」


「えっ……え?」


 にっこりと微笑んで、そう告げる。

 簀巻きにしたまま、ロープの先端を手に持ち、ズルズル引きずって行く。


「ユ、ユリシス?

 何する気だ?何処に連れて行く気だ?男っぷりを見るってなんだ?お、おい、ユリシス!?」


 うーん。

 後ろでなんかギャーギャー言ってるなあ。


「そんなに自信がお有りなら、二人っきりでちょっと確かめましょう。

 他の人に何か手伝いやちょっかいを出されないように♪」


「ふ、ふた!?

 お、おいユリシス!

 そりゃ、お前は彼氏がいなくて、寂しいのかもしれないけど、もうちょっと、だな。段階を踏むとか、こう、心のじゅ、準備とか!」


 おや、この慌てよう。もしやどこに行くのか分かってるのか?

 まぁ、慌てるよねー。ちょっと早いとは思うし、下手すりゃ危ないし。

 とは言え、あそこまで言われて引き下がっちゃ、女が廃る。

 ここは思い切って、フィリップ様には恥をかいて頂こう。


「イキナリだから良いんですよ〜。

 そんな事前に予定決めてたら、驚きとか少ないでしょう?

 突然そういう事をやって、それでも対処できて初めて出来る男って言ってあげます」


「い、いや!って言うか、お前はそんなにサラッと決めていいのか!?お前はそれで良いのか!?

 もっと、こう大事な人とだなぁ!」


 むっ。

 んー…、まぁ確かに広義的に見ればデートに近いか。

 確かに言われてみれば一理あるかな。こういうのはやっぱり最初は大事な人と……。


 って、待て待て。

 発想がマセ過ぎ。私13歳だし、フィリップ様10歳。

 うっかり思春期基準で考えたけど、こんな子供が気にする事じゃない。


「別に大した事じゃないでしょ?

 そりゃ大人になれば大事にしますけど、私達ぐらいの年齢なら別に気にする事無いですよ」


「なっ、ばっ、はぁ!!?」


 うわぁ、唾飛んできた。きったな。


「おまっ、え、えぇ!?

 そう、なのか?普通なのか?俺がおかしいのか…?」


 ん?普通だよね?

 あぁ、でもそうだなぁ。


フィリップ様は次期領主でしかも箱入り息子だから、そういうのは普通じゃないか。


「まぁ、フィリップ様みたいな貴族からすればそうでしょうけと、平民ぐらいだったら普通ですよ普通。

 流石に奴隷とか農民はそこまで余裕がないでしょうけど」


「…そう、なのか。

 凄いな平民……」


 何に納得したのやら、そのままウンウンと頷いて黙ってしまう。

 うん、大人しい方が好ましい。そっちの方がすぐに終わりそうだ。


「まっ、分からない事があったら聞いて下さいね。

 まだ勉強中で至らない所もありますけど、多少は心得ていますから」


「なっ、はぁ!?」


 えっ、驚くところ?そこ。


「お、おい!

 勉強って、もう、したのか!?誰と!?いつ!?何処で!?」


 なんでそこ拘るの!?

 簀巻きにしたのに靴にかじりついてきた。怖っ!何この芋虫!?


「おい、答えろよユリシス!

 誰だ!誰とそんな事!」


「えっ、いや昨日も私の部屋でしてましたよ?

 夜にフェル様と……」


「なっーーー」


 その言葉を聞くと、絶句する芋虫ことフィリップ様。呆然とした様子で、もう身体中の力が抜けてしまっている様子。


「……父上が、まさか、そんな…」


 うーん…。

 大人しくなったのは良いんだけど、ちょっと方向性が違うなあ。素直と言うより無気力だ。

 このまま最後まで動かなかったら嫌だなぁ。

 私が全部自分で動かないといけないし、何より面白くない。

 普段の高慢ちきな態度が、何をすれば良いかも分からず、アタフタとプライドをズタズタにして、そこで私がそっとフォローをしてあげる。


 うん。素晴らしい計画。

 思い付きで見切り発車の割には、中々いい結果を得られそうだ。

 っと、大切な事を忘れてた。


「じゃあ、フェル様に許可を頂いて行きましょうか」


「は、はぁ!!?お前、ちょっ、何考えてるわけ!?」


 大人しかったのに、反論する時だけは一丁前に意識戻すのかい。見下げ果てた根性だな。

 そんなに嫌なのかな?


「何って…。いや、大事なことですよ?


 上司の一人息子を勝手に連れて行くんですから、そりゃあ許可を貰わないと」


「おまっ、何で今の話の流れでそういう事が言えるんだよ!おかしいだろ!?」


「おかしかないでしょう。

 そりゃ、大人同士なら別に相談しませんけど、私は13歳でフィリップ様は10歳ですよ?親に相談くらいはしないと」


「だっ、だからって、お前、父さんだぞ!?父さんとは、その、経験、あ、あるんだろう!?」


「経験…?」


 はて、そんな事あったか……、あ。

 あるっちゃあるか。


「そう、ですね。

 まぁ、場所が違いますし、あの時は暗かったですし、明かりとかも無かったんで何も見えなかったんですけど」


「え……?」


 あー、懐かしいな。

 もうあれから随分と経つのに、ちょっと前の事のように思い出せる。


「ふふっ。

 あの時はビックリしましたよ?

 何せ暗がりから急に現れて、そのまま急いで私を連れて行くんですから」





「ユ、ユリシス……?」


「最初は不安だったんですけど、朝になってみれば、優しい人だって分かったので本当に良かったです」


「い、いやユリシス?急にって、

 もしかして、無理矢理……?」


「無理矢理…ま、そうですね。私も奴隷ですし、買われた身である以上は文句は言えません」


「……」


「まぁ、一緒に居た子とすぐに寝ちゃったんですけどね。あの時は疲れてましたから、本当に」


「一緒……?他にいたのか…?」


「ええ。

 私ともう一人、ミリーちゃんって子がー」


「ッ」


 息を飲み込む音がして、フィリップ様は目を丸く見開いた。

 む、何だ。何か勘違いしてないか?


「…言っておきますけど、ミリーちゃんは私と同い年の女の子ですよ?」


「父上ぇぇぇえええ!!!」


 そう叫ぶと、堰を切ったように爆走するフィリップ様、って、ちょっええ!?

 何で芋虫スタイルでそんなに爆走できてんの!?なにあれ気持ち悪っ!新種のUMA!?


「ちょっフィリップ様!?

 どこへ行くんですか!?」


「うるさい!お前は騙されてるんだ!そんなのが、普通であってたまるか!おかしいだろ!」


 えっ、何が?どこが?

 あ、もしかして奴隷制度云々か?まさかリンカーンさんの生まれ変わり?奴隷解放宣言でもする気?


「いや、フィリップ様!?奴隷は居ないと社会が成り立ちませんし、それに私は奴隷でもこんな良い所に来れて満足していますよ!?」


「相手が奴隷だからって、やって良い事と、悪いことがあるだろう!」


 えっ、凄い!

 ガキンチョ若様が善悪について語ってる!

 どうしたの急に!?しかも何言ってるか全然わかんない!変なものでも食べた!?


「父上!

 父上ぇぇぇえええ!!!」


 全力疾走したにも関わらず、全く追いつかず、フィリップ様は見事なイモムシ走りで部屋の扉を豪快に開いた。


 中には、書類を片手に優雅に紅茶を飲むフェル様の姿。

 やっぱり、いつどこでも映えるなぁ、この人。

 こんな急な来訪でも、待っていましたよと言わんばかりの雰囲気を醸し出す余裕っぷり。


「やぁ、フィリップ……で、合ってるよね?」


 あ、流石に動揺するか。

 そりゃなぁ。

 一人息子がロープでグルグル巻きにされて、床に這いつくばって蠢いていたら驚くか。

 私だったら、飲んだ茶を書類に噴き出してるね。


「父上…見損ないましたよ!

 あなたは…、あなたは!」


「ええっと…ユリ?」


 悩ましげな顔でコッチに助けを求めるが、生憎私も分からないので無言で首を振る。


「ユリシスにそれ以上言わせる気ですか!?どうせ、騙して色々と有る事無い事吹き込んでいるんでしょう!!」


 思いっきり正義ヅラしてなんか言うのは良いけど、もうちょっと頭を高くして言った方がいいと思います。

 土下座よりなんか情けないよ、その格好。

 処刑直前の捕虜みたいだから。


「……僕がユリを騙している、と?」


 しかし、そんな情けないやら勝手極まりないやら何やかんやなフィリップ様の弁に、あくまでフェル様は真剣に対応していた。


「そうです!奴隷だからと言って、物のように扱うなんて…。

 貴族の、領主としての誇りは無いのですか!?」


「物のように……か。

 確かに、僕はユリシスや他の奴隷を物のように買ってきたね」


 フェル様はそう一言おくと、更に話を続ける。


「確かに、習慣だからって物みたいに奴隷を買ったのは否定しない。習慣だからって、労働力の確保に易きに走った事は本当だ。

 でもね、フィリップ。

 君は、うちの奴隷が苦しそうにしているのを見たかい?

 僕は、彼らが苦しんでいるのを見過ごしていたかい?」


「そ、それは……」


「僕は確かに奴隷を買った。

 けど、買った後はできる範囲を最大限に広げて、彼らをできる限り人として扱っているつもりだ。

 賃金は口惜しい事に出せていないけど、毎日の暮らしを損なわせるつもりはない。

 馬のように働かせるつもりもない。

 倒れてしまったなら介護も厭わない」


「フィリップ。

 君は、それでもまだ、何か足りないと言うのかい?

 僕は、ユリを騙して何かを奪っていたかい?」


「………ッ」


 うわ、ちょっと領主様怒ってる。

 初めて見たけど、何かちょっと怖いなぁ。


 多分、フェル様自身も、もっと良くしてやりたいとは思っているんだろう。この人は、甘い人だから。

 なのに、自分の限界を息子に否定されて、怒っているんだ。

 逆ギレっちゃ逆ギレだけど、多分毎日一生懸命考えてるからこそ、怒っちゃうんだろうなぁ。


 …あれ、これってかなり真面目な話?

 よくよく見れば息子さん芋虫ですよ?ちょっと目を凝らすとギャグにしか見えない不思議!


「………それでもっ」


「まだ、何か?」


 カツン。

 フェル様の靴底が鳴る。

 カツン。カツン。

 芋虫フィリップ様とフェル様の距離がどんどん近づいて行く。

 靴底の甲高い音にフェル様の怒気が篭ってるように錯覚し、私は思わず後ずさる。


 こ、こわ……。

 口元はポーカーフェースでうっすらと笑っているが、目が全く笑ってない。と言うか、怖い。眼光で人が殺せる。絶対あれで何人が殺してる。


「フィリップ?」


 カツン!

 最後の一歩が、一際甲高く部屋に響いた。

 うわぁ…。怒られてるの私じゃないのに、何だろう、泣きそう。

 いつもニコニコしてる人が怒るとマジで怖い。ギャップで怖さが倍増される。


 しかも、この人怒ってるのを前面に押し出さないから、余計に怖い。

 限界を越えたら殺される、とさえ錯覚する。


 が、フィリップ様は口を閉じなかった。


「父上は、立派な人だと思っていました…。

 民衆を慈しみ、奴隷にすら親しく接し、俺の目標でした。

 今まで、そう思っていました」


 殺されそうな威圧の中、しかしフィリップ様の口は閉じない。

 その声には、確かな意思が宿っているようだった。


「ですが、ですが父上!

 今日のユリシスの話を聞いて、私の考えは変わりました!

 父上が僕の知らないところで、そんな事をしていたとは思いませんでした!!」


 は?

 え、原因私?


「………ユリ?」


 あ、ヤバい。その目で私を見ないでください泣きそうです。足元から震えが襲ってくる。

 怖い。怖いけど、目が離せない。

 あ、ヤバい。ちびりそう。


「ユリ?

 どういう事かな?」


「えっ、あの、いや、私は別に、あの、すいませんごめんなさい助けて下さい」


 もうなんか、涙が止まらない。

 このまま、へたり込んでしまいたい。

 よく、こんな視線至近距離で食らって喋れたな、この芋虫!

 もう、何か生きてるのが申し訳なくなっちゃうよ!生まれてきてごめんなさい!


「父上!ユリシスは何も悪くありません!ユリシスは俺に正直に話してくれただけです!」


「ほう、何を話したんだい?」


「えっ、あっ、うぇ?」


 さっきから、何を言ってるんだこの芋虫は!ドンドン私の立場を危うくしてどうする!

 はっ、まさか遠回しな復讐!?

 何こいつ孔明!?


「父上がユリシスを慰み者にしてる事ですっ!!!」


「ーーー」


「……」


 ……えっ。


 は?


 はい?


 ふぇぁ?


 お前は一体何を言ってるんだ?


「昨夜も、無理矢理ユリシスに迫ったと聞きました!それを当然のようにするユリシスを見て、俺は居ても立ってもいられずーー」

「何言ってんだアホかーっっ!!!」


 思わず、芋虫様の鳩尾当たりに向かって蹴りを放つ。

 どうやらクリティカルだったようで、床を這う芋虫は二転三転した後、うぉぉぉと呻いた。


「ゆ、ユリシス、何故……」

「バカか!アホか!何急にロクでも無い事言ってんだあんた!」


「で、でもユリシスそういう勉強を父上としてるって…」

「ただの、文字の勉強でしょ!?何なの!?何急に猥談にしちゃってるんです!?頭沸いてんの!!?」


「で、でも!二人っきりで男らしさを見るって、そういう話だろ!?」

「そこから!?私の話、何一つ理解してないじゃないですか!

 何なの!?

 私の、さっきまでの心臓に穴が空くようなストレスはそんな勘違いのせい!?」


「えっ、ち、違うの、か?」

「違うわませガキ!!」


 もう、泣きたいやら笑いたいやら怒りたいやらホッとしたやら。

 全部ぐちゃぐちゃになって、それでも感情のやり場がないので、とりあえずもう一発蹴ってやる。


 何だよ、もう。もぉ……。


「うっ、うぇぇええ…」


 そのまま、膝を抱えて、泣き崩れる私。

 もう、最悪。

 この若様、マジでロクなことしない。


 さっき、本当に生きた心地がしなかったんだからな。

 ほんっとうに怖かったんだからな?

 ここで死ぬのかなって、割とガチで思ったんだからな!?

 ちょっとちびっちゃったのは内緒なんだからな!!?


「えーと…、ユリ?

 勘違いだった。って、事で良いのかい?」


 私とボケ若様の話を聞いていないフェル様は、事態が把握できてないようで、恐る恐る私に尋ねてきた。


「勘違い、でず。

 わたじ、別に、ぞんな、こど、言っでない、です」


 もう、涙やら鼻水やらしゃっくりやらで、呂律が回らない。言葉が怪しい。


 もうやだ領主様怖い。

 知らなくても良い物を見てしまった気がする。というか、見たくなかった。


「そっか、ゴメンね?疑って。

 驚かせたね。怖かったね」


 いつもの優しい領主様が、私を抱きしめてくれる。

 ああ、ちょっとだけ安心する。優しい言葉を紡いで、私を安心させようと背中をさすり、時に頭を撫で、私を落ち着かせようとする。


「怖かっだ、でず。死んじゃうど、思った、でず」


 縋り付くようにその優しさに体をうずめる。

 おうっ、おうっ、と嗚咽が続き、顔の穴という穴から吹き出た液体で顔がぐちゃぐちゃになる。


「ほら、美人が台無しだ」


 そう言うと、フェル様は胸ポケットからハンカチを取り出し、顔を拭う。

 ハンカチ常備とか、やっぱり押さえるとこ押さえてるなぁ、この人は。

 って言うか、セリフももう女の子のハート鷲掴みな王道セリフじゃないですか。

 何でこういうのポンポン出るのこの人意味わかんない。

 でも、少し落ち着いたかー


「よし、ほら綺麗だ」


 と、一通り顔を拭き終わると、


 チュッ


 額に、触れるか触れないかぐらいの浅さでキスをする。

 キス。

 キッス。

 あ、ヤバい。また漏れそう。


 防波堤がっ!決壊寸前!

 くそう、なんてこった!ズタズタにされた心に救援物資を送ってきたと思ったら、最後の最後に全部吹っ飛ばす核爆弾を仕込んでやがった!骨抜きにされてしまう!

 爪先から頭のてっぺんまで電流が走ったようにゾクゾクして、一瞬で身体中の筋肉がストライキを始めて弛緩していく。熱に浮かされたように頬が緩み、紅潮して行く。

 あかん!あかん奴やこれ!

 顔だけじゃなくて、身体中の穴から名状し難い何かが噴き出る!やだーっ!

 何か、何か話を逸らさなきゃ!


「そう言えば、ユリはフィリップと何を話そうとしていたんだい?

 どうやら、フィリップは勘違いして話が噛み合っていなかったようだけど……」


「えっ、あっはい!そ、そうです!その為にここに来ようと最初は思ってたんです!」


 よし、逸れた!

 ちょっと体はまだ危険信号だけど、取り敢えず、話が逸れたおかげで波は引いた。

 早く話を終わらせてトイレに行こう。

 そう思い、私は


「私達二人で、町に出てみようと思ったのです!」


 そう言った。

The・悪ノリ!

すれ違い会話がどれだけ出来るかと思い試験的に長々と屁理屈をこねてたらまさか1話丸々使うとは思わず…。


多分無くても分かるんですが、ちょっと無理がある気がするので補足。


二人っきりで男っぷりを見る→二人で町に行く。

広義的にデート→そりゃ二人でいくならデートでしょう。

平民なら当たり前→まぁ町くらい普通に行きます。

勉強中→文字の。

昨夜フェル様と→前々話より

フェル様に許可を→何も言わないで連れてったら拉致です。

経験がある→トラザ町の前にテリル街に奴隷として売られています

暗くて無理矢理→テリル街で買われて、そのまま馬車に。

ミリーちゃんも一緒に→買われてついて行きました。


こじつけって不思議!

ってか、補足無しでも行けるのが普通なんでしょうがね。難しいです…。

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